「YOSHI SMOKE ON!!」
レッドブルエアレース千葉2019の本戦が始まりました。
RedBullが今年でシリーズの終了をいきなり決定し、そのカレンダーも後半をばっさりキャンセルしてしまったためにこれで最後のエアレース。
海外であればルールに違いはあれどエアレースという文化はあるけれど日本で、しかも我が家がある千葉幕張の海でこういったイベントを見ることはもうないのでしょう。
しっかりと目に焼き付けたいと思い、夜明け前には並びに行くつもり。
ところがその時間に起きたものの、アラームを解除した後の記憶がない。
次に目が覚めたのが5時15分という痛恨のミス。
急いで支度し、あわてて飛び出す。
猛暑対策装備が多いし、帰りの時間は台風の影響がどうなっているのかがわからないために自転車は断念し、頼るのは自分の足のみ。
ひやぁー
ちょうど6時に到着し、一般席待機列では大体60番目くらい。
ちょっと気合いれすぎたか?
開場10時のところ台風15号が接近中のためにタイムスケジュールが早められ9時オープン。
それでも炎天下に3時間はなかなか過酷でした。
ぼくがいたところは最初の1時間ほどは日陰となっており、日傘代わりに折りたたみ傘も準備していたのだけれどまったくの無防備で日差しの直撃を受け続けていた人は大丈夫だったのだろうか。
開場後も一般席までは遠い遠い。
60番目なら最前余裕じゃんって考えていたのだけれども若い人にどんどん抜かされる。
それでも海岸線はとても広い。
最前列をゲットできました。
最前席数が限られるスペシャルシートではなく自由席(席といっても砂浜に持参したレジャーシートを敷くだけ。 それでも1日券で1万2000円)の選択が功を奏したか。
最後のレースが日本。
室屋義秀選手に勝って欲しい!
Round of 14
14人7組がそれぞれの対戦相手と競い勝者が次のステージに進めます。
しかしベン・マーフィー選手に0.015秒という僅差で破れてしまい敗退か!?
まわりからも悲鳴が聞こえる。
一昨年のワールドチャンピオンでここ千葉でも3度優勝している室屋さんがいきなり終わってしまうのはさすがに想定外。
でもまだ可能性は残っている。
ファステストルーザー(一番速い敗者)の名の通り、このRound of 14で負けた中で最速だった選手が次のRound of 8に進めるワイルドカード的なルールが残っている。
残りの6レースでそれぞれの敗者が室屋さんのタイムより下であることを祈るのみ。
室屋さんでない組み合わせでもドキドキしっぱなし。
ひとつふたつとレースが進み依然室屋さんがファステストルーザーだ。
もう上位常連の選手たちのタイムは気にならずとにかく敗者のタイムばかり追っかけてしまう。
Round of 16が終了し、ファステストルーザーは室屋さんに決定。
敗者復活でなんとか残れました。
さすがにF1イタリアGPやサンマリノGPでフェラーリがリタイアした時のティフォシたちのように帰るなんてことにはならなくても、やはりテンションが落ちてしまうのは否めないからね。
次のRound8までの間はサイドアクトの時間。
海上自衛隊が世界に誇る高性能飛行艇、新明和「US-2」の飛来です。
全長33.25mとほぼ同じ長さの33.15mの主翼で空気を掴みゆったりと旋回しています。
その遅さは飛行機という概念を覆されてしまう光景です。
風向きの違いなのか昨日予選日とは逆の浦安側からのアプローチで高度を下げてきました。
4基のターボプロップエンジンやBLC吹き出しによる下方偏向された後流の影響で盛大に波しぶきがあがりカッコイイ!
ざぶーーーん
着水。
なるほど、だから垂直尾翼の上の水平尾翼が乗せられたT字尾翼なのか。
水平尾翼が低翼だったら波の衝撃で破損してしまうものね。
低尾翼の二式大艇はどうだったんだろうか。
おちり♡
小型船の助けも必要とせずにくるりと優雅にレヴューを魅せてくれる姿はまさにスタァ。
正面ドーンだYO!!
そして再びエンジンの唸りが高まり滑水開始。
ふわりと浮き上がるその距離300m足らず。
エアレースのパイロン1間隔分もありません。
とんでもない性能ですよコレは!
楽しませてくれてありがとうー
続いて会場に進入してきたのは千葉消防局「おおとり1号」「2号」のアエロスパシアルAS365ドーファン。
消火用の水をドバーっ散水ショー
2号が水面に要救助者役の隊員をおろして(波に隠れて写真に写ってないー)
1号がレスキュー
今年は藤岡弘、探検隊のBGMはかかっておらずw
颯爽としたその姿にテールフィンに描かれた初音ミクさんも誇らしげ。
えっ?
近い近い近い!!!!
ローターが起こすダウンウォッシュに飛沫や舞う砂が顔に当たり少し痛いけれどなんだか嬉しい(M?)
さすがここがホームグラウンドの千葉市消防航空隊
いつも千葉市民を守ってくれてありがとー!
続いてはスバルT5練習機4機による海上自衛隊ホワイトアローズ。
T5は航空学生が初めて操縦する機体で、このホワイトアローズは教官パイロットで編成されているチームです。
ミッシングマンフォーメーション?
だれか亡くなったの?と思いきやタイミングをずらし次々と上昇していく。
ローリングコンバットピッチみたいなものか?
山口県の小月航空基地から(このエアレース期間は下総基地に進出)きてくれてありがとー
と、ここまで始まってからわずか3時間。
とかくこういった催しはそれぞれの間隔が開き間延びしてしまいがちなのですが迫る台風15号との競争となり、開場が1時間早められ、閉場は3時間の前倒し。
次々とやってくる怒涛の進行でフードコートに食べ物を買いに行く時間もありません。
猛暑対策で氷とスポドリを詰めた1リットル水筒2本持参していたので現地ではRedBull1本を買ったのみ。
屋台村の売上どうだっただろ?
波も少しづつ大きくなりパイロンも揺れ始めます。
3分ほど激しい雨がふり急いでレインウェアを着込む。
「雨やめーっ!!」
Round of 8がスタート。
風速が5mを超え揺れるパイロンの中を卓越したテクニックで抜けていくエアレースパイロット。
エントリー制限スピードぴったりという素晴らしいスタートをきった室屋選手。
57.895となかなかの好タイムをマーク。
対するフランソワ・ルボット選手もスタート直後はわずかに室屋さんを上回るタイムだったもののインコレクトレベル(2本のパイロン通過時に機体が水平になっていない)で2秒ペナルティ。
そしてパイロンヒットで3秒と合計5秒のペナルティで敗退。
室屋さん決勝ステージのRound of 4に進出です!
世界チャンピオンシップ1位マルティン・ソンカ選手が、まさかのRound of 16で敗退してしまったために最大のライバルとなるランキング2位マット・ホール選手は危なげなくRound of 4に進出。
4人で争われる中、室屋さんが1位でこのマット・ホール選手が4位ならば逆転で世界チャンピオンです。
詰まるタイスケの中すぐに始まったRound of 4。
これまでピットと仮設滑走路が設置されていた浦安が今年は使えず、木更津の陸自航空基地に変更となったためにここ幕張のコースまでの往復時間が3倍以上に。
Round of 8では2組目の室屋さんに対して最後の組だったマット・ホール選手の精神状態への影響はどうでるか?
次のRound of 4はこれまでのペアマッチ戦とは変わり残り4人による直接勝負です。
と、Round of 4が始まった2ゲート目でのいきなりの波乱。
ピーター・マクロウド選手がパイロンヒットと次いでインコレクティブレベルでの5秒ペナルティ。
迫る台風の中あっという間にパイロンを修復するエアゲーターたち。
このナイスガイたちの超絶テクニックを見れるのもこれで最後となっちゃうのかも……
続いて室屋義秀選手がスタート。
室屋さんはもちろん危なげなく、それでいてプッシュプッシュの気迫のこもったフライト
ああ、この素晴らしい時間がもうすぐ終わっちゃう……
58秒06でフィニッシュ
これで室屋さんの表彰台が確定しました。
けれど……
素直には喜べない。
4位となったピーター・マクロウド選手は5秒というあまりに大きなペナルティ。
マット・ホール選手が4位ならば室屋さんに年間チャンピオンとなる可能性があるのですが、そうなるためにはマット・ホール選手がピーター・マクロウド選手より悪いタイムである必要があり、パイロンヒットとインコレクティブレベルで5秒ペナルティ以上のタイムになることがあるのかどうなのか……
これはなかなか難しそうです。
Mr.RedBullカービー・チャンブリス選手。
この大会主催のRedBullからスポンサードを受け各媒体でもおなじみのこの機体もこれで見納めです。
各セクションとも室屋さんよりわずかに遅れ59秒601でカービー・チャンブリス選手フィニッシュ。
これで室屋さんの2位は確定です。
残すは1人。
最後の「スモークオン!」
観客のスモークオンコールもひときわ大きくこの広い会場に響きます。
レッドブルエアレースの歴史で最後のフライトとなるマット・ホール選手がスタートです。
ああ、終わって欲しくない……
ずっと続いて欲しいと思うにはあまりに短いこの時間。
マット・ホール選手は1分052でフィニッシュ。
ピーター・マクロウド選手が5秒ペナルティで1分04秒028なので危険を犯すこと無く3位で終了。
これで室屋義秀選手の優勝が決定!!
そして年間チャンピオンはわずか1ポイント差でマット・ホール選手となりました。
室屋さんはチャンピオンシップは2位と残念でしたが1位となったマット・ホール選手は最終ステージ常連の強豪選手でありながらいまだ無冠。
そのマット・ホール選手がレッドブルエアレース最後のチャンピオンに輝き、そして日本での大会に室屋義秀選手が優勝する。
最高の結末ではないでしょうか。
名残惜しそうにフィニッシュ後ももう一度戻ってきてくれフライパスするマット・ホール選手。
歓声と拍手とそしてすすり泣く声。
最後の最後まで競り合った素晴らしい最終戦にぼくも涙をこらえることができません。
こうしている間にもどんどん近づいてくる台風に追い立てられるようにあっというまにパイロンが片付けられていく。
まるで大会終了を待っていたかのように波もうねり始め風も強くなってきた。
3時間繰り上げた運営の判断は見事でした。
毎年大会が近づくにつれ海浜幕張駅前や通りに掲げられるバナーに心躍り、開け放たれた我が家の窓から聞こえてきた甲高いエアレース機の練習フライトの音に聞き惚れる。
そんな時間がもう来年からは無いのだと思うと淋しくはあるのですが、これまでの5年間。
ここ千葉・幕張の地でこんなに華々しく素敵な大会を開催してくれたRedBull関係者様。
千葉誘致に尽力された方々や熊谷千葉市長。
素晴らしいフライトを見せてくれた選手のみなさん。
そして世界中から幕張に集まってくれてファンのみなさん。
本当にありがとうございました。