ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

雨竜第二ダム(元)

2019-11-06 14:17:05 | 北海道

2019年10月22日 雨竜第二ダム(元)

雨竜第二ダム(元)は北海道雨竜郡幌加内町朱鞠内の石狩川水系宇津内川にある北海道電力が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
明治末期に苫小牧に進出し千歳川で自社工場向け電源開発を進めていた王子製紙は、やがて本業の製紙業とともに発電事業への展開を目論み水量豊富で急流河川である雨竜川上流域に着目、1928年(昭和3年)に子会社『雨竜電力(株)』を設立し、1939年(昭和14年)より本格的なダム建設工事が着手されました。
この際、雨竜川支流の宇津内川の水も発電に活用するために雨竜第一ダム(元)北西3キロ地点の宇津内川に第二ダム建設が進められました。
1942年(昭和17年)の電力統制令により雨竜電力は日本発送電により接収され解散、事業は日本発送電が引き継ぎ翌1943年(昭和18年)に雨竜第一ダム、鞍部ダムである雨竜土堰堤とともに雨竜第二ダムが竣工しました。
雨竜第二ダム完成により総貯水容量2158万9000立米の宇津内湖が出現し、同時に完成した朱鞠内湖との間には連絡水路が設けられ両湖は一体化されました。
戦後の電力分割民営化により第二ダムは第一ダム、土堰堤、雨竜発電所などともに北海道電力が事業を引き継ぎ現在に至っています。
一方2018年(平成30年)には国交省により新たに雨竜川ダム再生事業が採択され、下流域の洪水被害軽減目的のため既存の発電用ダムである雨竜第一、第二ダムの再開発が決まりました。 
具体的には第一ダムでは利水容量のうち予備放流容量を洪水調節容量に振り替えることで新たに1870万立米、第二ダムでは同じく予備放流容量からの振り替えと堤体の2.4メートル嵩上により630万立米、計2500万立米の洪水調節容量が確保され、治水機能が付加される予定です。 
 
雨竜第二ダム及び宇津内湖と朱鞠内湖の連絡水路の位置関係
 
国道275号から道道528号に入り、朱鞠内湖展望台や雨竜第一ダムへの分岐を見送ってそのまま北上すると車両通行止めのゲートに突当たります。
ここから徒歩で500メートルほど歩くと雨竜第二ダムが見えてきます。
クレストにローラーゲートが4門、ピアには被覆された管理橋が乗りいかにも雪国の発電用ダムと言った風です。
 
堤高35.7メートルはわかりますが、堤頂長230メートルには見えません。
樹林で隠れている左右両側に堤体が広がっているんでしょう。
 
痛みの見えるコンクリートがダム完成後80年近い歴史を物語っているようです。
 
雨竜川ダム再生計画により嵩上げが実施されれば今とは違う姿の第二ダムに生まれ変わります。
本格的な嵩上げ事業はまだ先でしょうが、今の第二ダムの姿を目に収めることができたのは、幸甚この上ないことだと思います。
 
(追記)
雨竜第二ダム(元)は洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。  
 
0039 雨竜第二ダム(元) (1552) 
北海道雨竜郡幌加内町朱鞠内
石狩川水系宇津内川
35.7メートル
230メートル
21589千㎥/11358千㎥
北海道電力(株)
1943年
◎治水協定が締結されたダム
-------------------
3701 雨竜第二ダム(再)
北海道雨竜郡幌加内町朱鞠内
石狩川水系宇津内川
FP
38.1メートル
255メートル
24100千㎥/13900千㎥
国土交通省北海道開発局建設部
2018年~

雨竜土堰堤

2019-11-06 13:37:02 | 北海道

2019年10月22日 雨竜土堰堤 

雨竜土堰堤は北海道雨竜郡幌加内町朱鞠内の天塩川水系温根別川支流太釜別川源流部にある北海道電力が管理する発電目的のアースフィルダムです。

1943年(昭和18年)に雨竜第一ダムの鞍部ダムとして雨竜第一ダムとともに竣工しました。
ダム完成により出現した朱鞠内湖は湛水面積2373ヘクタールと人造湖としては現在でも日本最大、総貯水容量も2億4465万3000立米と日本第12位の規模を誇る日本屈指のダム湖となっています。
雨竜第一ダム、雨竜土堰堤合わせた堤体積30万8000立米で総貯水容量日本第12位の朱鞠内湖を支えており、貯水効率794%とこのクラスのダムとしては屈指の貯水効率となっています。
またダム便覧では雨竜土堰堤の河川は石狩川水系太釜別川となっていますが、これは天塩川水系の誤りで、主堤と副堤で水系が異なる珍しいダムです。
 
雨竜第一ダムと雨竜土堰堤の位置関係。
 
国道275号線と道道251号線の三差路北側に雨竜土堰堤がありますが、堰堤へ通じる管理道路は立ち入り禁止となっています。
朱鞠内湖は湖岸は複雑に入り組んでおり、対岸から土堰堤を望める場所もありません。
こちらは堰堤右岸への道路入口。

こちらは左岸への道路入口。
 
0041 雨竜土堰堤 
北海道雨竜郡幌加内町朱鞠内
天塩川水系太釜別川
22メートル
442メートル
244653千㎥/172119千㎥
北海道電力(株)
1943年

雨竜第一ダム(元)

2019-11-06 10:45:26 | 北海道

2019年10月22日 雨竜第一ダム(元) 

雨竜第一ダム(元)は北海道雨竜郡幌加内町朱鞠内の石狩川水系雨竜川源流部にある北海道電力の発電用重力式コンクリートダムです。 
明治末期に苫小牧に進出し千歳川で自社工場向け電源開発を進めていた王子製紙は、本業の製紙業とともに発電事業への展開を目論み水量豊富で急流河川である雨竜川上流域に着目します。 
1928年(昭和3年)に子会社『雨竜電力(株)』を設立、1939年(昭和14年)より本格的なダム建設工事が着手されました。 
ところが1942年(昭和17年)の電力統制令により雨竜電力は日本発送電により接収され解散、事業は日本発送電が引き継ぎ翌1943年(昭和18年)に鞍部ダムである雨竜土堰、同時に建設が進められていた雨竜第二ダムとともに雨竜第一ダムが竣工しました。 
ダム完成により出現した朱鞠内湖は湛水面積2373ヘクタールと人造湖としては国内最大、総貯水容量も2億4465万3000立米と日本第12位の規模を誇る日本屈指のダム湖となっています。 
朱鞠内湖で取水された水は延長6.7キロの導水路で雨竜発電所に送られ最大出力5万1000キロワットのダム水路式発電を行ったのち、流域変更して天塩川に放流されます。 
日本最大級の人造湖を支えるダムとして、また戦前の貴重な土木技術を評価して日本100ダム及びCランクの近代土木遺産に選定されています。 
  
雨竜ダム及び雨竜発電所は戦後の電力分割民営化により北海道電力が事業を引き継ぎ現在に至っており、2013年(平成25年)には河川維持放流を利用して最大1120キロワットの発電を行う朱鞠内発電所が新設されました。 
一方2018年(平成30年)には国交省により新たに雨竜川ダム再生事業が採択され、下流域の洪水被害軽減目的のため既存の発電用ダムである雨竜第一、第二ダムの再開発が決まりました。 
具体的には第一ダムでは利水容量のうち予備放流容量を洪水調節容量に振り替えることで新たに1870万立米、第二ダムでは同じく予備放流容量からの振り替えと堤体の2.4メートル嵩上により630万立米、計2500万立米の洪水調節容量が確保され、治水機能が付加される予定です。 
  
雨竜第一ダムのダム湖である朱鞠内湖は北海道を代表する観光地となっており、道路案内等も整備され迷うことはありません。 
日本のダム100にも選定され日本最大の朱鞠内湖を支えるダムですが、ダムの敷地へは立ち入りできず道路から遠望するのみ。 
 
  
クレストにはローラーゲート4門、日本最大のダム湖を支えるには意外に小さなダムと言うのが偽らざる印象。 
雨竜土堰堤を含めても貯水効率は794%と際立つ効率の良さ。 
 
  
ダム右岸上流部が朱鞠内湖展望公園となっており上流面を見ることができます。 
 
  
ゲートをズームアップ。 
 
  
天端は立ち禁ですが高台から俯瞰できます。 
 
  
ダム湖畔の雨竜ダム案内板。 
ずいぶん昔のもので1995年(平成7年)に廃止された深名線がまだ書きこまれています。 
もしかしたら昭和のものかも? 
 
  
展望公園に建つ慰霊碑。 
氷点下40度を切る極寒の地での過酷な労働により多数の労働者が犠牲となりました。 
 
  
朱鞠内湖 
湛水面積日本最大の人造湖で北海道を代表する観光スポットになっています。 
 
  
朱鞠内湖は鞍部ダムとして雨竜土堰堤がダム便覧に掲載されていますが、それ以外に雨竜第一ダム左岸にもう一基副堤があります。 
こちらは堤高が15メートルに届かずダムの要件は満たしていませんが、どうやらコンクリートフェイシングフィルのようです。 
 
  
副堤下流面。 
 
  
日本を代表するダムの一つですが、残念ながらダム敷地は立ち入り禁止のため見学スポットは限られています。秋の訪問だったので樹間から下流面を見ることができましたが、盛夏なら難しかったかもしれません。 
民間企業所有の発電用ダムですのでぜいたくは言えませんが、せめてもう少し下流側からの展望ポイントを整備していただけたらと思うところです。 
 
(追記) 
雨竜第一ダム(元)は洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。   
 
0040 雨竜第一ダム(元) (1551) 
北海道雨竜郡幌加内町朱鞠内
石狩川水系雨竜川
45.5メートル
216メートル
244653千㎥/172119千㎥
北海道電力(株)
1943年
◎治水協定が締結されたダム
---------------------
3700 雨竜第一ダム(再)
北海道雨竜郡幌加内町朱鞠内
石狩川水系雨竜川
FP
45.5メートル
216メートル
244653千㎥/172100千㎥
国土交通省北海道開発局建設部
2033年 竣工予定

西岡ダム

2019-11-06 00:45:52 | 北海道
2019年10月22日 西岡ダム
 
西岡ダムは北海道上川郡剣淵町南桜町の天塩川水系小沢川源流部にある北海道建設部が管理する多目的ロックフィルダムです。
建設省(現国交省)の小規模ダム事業である生活貯水池事業の補助を受けて建設された補助多目的ダムで小沢川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、剣淵町への上水道用水の供給を目的として2009年(平成21年)に竣工しました。
 
剣淵町中心部から道道984号線を西進すると西岡ダムを示す小さな標識が現れます。これに従って左折し小沢川沿いの隘路を進むと西岡ダムに到着します。
ダム下への道は堤体のかなり手前で立ち禁。
ダム便覧に掲載されている真っ白いリップラップと綺麗に整備されたダム下は今は昔。
10年たてば草はボウボウ、リップラップの石もかなり汚れています。
 
下流面。
 
右岸の洪水吐
同じ越流頂の洪水吐が3門並びますが、向かって右手の内側のゲートだけ導流部が深くなっています。
越流の際はできるだけ内側に導流し右岸の洗掘を抑える目的なのでしょう。
 
洪水吐導流部
内側1門だけ導流面が低くなっているのがわかります。
 
上流から見た洪水吐
こちらも内側1門だけ低くなっています。
 
 
天端は車両進入禁止。
 
左岸の管理事務所と斜樋。
 
ダム湖は総貯水容量84万4000立米。
生活貯水池事業の目安である100万立米未満です。
 
左岸から見た上流面。
 
ダム便覧に掲載された竣工直後の写真とはずいぶん様相が変わってしまった西岡ダムです。
じっくり見学したかったのですが大量のカメムシが飛び交いすごいことに・・・
天端はカメムシで足の踏み場もなく、歩いているとカメムシが顔にバチバチとぶつかってきます。
ただ本州のカメムシと違って刺激してもすぐに臭いを出さないところは救いでしたが、ヒッチコックの鳥じゃないけどカメムシに追い立てられるように退散した西岡ダムでした。
 
(追記)
西岡ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
3196 西岡ダム(1550) 
北海道上川郡剣淵町南桜町
天塩川水系小沢川
FNW
31メートル
247メートル
844千㎥/664千㎥
北海道建設部
2009年
◎治水協定が締結されたダム