NEST OF BLUESMANIA

ミュージシャンMACが書く音楽ブログ「NEST OF BLUESMANIA」です。

音曲日誌「一日一曲」#14 アイク&ティナ・ターナー「Reconsider Baby」(Outta Season/Blue Thumb)

2023-04-15 05:33:00 | Weblog
2007年9月30日(日)

#14 アイク&ティナ・ターナー「Reconsider Baby」(Outta Season/Blue Thumb)






アイク&ティナ・ターナー、最盛期のレコーディングよりこの一曲を。ご存じ、ローウェル・フルスンの代表的ナンバー。

この曲がリリースされた69年、アイク&ティナはなんと8枚ものアルバムを発表している。そのセクシーで過激なライブ・パフォーマンスが話題となり、一気にメジャー・ブレイクしたのである。

日本でも71年発表のアルバム「Workin' Together」あたりが引き金となり、人気が急上昇、「アメリカの唄子・啓助(笑)」などと呼ばれるようになる。(実際、女性ふたりの口の大きさは、タメを張ってた。)ティナのセクシーキャラの影響力は大きく、欧陽菲菲、シナロケのシーナをはじめ、それこそ倖田來未あたりにまでその路線は引き継がれているように思う。

でも彼ら、ライブでは相当エロかったのに対し、スタジオ録音のほうは割とあっさりしていた。この曲もそうだな。

フルスンのオリジナルでは、男性が女性にすがっているわけだが、アイク&ティナ版では、女性であるティナが別れた男性に「考え直して」と迫っている。でも、あまり深刻さは感じられない。

実生活ではアイクのDVなどが原因で76年に離婚。以降、ソロとなったティナのほうが、元夫のアイクの何倍もメジャーに活躍している。まるきりオトコにすがる必要などない、見事な女丈夫ぶりである。

やはり、ピンチのときに本当に強いのはオンナのほう。離婚をむしろバネにして、よりビッグに成長していったティナはスゴい。

アイクはその恵まれた音楽的才能の割には、その後ずっと伸び悩み、今もあまりいい状態とはいえない。何年か前のブルカニの出演キャンセルに象徴されるような、ジリ貧状態のままである。元女房に、運気を全部吸い取られてしまったのだろうか。

やっぱ、この曲は情けないアイクが歌ってこそ、サマになるのかもね(笑)。パワフルなティナには、似合わないのでありました。

音曲日誌「一日一曲」#13 チャールズ・ブラウン「I Stepped In Quicksand」(A Life In The Blues/Rounder)

2023-04-14 05:00:00 | Weblog
2007年9月23日(日)

#13 チャールズ・ブラウン「I Stepped In Quicksand」(A Life In The Blues/Rounder)





チャールズ・ブラウン、90年ニューヨークにおけるライブ(リリースは2003年)から、この曲を。ブラウンのオリジナル。

チャールズ・ブラウンといえば、1922年テキサスに生まれるも、もっぱら西海岸で活躍、「チャールズ・ブラウン・マナー」と呼ばれる独特のスタイルで一世を風靡したピアニスト/シンガー/コンポーザ-。レイ・チャールズをはじめとするおびただしいフォロワーを生み出してもいる。

彼は99年に亡くなるまで、生涯現役だった。このライブは68才になった年のもの。

当CD、音源だけでなく、同じ演奏をDVDでも楽しめる趣向なのだが、映像で観るブラウンは、一段とカッコいい。

ブラウンの衆に抜きん出ているのは、声だけでなく顔立ちもオトコマエというところだな。単に歌が上手いだけでなく、スター性があるってことです。

バンド編成はピアノ、ギター、ベース、ドラムスの、カルテット。中でもギターのダニー・キャロンがいい。往年のブラウンのバック、ジョニー・ムーアのジャズィな雰囲気をにおわせつつ、タキシードを腕まくりしてハッスル・プレイを聴かせてくれます。

特に、この曲での2コーラスのソロは出色の出来だと思うので、ぜひ聴いてほしい。

もちろん、ブラウン自身の歌もピアノも、年齢を感じさせぬ張りがあって素晴らしい。

なんていうか「気合い」が満ちたパフォーマンスなんである。

こういう粋でいなせなチャンジーに、筆者もなりたいものです。

音曲日誌「一日一曲」#12 シェメキア・コープランド&ロバート・クレイ「I Pity The Fool」(Lightining In A Bottle /Columbia)

2023-04-13 05:00:00 | Weblog


2007年9月15日(土)

#12 シェメキア・コープランド&ロバート・クレイ「I Pity The Fool」(Lightining In A Bottle-Original Soundtrack/Columbia)





2004年公開、マーティン・スコセッシ総指揮のもと、ブルースの年にちなんで作られた映画のひとつ「ライトニング・イン・ア・ボトル」から、この曲を。

ドン・ロビーの作品というより、ボビー・ブランド作、彼の代表的ナンバーといったほうが正しいだろう「アイ・ピティ・ザ・フール」。この名曲を若手女性ブルース・シンガーNo.1、シェメキア・コープランドとロバート・クレイが共演。

まずは、おなじみのハイ・トーンでクレイが歌い始め、続いてシェメキアがド迫力のシャウトでそれを引き継ぐ。

シェメキア(本当はシュミーキャみたいな発音なんだろうが)は、往年のテキサス・ブルースマン、ジョニー・コープランドの娘。まだ20代なのに、ものスゴく貫禄のある歌声だ。

容姿的には‥‥なのだが、とにかく人並みはずれて声がデカく、ドスがきいている。さすがシャウターの娘、血は争えんねぇ~。

ただ、まだ迫力ばかりが前面に出て、音程の安定度とか、細かい表現力とかは今後の課題という感じだが、とにかく押しの強さでは、右に出るものがない。

彼女の太い声と、クレイの甲高いシャープな声があいまって、異様な迫力を生み出しているこの曲。そのアレンジはどことなくシェメキアの亡父、ジョニーの大ヒット「ベイビー・プリーズ」を彷彿とさせるものがある。

粘り腰、がぶり寄り、究極の押し相撲、そんなイメージがよぎってしまうのは、彼女のルックスのせい? いや、これは失礼。

ライブならではの、圧倒的なパワーを感じとってくれ。

音曲日誌「一日一曲」#11 エスター・フィリップス「Use Me」(Anthology/Import)

2023-04-12 05:00:00 | Weblog
2007年9月8日(土)

#11 エスター・フィリップス「Use Me」(Anthology/Import)





48才の若さで84年に亡くなった、実力派女性シンガー、エスター・フィリップスがビル・ウィザーズの作品をカバーしている。これが実にいい。
エスターといえば、13才にして少女歌手、リトル・エスター・フィリップスとしてデビュー。以来、あらゆるジャンルの曲を歌いこなしてきた、プロ中のプロ。日本でいえば、美空ひばりに匹敵するような存在やね。ビートルズ・ナンバーをカバーした「And I Love Him」なんてヒットもある。

彼女は、その特徴ある顔立ちからして、いかにもアフロ・アメリカン。声も個性的で非常に粘っこく、万人向きではないが、はまると病み付きになりそう。たとえば妙に白人化してしまったディオンヌ・ワーウィックとかシュープリームスあたりなどとは対照的に、あくまでも黒人ならではのセクシーさをアピールし続けたひとである。

しかるに、ファン数はけっして多くないが、その分、熱狂的な「濃ゆ~い」ファンの占める率が高いというのも事実。そんな中のひとりが、かの永井ホトケさんだったりする。

ホトケさんと彼女とのエピソードは、彼の著書「ブルーズ・パラダイス」にて語られている。

それによると、エスターは、ホトケさんが彼女の歌を熱狂的に好きだという感情を、一女性としての彼女が好きだということとして受け取ってしまい、困惑していたようだ。

ということで、まるで映画「ディーヴァ」の女性オペラ歌手とファンの郵便配達夫との関係のようなエピソードが、なんとも微笑ましい。

でも、別にどちらだってええんとちゃいますか。「彼女の歌が好き」イコール「彼女が好き」、そういうことになっても。

そのくらい、エスターの歌には、男心をひきつけてやまない、エモーショナルな魅力がある。お上品なだけの砂糖菓子ポップスしか聴いたことない、おぼっちゃま君たちには耳の毒なくらい、強烈な魅力が。

それは、この一曲を聴くだけでわかるはず。レコーディング後、生前にはリリースされず、1990年コロムビアのベスト盤ではじめて発表されたようだが、彼女の長いキャリアの中でも、格別の出来映えだと思う。

なんといっても、この曲での彼女のブルース・フィーリングはハンパじゃない。これを聴いてしまうと、他のブルース・ウーマンたちなど、小便臭い子供に思えてくるに違いない。心して聴いとくれ。

音曲日誌「一日一曲」#10 ロイ・ブキャナン「After Hours」(Second Album/Polydor)

2023-04-11 05:04:00 | Weblog
2007年9月2日(日)

#10 ロイ・ブキャナン「After Hours」(Second Album/Polydor) 






ブルース・ファンなら一聴しておわかりだろうがこの曲、ブルース党には、もっぱらピー・ウィー・クレイトンの「Blues After Hours」というタイトルで親しまれている。

が、ピー・ウィーのオリジナルではなく、もともとはビッグバンド・ジャズのナンバー。

戦前から活躍している、アースキン・ホーキンス楽団のリーダー、ホーキンスが、ピアニスト、エイヴリー・パリッシュとともに書いたブルースなのである。

タイトル通り、アフター・アワーズ・セッションのリラックスしたムードをぷんぷんと匂わせる曲調が、ジャズ界のみならず、さまざまなジャンルのミュージシャンに支持される。

おもだったところを上げるだけでも、ローリー・ベル、レイ・ブライアント、バック・クレイトン、ランディ・ブルックス、オスカー・ピータースン、ハンク・クロフォード、ディズィ・ガレスピー、ロイド・グレン、ベニー・グッドマン、ロイ・ヘインズ、ウディ・ハーマン、ジュールス・ホランド、アール・フッカー、ユタ・ヒップ、イリノイ・ジャケー、クインシー・ジョーンズ、ロニー・ジョーダン、ロバート・ロックウッドJr、ジミー・スミス、パイントップ・パーキンス、エディ・テイラー、ピー・ウィー・クレイトン、そしてこのロイ・ブキャナンと、錚々たる顔ぶれにカバーされている。

まさに、隠れたブルース・スタンダード。

そんな中でも、このブキャナンの演奏は白眉で、とにかくテレキャスターの音色が抜群にいい。

ほんと、出だしのワン・フレーズから、グイッと引きずり込まれてしまうような、妙なる音なんである。
これを聴くと、ホントにテリーが無性に欲しくなってしまう。危ない危ない(笑)。

先達ピー・ウィーの演奏が「クール」の極致なら、ブキャナンのそれは、まさに「ホット」そのもの。

おなじみのトリッキーなスクラッチ・プレイやらボリューム奏法を交えつつ、最後までグイグイと聴き手を引っ張っていく腕前、まさに名人技であります。

曲の素晴らしさ、そして弾き手の腕が、完璧なコンビネーションを生んだ、見事な例であります。

音曲日誌「一日一曲」#9 スティーヴン・スティルス「Love The One You're With」(Stephen Stills/Atlantic)

2023-04-10 05:00:00 | Weblog
2007年8月18日(土)

#9 スティーヴン・スティルス「Love The One You're With」(Stephen Stills/Atlantic)






スティーヴン・スティルスのソロ・デビュー作「Stephen Stills」から、A面トップ、初ソロ・シングルでもある「Love The One You're With(愛への讃歌)」を。

スティーヴン・スティルスについて、くだくだしい説明など不要だろう。バッファロー・スプリングフィールド、CSN&Yにおいて、リーダー的な存在感を発揮してきたこの男。でもスターというよりは 地道なミュ-ジシャンというイメージなんだな、筆者においては。

いかにもヤサ男なんだけど、彼がおそらく大目標にしていたであろう、エルヴィス・プレスリーみたいな万人向きの人気者というよりは、人によってちょっと好き嫌いの分かれるクセ者タイプ。歌声にしても、誰もが「うまい!」というよりは、評価がふたつに分かれるところがある。

スティルス本人は、ストレートなタイプのスターになりたかったのかも知れないけどね。

でも逆にいうと、それがスティルスなりの「個性」なんだろう。

なんていいますか、ものすごくベタな白人的要素、つまりフォーク、カントリー的なものへの傾倒が一方にありながら、その一方で黒人音楽、とりわけソウルへの入れ込みかたはハンパじゃない。

それは、このデビュー・ヒットを聴けば、よくわかるはずだ。

白人向けにだいぶんフォーキーな味付けはしてあるものの、その躍動感、グルーヴは、まさにソウルのそれ。

アコギやオルガンの響き、女声コーラスなど、寸分の隙もない見事にソウルなアレンジに、ただただ脱帽であります。

アイズリー・ブラザーズ、ボラニー・ブラムレット、ビリー・エクスタイン、ジョー・コッカー、アリサ・フランクリン、エンゲルベルト・フンパーディンク、トニー・オーランド(ドーン)、ミーターズ、サム&デイヴ、シュープリームス、スリー・ディグリーズ、ルーズヴェルト・サイクス、ルーサー・ヴァンドロス‥‥。この曲をカバーしたアーティストたちである。

人種、音楽ジャンルを越えて、ここまで支持された白人作のソウル・チューンは。なかなかないよね。

スティルスの数多い作品の中でも、ひときわ輝く金字塔。文句なしの名曲であります。


音曲日誌「一日一曲」#8 ザ・バンド & ボビー・チャールズ「Down South In Neworleans」(The Last Waltz/Warner Bros.)

2023-04-09 05:00:00 | Weblog
2007年8月11日(土)

#8 ザ・バンド featuring ボビー・チャールズ「Down South In Neworleans」(The Last Waltz/Warner Bros.)





皆さんご存じ、ザ・バンドのアルバム「ラスト・ワルツ」からの一曲。

ザ・バンドのラスト・ステージにゲストとして登場したのは、本欄でも取り上げたことのある(2001.4.28の項参照)白人シンガー、ボビー・チャールズ。彼が、カントリー界の大ベテラン、ジム・アングリン、ジャック・アングリン、ジョニー・ライトの作品「Down South In Neworleans」を自分流にアレンジ、ザ・バンドの面々を交えて大合唱。これがいかにもニューオリンズっぽい、いなたいサウンドで◎なんだな。

ボビー・チャールズ。38年、ルイジアナ州アビーヴィルの生まれ。以前にも書いたように、チェスの白人シンガー第一号として、50年代より活躍。白人・黒人、音楽のジャンルを問わず、さまざまなミュージシャン達と交流があった。

白人でいえば、前述のアングリン・ブラザーズ、ジョニー&ジャックのようなカントリー系。黒人でいえば、ファッツ・ドミノ、デイヴ・バーソロミューのようなN.O.のR&B系。

70年代には、所謂ウッドストック派のアーティスト、ポール・バターフィールド率いるベター・デイズ、そしてザ・バンドらとも親交を深める。

まさに、ジャンルフリーの、クロスオーバーなミュージシャンの元祖といっていいだろう。

で、この曲を聴いて感じるのは、黒いフィーリングを持ちながらも、やはり白人、カントリー的な要素を抜きにボビー・チャールズの(そしてザ・バンドもそうだが)音楽は成立しないということ。

日本において、ブラック・ミュージック好きな人々の中には、あからさまにカントリー的なもの、白人的なものを嫌悪するひとが結構いるのだが、それってすごいナンセンス。

白人音楽、黒人音楽は、相互に隔離状態におかれたまま、おのおの独自に発展したものではなく、常におたがいを意識し、刺激を与え合いながら成長してきたのだ。

ラジオから流れてきた曲は、それがどんな人種・民族が生み出したものであれ、いかしたものならば遠慮なく取り込んでいく、そういうゴッタ煮性こそが、アメリカ南部に育った音楽の本質なのだと思う。

ボビー・チャールズは、まさに南部音楽の象徴とでもいうべき人物。

このライブでは、もうひとりのクロスオーバーなミュージシャン、ドクター・ジョンのピアノもフィチャーされ、非常に豪華な演奏だ。フィドルやアコーディオンも実に効果的に配されている。

チャールズ、ヘルムらが軸となった分厚いコーラス、短くとも、聴き応え十分な一曲であります。

音曲日誌「一日一曲」#7 スタン・ウェッブ「Strange Situations」(Webb/Indigo)

2023-04-08 05:00:00 | Weblog

2007年8月5日(日)

#7 スタン・ウェッブ「Strange Situations」(Webb/Indigo)





しばらく更新が滞ってしまった。スマソ。

3週間ぶりの一曲はこれ、スタン・ウェッブ2001年リリースのソロ・アルバム「Webb」より、「Strange Situations」ナリ。

スタン・ウェッブといえば、フリートウッド・マック、サヴォイ・ブラウンとともに、「3大ブリティッシュ・ブルース・バンド」と呼ばれていた、チキン・シャックのリーダー。

チキン・シャックっつーと、日本にも同名のフュージョン・グループがあったけど、もちろんこちらが先だ。

また、チキン・シャックには、のちにマックに移ったクリスティン・パーフェクト(マクビー)が在籍していたことでも知られており、ウェッブはサヴォイ・ブラウンにいたこともある。この3バンドは、非常に近しい関係にあったってことやね。

さて、ウェッブは66年にメジャーデビューしているから、もう40年選手。派手な人気を博したことは一度もないが、地道にブルース道を歩んで、今年61才。まさにブルースに一生を捧げる男なのだ。

アルバム「Webb」では、盟友フレッド・ジェイムズとのコラボにより、ほとんどの曲を生み出している。この「Strange Situations」も同様。

愛器レスポール・スタンダードを抱き、熱唱するウェッブ。その歌声を聴くに、硬い発音とか表現スタイルとか、やっぱり白人だなぁ~という感じはするけど、黒人ブルースマンとはまた違った魅力がある。線がやや細いけど、端正な印象のブルース。

結局、そのひと、そのひとなりのブルースがあるということやね。

愁いを含んだマイナー・メロディが◎なこの曲、泣きのギターもいい感じ。流行りのサウンドではないけど、不易なものならではのよさが、そこにはある。

あえてブルース・スタンダードのカバーに頼らず、セールス的には不利を承知で、オリジナルで勝負した心意気に拍手したい。

ベテラン・ブルースマン、今も健在なり。


音曲日誌「一日一曲」#6 シェンカー・パティスン・サミット「The Hunter」(Endless Jam/Mascot)

2023-04-07 05:20:00 | Weblog
2007年7月15日(日)

#6 シェンカー・パティスン・サミット「The Hunter」(Endless Jam/Mascot)






ギタリスト中のギタリスト、マイケル・シェンカーの一番最近のグループがこれ。ボーカルのデイヴィ・パティスンとのコラボによる、シェンカー・パティスン・サミットざんす。2006年リリース。

60~70年代ロックをトリビュートした企画もの。たとえば、「いとしのレイラ」、「アイム・ルージング・ユー」、「バッジ」、「ディア・ミスター・ファンタジー」といった具合。はっきり言って、何も目新しいことはやっておりません。もう、ひたすら王道HR/HMを突き進むのみ、そんな感じであります。

そんな中でも、とりわけ「フルーい」感じの一曲がこれ。いや、別にけなしてるわけじゃなくて、お酒と同じで年代もののほうが、絶対味わい深いんであります。

「ザ・ハンター」といえば、おおかたの皆さんにとってみれば、ポール・ロジャーズのいたバンド、フリーの曲というイメージが圧倒的でしょうが、この曲、もともとはブッカー・T&MG'Sの四人のメンバーの共作。

それをアルバート・キングが歌い、世間に知らしめたわけで、もともとはファンキー系のブルース。で、ご存知のようにフリーが、ブルース・ロックとしてアレンジ、以後そのイメージが定着したのですわ。

さて、マイケル師匠はといえば、あくまでも自分のスタイルを固守。実は30年前に録音されたと聞かされても全然不思議でないくらい、超ワンパタにハードロックしとります。あくまでも「お約束」は外しておりません。

この曲、一方では、パティスンがポール・ロジャーズばりの黒いフィーリングのある歌を聴かせてくれます。そういう意味では、けっこうブルースを感じさせる一曲。

ガキのころはやれハードロックだ、ヘビメタだ、パンクだなどとツッパっていても、50凸凹のオヤジになれば、ブルースが不思議と似合ってくる。そういうものなんでしょう。

ファンキー系不良オヤジのテーマ・ソングには、この「ザ・ハンター」。ちょいと出来過ぎの気もしますが、なかなかマッチしてません?

音曲日誌「一日一曲」#5 フィリップ・ウォーカー「Happy Man Blues」(Going Back Home/Delta Groove Productions)

2023-04-06 05:08:00 | Weblog
2007年7月8日(日)

#5 フィリップ・ウォーカー「Happy Man Blues」(Going Back Home/Delta Groove Productions)






1937年生まれ、今年70才のベテラン、フィリップ・ウォーカーの最新作(2007)である。

フィリップ・ウォーカーというと、コアなファンでもない限り、知っている人は少ないだろうが、実に経歴豊富なミュージシャンなのだ。

ルイジアナ州ウェルシュに生まれ、50年代はN.O.でクリフトン・シェニエのバンドに参加。その後、ロサンゼルスへ拠点を移す。ヒュー・ヘフナーのPLAYBOYレーベルにて初ソロアルバムを録音。79年に初来日を果たし、ピットインでのライブはCD化されている。

その後も、ときには何年かインターバルを取りつつも、地道にアルバムを発表し続けている、超ベテラン。

ルイジアナ出身ながら、そのプレイはかなりテキサス系のブルースマンに影響を受けているようだ。たとえばライトニン・ホプキンス、ロング・ジョー・ハンター、ゲイトマウス・ブラウン。

決して斬新なスタイルではないが、ツボをおさえた歌とギターには、なかなか通好みのものがある。

さて、今日お聴きいただくのは、パーシー・メイフィールドのナンバー、「Happy Man Blues」。

ピアノ、サックスをフィーチャーしたジャズィなサウンドをバックに、ゆったりと歌うウォーカー。

うんと上手いわけではないけど、彼の塩辛い声ってとっても「ブルース」を感じさせるのである。適度にレイジーで、リラックスしていて。

間奏のギター・プレイも、力まず、よく歌っている。なんていうか、彼のエッセンスをちょっとだけ披露してみたという感じで、さりげない味わいがある。

筆者も70才になったら、こういうふうに淡々と、飄々とブルースを奏でるチャンジーになりたいものであります。

音曲日誌「一日一曲」#4 ザ・スウィート「My Generation」(Hot and Slow/Silver Sounds)

2023-04-05 07:48:00 | Weblog
2007年6月30日(土)

#4 ザ・スウィート「My Generation」(Hot and Slow/Silver Sounds)






今回取り上げるのは、70年代に活躍していたイギリスのロック・バンド、ザ・スウィート。

そう、「ブロックバスター」「フォックス・オン・ザ・ラン」「アクション」「愛は命」といった多くのヒット曲を持つ、4人組である。

82年に解散したが、いまでも結構根強い人気がある。バンド名が象徴する甘いポップな曲調と、ハードなサウンドが渾然一体となって、独自の魅力を生み出している。

そんな彼らが2000年にリリースしたのが、過去のレコーディングをコンピした「Hot and Slow: Sweets, Glams & Glitter Rocks」というアルバム。これにザ・フーのカバー、「My Generation」が収められている。

ザ・スウィートとザ・フー、それもごく初期のモッズ・バンドだったころのザ・フー。だいぶん系統が違う気もするんだが、聴いてみると意外やいける。

この曲のキモはやっぱりボーカルで、一聴してアッパーな感じ、でもどこかダルなものも感じさせる、ほどほどのユルさがあるとキマるのだが、ザ・スウィートのリード・シンガー、ブライアン・コノリー(残念ながら故人)は、そのへんを実にうまく表現している。

バックコーラスの、ちょっとふてくされたような雰囲気も、◎。

この曲の生み出されてきたバックグラウンドを知る、40年代生まれのロッカーならではの、すぐれたトリビュートだと思う。

アレンジは基本的には原曲をふまえているが、エンディングではかなり「お遊び」をしている。このへんも聴きもの。


音曲日誌「一日一曲」#3 ザ・ジェフ・ヒーリー・バンド「Badge」(Cover to Cover/Arista)

2023-04-04 05:00:00 | Weblog
2007年6月24日(日)






#3 ザ・ジェフ・ヒーリー・バンド「Badge」(Cover to Cover/Arista)

前回、イギリスのブルースロック・バンドを取り上げたので、今回はカナダのブルースロック・バンド。

66年トロント生まれ、今年41才のギター/ボーカルのジェフ・ヒーリー率いるスリーピース・バンド、それがザ・ジェフ・ヒーリー・バンドだ。

彼は生後まもなく目を患い、盲目となったのだが、耳の力だけを頼りにギターをマスターし、17才でバンドを結成。メンバーは同郷のジョー・ロックマン(b)、アメリカ人のトム・スティーブン(ds)。インディーズでデビュー後、アリスタ・レコードに認められ、22才でメジャー・デビューしている。

そのプレイはまさに「心で弾く」というべきもので、エリック・クラプトン、ジミ・ヘンドリクス、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジ、ジョン・フォガティ、ビートルズなどの先人の影響を強く受けながらも自由闊達、迫力にあふれたものだ。

実年齢のわりにオールド・スクール寄りなのは、ギターを始めた3才、つまり69年頃、ラジオで流れていた曲を手当たり次第にコピーしていったことによるようだ。

ふつーの若者はティーンエージャーになってロックに開眼するものだが、彼はまるまる10年早かったということやね。

そんな彼が95年、29才になる年にリリースしたアルバムがある。題して「Cover to Cover」。

前述したような、自分がリスペクトするアーティストの曲ばかり14曲、ズラリとカバーしてみせた一枚。

基本的には原曲に近いアレンジながらも、彼なりのセンスを生かした味付けをほどこして、一曲一曲が聴いていて実に楽しい。歌もイケる。

そんな中から、今日お聴かせするのは、クリームの「バッジ」のカバー。

あの名曲を「ピアノを使わずに」スリーピースのみで演奏しているのがミソであります。

究極の耳コピの達人・ジェフ・ヒーリーの、魂のプレイを聴いとくれ。


音曲日誌「一日一曲」#2 ザ・マーク・マイケル・バンド「Emerald Ace」(Steppin' Stone/Note)

2023-04-03 05:11:00 | Weblog
2007年6月16日(土)

#2 ザ・マーク・マイケル・バンド「Emerald Ace」(Steppin' Stone/Note)





「一日一曲」、今回は日本ではおそらくほとんど知られていない、英国のバンドのご紹介。

「ザ・マーク・マイケル・バンド」である。

ギター、ボーカル担当のマーク・シムキンス率いる4人組。ベースのスティーヴィ・ストークス、キーボードのロジャー・コットン、ドラムスのスティーヴ・ジェームズ。いずれもいくつもの有名バンドでのキャリアをもつ、実力派ぞろいだ。

ジャンル的にはブルース・ロックに入るのだが、サウンドのニュアンスとしてはHR/HMにもかなり近い。

メンバーに誰も「マイケル」という名の人間がいないのに、マーク・マイケル・バンドとはこれいかに?という感じだが、筆者が推測するに「マイケル・シェンカー」へのリスペクトをこめて命名したのじゃないかと思う。

そのくらい、今年48才のシムキンスのギター・プレイには、マイケルの影響が色濃いのである。

ことに、今日紹介する「Emerald Ace」(2002、アルバム10曲目)にはそれが顕著だと思う。マイケル以外には、リッチー・ブラックモア、ゲイリー・ムーアあたりの影響も感じないではないが、やはりマイケルの影響は絶大で、それだけにシムキンスのテクニックには確かなものがある。

歌のほうは、ものすごくウマいというレベルではないが、ちょっと鼻にかかったような声でシャウトする歌には、彼ならではのオリジナルな魅力がある。

他の曲ではアコースティックなサウンドを展開したり、ブルーズィな世界を見せたりと、引き出しも多い。

オジサン・ロッカーの急先鋒として、これからの活動が見逃せないひとりだ。Youtubeで、ぜひチェックしてみて欲しい。

音曲日誌「一日一曲」#1 アルバート・キング「Call It Stormy Monday」(BUES AT SUNSET/STAX)

2023-04-02 05:33:00 | Weblog

2007年6月10日(日)

#1 アルバート・キング「Call It Stormy Monday」(BUES AT SUNSET/STAX)








本日より、この新コーナー、音曲日誌「一日一曲」を始めさせていただきます。

皆さま、これまでの音盤日誌「一日一枚」同様、ご愛読よろしくお願いいたします。

さて、第一回の今日はこれ。ブルース・スタンダード中のスタンダード、「ストーミー・マンデイ」。

オリジナルはもちろん、Tボーン・ウォーカーだが、これを東の横綱とするならば、唯一タメを張れる西の横綱は、この人だと思う。キング・オブ・ブルース・ギター、アルバート・キング。断じて、オールマンズなどではないと思う。

アルバート・キング・バージョンの特徴は、コード進行がいわゆるストマン進行ではなく、通常の3コード・ブルース進行であること。また、アレンジもTボーンのジャズィなそれに比べて、ぐっとオーソドックスな、スローのシャッフルである。

そのため、Tボーンより、ずっとブルース色の濃いものとなっている。

Tボーンの都会性、洒脱さに対して、もっと日常的で生活感があるのがアルバート版。

アルバートはこの曲を結構気に入っていてライブの定番としており、いくつかのバージョンがあるのだが、筆者的に気に入っているのは、スイスのモントルーにてのライブ(73年)。

その、燻製の肉を思わせる(?)スモーキーな味わいあるボーカルはいうまでもないが、気合一発、瞬発力では誰にも負けない、エモーショナルなギター・プレイも圧巻のひとこと。

必聴の一曲であります。


音盤日誌「一日一枚」#500 U2「THE JOSHUA TREE」(Island 7 90581-2)

2023-04-01 05:37:00 | Weblog
2023年4月1日(土)



#500 U2「THE JOSHUA TREE」(Island 7 90581-2)

アイルランドのロック・バンド、U2の5枚目のスタジオ・アルバム。97年リリース。ブライアン・イーノ、ダニエル・ラノワによるプロデュース。

本欄もついに500回目を迎えた。記念すべき一枚は、このベストセラー・アルバムにしたいと思う。

「ヨシュア・トゥリー」はまる1年をかけて制作された力作。全英で1位、全米で9週連続1位を記録し、全世界で2500万枚以上が売れた、彼ら最大のヒット・アルバムである。

この作品については、おそらく研究書一冊が軽く書けるくらい、多くのことが語られている。

だから本盤をレビューするのはとても気後れしてしまうのだが、気負わずに筆者なりの素朴な感想を書かせていただく。

オープニングの「ホエア・ザ・ストリーツ・ハヴ・ノー・ネーム(約束の地)」はアルバム3枚目のシングルともなったナンバー。

作詞はボーカルのボノ、作曲はメンバー全員(全曲共通)。全英4位、全米13位。

日本のTVニュース番組「ニュースステーション」でもテーマ曲として使われたので、耳に覚えがある人が多いだろう。

ジ・エッジによるきめ細かなギター・サウンドが印象的だ。これにアダム・クレイトンのベース、ラリー・マレン・ジュニアのドラムスが加わることで、盤石のビートが完成する。

U2はサウンドと同じくらい、歌詞の内容に重きを置いているバンドだが、この曲は北アイルランドのベルファストについてボノが聞いた「住民の宗教と生活程度が、住む場所によって決まっている」という話から生まれているという。テーマは政治や文化の問題なのだ。

かつての白人のポピュラー・ミュージックではほとんど取り上げることのなかった差別や分断の問題にも、ボノは遠慮なく切り込んでいったのである。

社会派ロックバンド、U2らしさがよく出た一曲である。

「アイ・スティル・ハヴント・ファウンド・ホワット・アイム・ルッキング・フォー(終わりなき旅)」はアルバムで2枚目のシングルとなった曲。全英6位、全米1位の大ヒット。

アメリカ・ミュージックの影響が色濃いナンバーだ。とりわけ、ゴスペルがボノの歌に息づいている。バックコーラスの深い響きも然り。

歌詞は具体的な社会問題というよりは、個人の心の求めるものをテーマにしていて、どのリスナーにもすんなりと受け入れられるような普遍性がある。そこもヒットの理由といえるだろう。

「ウィズ・オア・ウィズアウト・ユー」はアルバムから初のシングルとなったナンバー。

U2として初めて全米1位を獲得して、彼らの代表曲となった。全英4位。

歌詞は、見かけ上は男女の恋のもつれを描いたように思えるが、根底にはボノ自身の「自分はロックスターとしての生活と、普通の家庭人としての生活、どちらをとるべきか」という葛藤がある。

このふたつの間を行き来することが、自分の生きる道なのだとボノは悟ったのだろう。

ラヴソングとしても多くのひとの共感を得たことでヒット、そして現在はロック・スタンダードにもなったのである。

「ブレット・ザ・ブルー・スカイ」はハードでヘヴィーなビートが特徴的なナンバー。

この曲は、ボノがニカラグアとエルサルバドルに旅した時の経験が元になっている。

そこでの見聞、米国がかの地域へ軍事介入したせいで農民たちがどのような苦況に陥っているかを歌詞で訴えたのだ。

豊かな国、米国の歪んだ姿への抗議が、込められている。当アルバムでは最も政治的なナンバーといえる。

ボノのシャウトが、アメリカを鋭く抉る一曲。

「ランニング・トゥ・スタンド・スティル」はピアノ、アコースティック・ギターをフィーチャーしたスロー・バラード。

フォーク、ブルースなど米国のルーツ・ミュージックへの傾倒から生まれたサウンド。

ロック・ビートにこだわってきたU2が到達した新境地を示す一曲だ。

後半では、ボノが吹く素朴な味わいのハープを聴くことが出来る。

ダブリンのヘロイン中毒のカップルを描いた歌詞が、心に強く突き刺さる。アイルランドのミュージシャンにもヘロイン中毒者が多くいた。社会問題を提起する一曲。

「レッド・ヒル・マイニング・ダウン」は2番目のシングルとしてリリースの予定だったが、上記の「終わりなき旅」に変更になったナンバー。2017年にはリミックスされ、シングルとなっている。

84年の英国の炭鉱労働者のストライキ問題をモチーフとした歌詞である。

労組と警察の対立、市民紛争をクローズ・アップして歌う姿勢は、84年にU2が初共演したボブ・ディランの影響も強いのだろう。

力強いビートをバックに従えて激しくシャウトするボノの説得力は、ハンパない。

「神の国」は北米のみで4枚目のシングルとしてリリースされたナンバー。全米44位。

アップ・テンポのロック・ビート、エッジのスピーディなギター・プレイが印象的だ。

神の国とは、米国のことである。豊かでありながら、荒廃し切った国。

その矛盾した性格を象徴しているのが、アルバム・ジャケットにも撮影された、カリフォルニア州のモハベ砂漠なのであろう。

その砂漠に生える植物が、最初の預言者ヨシュアの名前を持つユッカの木なのだ。

旧約聖書の「約束の地」カナンを米国になずらえたこの作品は、最もふさわしいジャケット写真を得て、アートワークとしても優れたものになった。

「トリップ・スルー・ユア・ワイヤーズ」はフォーク、ブルース色の濃いナンバー。ここでもボノはハープを吹いている。

歌詞は男女の恋愛について書いたように見えるが、砂漠の中で渇きをおぼえていた男に、神か悪魔(である女)が降臨したのだとも思える。

アルバムの流れから言えば、そういう聖書みたいなシチュエーションもありかもしれないね。

「ワン・トゥリー・ヒル」はニュージーランドとオーストラリア限定でアルバム4枚目のシングルとしてリリース、ニュージーランドでは1位を獲得するヒットとなったナンバー。

U2は84年世界ツアーの途中、ニュージーランドでグレッグ・キャロルというローディーと知り合いになり、彼をその後もツアー・メンバーとした。

そのキャロルがオートバイ事故で亡くなったのを偲んで書いた作品だ。

ワン・トゥリー・ヒルとはオークランドの最大の火山であり、キャロルがボノをそこに案内したのである。

ワンテイクで取られたというボノのボーカルは亡き友への哀惜の情に満ちていて、聴くものの胸を締めつける。

「エグジット」は、ささやくような歌から始まり、次第にトーンを上げていくナンバー。殺人シーンを思わせる不穏な雰囲気に満ちている。

連続殺人犯の心情を描いたこの曲は、米国の小説家ノーマン・メイラーの「死刑執行人の歌」、トゥルーマン・カポーティの「冷血」などにインスパイアされて出来たという。

ジャム・セッションから生まれたような偶発的な音が、他のかっちり構成されたトラックとは大きく違って、実に生々しい。

人間の狂気というものを表現してみせる、ボノのパフォーマンスがスゴいのひとこと。

ラストの「マザーズ・オブ・ザ・ディサピアード」も、「ブレット・ザ・ブルー・スカイ」同様、ボノのニカラグアとエルサルバドル旅行での見聞が下敷きになっている。

アルゼンチンやエルサルバドルの子供たちが誘拐された事件を知り、その被害者女性らの団体とも交流を持ち、彼女たちに同情して書かれた。

ゆったりとしたビートを持つナンバー。悲しみに満ちたハイトーンの歌声がまことに美しい。

スケールの大きい本アルバムの、締めくくりとして最もふさわしい曲だと感じる。

アメリカという、U2のメンバーにとって憧憬の対象であると同時に反感、嫌悪の対象ともなっている巨大な存在をテーマに綴られた曲群。

単なるポピュラー・ミュージックの域をとうに超えて、それはもう文学であると言ってよい。ボブ・ディランの作品が本質的に文学であるように。

つまり、言葉抜きではU2を理解したことにはならない。

英語を得意としないわれわれ日本人のU2リスナーが、ボノの意図するところ、歌詞のニュアンスをどれだけ理解出来ているか、はなはだ疑問がある。

とはいえ、少なくとも言えることは、彼らの作品を聴くときは、サウンドだけをさらっと聴き流していてはダメだと思う。

歌詞の英語が分からなければ調べてみる。英米の音楽サイトで、U2について調べる。

そのくらいは気合いをいれて、彼らの音楽と付き合いたいものだ。

そういった作業を一度はしてみれば、彼らの音楽が倍は魅力的に感じられるに違いない。

<独断評価>★★★★☆

【筆者あいさつ】

毎日更新を重ねてまいりました本欄、音盤日誌「一日一枚」も、ついに連載500回を迎えることが出来ました。

これまで愛読、応援してくださった皆さまには、感謝の気持ちでいっぱいです。

本当にありがとうございます。

明日からは「一日一枚」に変わる連載といたしまして、毎日一曲ずつをクローズアップする企画を始めたいと思います。

題して、音曲日誌「一日一曲」。

ジャンルや時代、国を問わず、私がいいと思ったポピュラー・ナンバーはどんどん取り上げていきたいと思います。

引き続きご愛顧を賜りますよう、何卒よろしくお願いいたします。筆者敬白