2016年5月14日 宮中取水ダム
2023年9月24日
宮中取水ダムは左岸が新潟県十日町市宮中、右岸が同市小原の一級河川信濃川本流にある東日本旅客鉄道(株)(JR東日本)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
大正期に入り首都圏への人口集中による大量輸送に対応するため都心を中心に鉄道の電化が進められ、当時の鉄道省はその電源を信濃川中流部に求めました。
まず1939年(昭和14年)に当ダムと千手発電所が完成、1945年(昭和20年)の浅河原調整池の完成により千手発電所の発電能力は戦前の一般水力発電としては屈指の出力12万キロワットに達します。
さらに戦後の電力不足に対処するため1951年(昭和26年)に千手発電所の放流水を利用して山本調整池と小千谷発電所(最大出力12万3000キロワット)が完成。
さらに戦後の電力不足に対処するため1951年(昭和26年)に千手発電所の放流水を利用して山本調整池と小千谷発電所(最大出力12万3000キロワット)が完成。
1990年(平成2年)には追加の水利権を獲得し当ダムに宮中第二取水口が増設されるとともに山本第二調整池と小千谷第二発電所(最大出力21万キロワット)が竣工、3発電所合わせて最大45万キロワットの発電能力を有し、これはJR東日本管内で消費する全電力量の2割強に相当します。
宮中取水ダムは鉄道電化による輸送力増強に大きく貢献したことなどを評価し、2016年(平成28年)に千手発電所や浅河原調整池などとともに土木学会選奨土木遺産に選定されました。
一方で1997年(平成9年)の河川法改正による河川維持放流義務化前までは、当ダムで信濃川の水を根こそぎ取水していたため小千谷までの信濃川中流域は水無川となり、伝統のサケ漁業は壊滅し流域の自然環境にも大きな影響を与え長く流域自治体や住民との対立が続いてきました。
さらに2008年(平成20年)に不正取水と悪質な隠ぺい工作が発覚し、一時水利権はく奪という厳しい行政処分を受けました。
それ以降は不祥事の反省から流域地域への発電の理解を深める施策に力を入れ、魚道観察室を設け開かれたダムを目指す一方、地元漁協と連携したサケの稚魚放流やNPO団体と共同での自然保護活動に注力するなど地域との共存共栄を図る努力を続けています。
宮中取水ダムには2016年(平成28年)5月に初訪、2023年(令和5年)9月に再訪しました。
掲載する写真にはそれぞれ撮影日時を記載しています。
JR東日本信濃川発電所概要図(JR東日本パンフレットより)
宮中取水ダムで取水された水がいったん浅河原調整池に貯留され、千手発電所に送られ発電に利用されます。
さらにその放流水は山本調整池を経由して小千谷発電所に送られます。
一方、宮中第二取水口で取水された水は山本第二調整池を経て小千谷第二発電所に送られます。
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ダム下流の宮中橋から、ダムと正対できます。
堤頂長330メートル、主ゲート9門と土砂吐ゲート2門で信濃川を閉め切ります。
宮中取水ダムは日本一の大河信濃川本流にある唯一のダムです。
(2023年9月24日)
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河川維持放流は右岸にある魚道へ魚を誘導するため、右岸側ゲートで行われます。
訪問時は直前の大雨もあり4門から放流中。
(2023年9月24日)
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ヘアピンカーブを描く右岸のは宮中取水ダムの特徴の一つ。
これぞ宮中取水ダム撮影の定番スポット。
(2023年9月24日)
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多様な魚の遡上に対応するためアイスハーバー式魚道、階段式魚道、せせらぎ魚道の3種類の魚道が設けられています。
(2023年9月24日)
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魚道観察室。
この日は魚は確認できず。
(2023年9月24日)
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水利使用標識。
最大45万キロワットの発電のため、毎秒316.96立米もの水利権を有しています。
(2023年9月24日)
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天端は職員駐在時間中の日中のみ開放され車両の通行もできます。
豪雪地帯ということでゲートビアは被覆。
機械室への階段がちょっとアンバランスな独特のデザイン。
(2016年5月14日)
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管理橋の下には鉄骨トラスが隠れています。
(2016年5月14日)
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主ゲートとなるローラーゲート。
(2016年5月14日)
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こちらが1990年に増設された宮中第二取水口
山本第二調整池を経由して小千谷第二発電所で最大21万キロワットの発電を行います。
(2023年9月24日)
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左岸高台から宮中第二取水口を俯瞰
戦前に建設された大がかりな宮中取水口に比べ、コンパクトな第二取水口は技術の進歩の証。
(2023年9月24日)
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左岸から下流面
手前1番と2番ゲートは土砂吐ゲート。
(2023年9月24日)
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当ダムで取水され発電に供された水は、その後各地の灌漑用水や消雪用水として再利用されます。
こちらはその水利使用標識。
全部で8枚の水利使用標識が並ぶのは珍しい。
(2023年9月24日)
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(2023年9月24日)
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こちらは1939年(昭和14年)に完成した宮中取水口
スクリーンの上には除塵機が鎮座します。
(2023年9月24日)
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取水口の下流にある取水ゲート。
ここで取水量を調整します。
これだけで一つのダムのよう。
(2016年5月14日)
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取水口と取水ゲートを俯瞰。
(2023年9月24日)
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取水ゲートの下流にある巨大な沈砂池
JR東日本だけに恰もターミナルのようなスケール。
(2023年9月24日)
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沈砂池にもスクリーンと除塵機が設置されています。
最初のスクリーンと併せ2段構えで除塵します。
(2023年9月24日)
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沈砂池の先は浅河原調整池に通じる水路トンネル吞口となります。
(2023年9月24日)
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水路トンネル吞口にも2段のゲート群が設置されています。
(2023年9月24日)
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左岸の黄桜の丘公園にある選奨土木遺産のプレート。
(2023年9月24日)
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宮中取水ダムは一般の発電ダムとは一線を画す複雑かつ独特の構造となっています。
見学の際は、全体の水の流れを頭に入れダムを個としてみるのではなく信濃川発電所のネットワークの一つとしてご覧になることをお薦めします。
(追記)
宮中取水ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
0735 宮中取水ダム(0378)
左岸 新潟県十日町市宮中
右岸 同市小原
右岸 同市小原
信濃川水系信濃川
P
G
16.8メートル
330.8メートル
970千㎥/710千㎥
東日本旅客鉄道(株)
1939年
◎治水協定が締結されたダム