記憶探偵〜益田啓一郎のブログ(旧博多湾つれづれ紀行)

古写真古地図から街の歴史逸話を発掘する日々。ブラタモリ案内人等、地域の魅力発掘!まち巡りを綴ります。

初三郎をテーマに京都の町歩きを楽しむ

2007年06月10日 21時40分21秒 | 吉田初三郎
 京都出張から戻って、週末は体調を崩して身体中が痛い。重い荷物
をリュックで背負ったまま、京都を歩き回りすぎたようで、昨年この
時期に痛めていた背筋とふくらはぎを再度痛めてしまったようだ。

 8日朝、河原町の定宿を出て祇園・八坂神社・丸山公園・知恩院~
鴨川沿い・三条通りを文化博物館~寺町通りへ戻り京都市歴史博物館
までの10kmほどの距離を、8kgの荷物を背負って歩いた自分が
バカであった(笑)。

 普段調子の良い時は、実はもっと歩く。東京だと神田神保町や日本
橋の定宿から新橋や浜松町まで普通に歩く感覚である。歩きながら、
町並みや風景、気になった看板なども写真に納める。手ぶらなら良い
のだが、さすがに荷物が多い時は止めようと思った。

 前日の7日、某博物館の学芸員と吉田初三郎のお孫さん宅へ伺った。
私自身は4月にも伺っており、今年すでに4回目の訪問。昨年、一昨
年と年4~6回ペースで訪れ、様々な資料を拝見し記録としてきた。
この日も事前にお願いしていた新資料なども拝見。長時間にわたって
資料を拝見しお昼までご馳走になりもてなしを受けた。

 初三郎のご遺族と接していて、共通しているのは「もてなし」上手
であることだ。こちらも相応の資料や手土産を持参するのだが、それ
以上の気遣いを毎回いただき感謝の気持ちで一杯である。先月、新た
に会った佐敷のご遺族も同様であった。

 7日はこの後、ご遺族を伴って観光社出版部であった和多田印刷を
再訪問した。4月の訪問時に判明した事実と資料の再確認を兼ねての
訪問で、元工場長に長時間にわたり当時の話や資料についての話など
を伺った。また、現在の和多田印刷の最新工場も見学させていただき、
明治の創業時から常に最新の技術を導入しつつも、とても家族的な経
営を続けてきたという同社の神髄を少しだが体感できた。

 その夜は同行の学芸員とともに先斗町のお店で会食した。お孫さん
の実家であり、先斗町でも老舗の料理屋である。納涼床を楽しみなが
らの会食は楽しいひとときとなった。ここでも新たにいくつか新しい
資料を拝見・確認でき、充実した一日であった。

 その勢いのまま8日を迎え、最初に書いたように調子に乗って初三
郎ゆかりの京都を歩き回った次第だ。八坂神社の南鳥居前にある和風
喫茶が初三郎が昭和9年以降に「観光社」事務所として活用していた
建物である。そこから丸山公園の中にある平野屋(いもぼう銘菓)横
を抜けて祇園から先斗町へ戻り、河原町三条の近く六角堂交差点の初
三郎巨大看板を眺めてすぐそばにある喫茶・六曜社で朝食を食べる。

 六曜社は戦後の観光社スタッフも立ち寄った喫茶で、二代目となっ
た吉田朝太郎はこの喫茶店の名を冠した会社から多数の作品を発表し
ている。観光社で一時期営業をしていた人物の妹婿が喫茶・六曜社を
創業したことが縁とのこと。しかし、今の六曜社の経営者やスタッフ
はそれらは全く知らない。

 六曜社で時間をつぶし、少し遠いが市歴史資料館へと歩いた。秋か
ら冬にかけて初三郎の京都関係の作品の企画展を計画しているとの事
で、事前に内容などをリサーチするためである。また京都在住の初三
郎研究の大先輩の古地図コレクションがここに大量に入っていると聞
き、興味を持って尋ねた次第である。会議中であったにも関わらず、
担当の課長に丁寧な対応をいただき感謝。

 その後、また三条通りへ戻り京都文化博物館を訪ねた。現在、歴史
の常設コーナーで初三郎のミニ展示をしているとのことで、観覧確認
するためであった。映像の企画展示にまず足が止まり、学芸員に色々
と尋ねた。映画撮影所が集中していた京都の映画史企画展で、そこに
当時の撮影フイルムや映写機などが展示されていて、9.5ミリフイルム
が目に留まったからである。

 同サイズのフィルムを知り合いの古書店が大量に入手しており、こ
れをどうにか再生録画できないかと1年前に尋ねられていたからであ
る。現在このフィルムを映写できる現役機材は僅かで、また映写でき
てもフィルム自体が痛む可能性が高いとのことで、50本以上あるフ
ィルムを未だ確認できていない。昭和初期の福岡県内各地の風景や、
大陸の風景が納められケースごと入手されているのだ。

 以前はこのサイズのフィルムは東京でないと再生できないと聞いて
いたが、学芸員に尋ねたところ現在は東京の業者も廃業し大阪の業者
が業務を引き継ぐ準備をしているとのこと。DVDなどに落とすとす
ると1本あたり50~100万かかるとのことだ。別の方法なども詳
しくアドバイスいただき、感謝であった。

 初三郎の展示は、歴史の企画コーナーに18点ほど印刷物作品が展
示されていた。いずれも同館の収蔵品とのことであった。

 8日、最後は京都駅にある初三郎原画を観に行った。11F西館の
レストラン街に「京都市鳥瞰図」がある。以前の駅ビルの観光デパー
トに掲げられていたものだが、新駅ビル再開発に際してもビル内に遺
してもらったのは有り難い。これだけ人通りが多い場所で、戦後の作
であってもこれだけ熱の入った初三郎絹本原画を見られる場所はない。

 研究家の藤本氏からこの絵の前で1時間以上じっくり観たと聞いて
いたが、確かに私のように300点近くの絹本原画を観ていても、こ
の作品はベスト3に入る内容・状態であるように思う。私もこの絵の
前で1時間近くを過ごした。晩年の作であるが、絵だけでなく文字ま
で初三郎の渾身の想いが入っている。

今日の写真は、その「京都市鳥瞰図」原画があるレストラン街。
通行する人も気になって立ち止まる人が多く、欲を言えば絵と
初三郎の解説があれば良いのだが。折角、京都の偉人100選にも
選ばれているのだから。

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