ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

門別ダム(庫富ダム)

2023-11-19 17:00:34 | 北海道
2023年10月19日 門別ダム(庫富ダム)
 
門別ダムは北海道沙流郡日高町庫富の二級河川日高門別川水系ダム沢川にある灌漑目的のアースフィルダムで、管理は日高門別土地改良区が受託しています。
ダム所在地から庫富(くらとみ)ダムとも呼ばれ、ダムサイトの記念碑や国土地理院地形図にも『庫富ダム』と記されていますが、ここでは門別ダムと記すことにします。

馬育成が盛んな日高地方の中で旧門別町では稲作中心の農業が展開されましたが、水源となる日高門別川は渇水が多く安定した農業用水源が求められていました。
これを受け道営事業により1971年(昭和46年)に竣工したのが門別ダムで、特定の農地に灌漑用水を供給するのではなく日高門別川で水不足が発生した際に補給を行う『補水ダム』として運用されます。
一方で昭和40年代以降の競馬人気や政府の減反政策を受け水田から競走馬育成や牧草地への転換が相次ぎ、これに比して門別ダムの放流頻度は減少の一途をたどります。
土地改良区のお話では直近では日高町の水田転作率は80%に達し、直近4年間は門別ダムからの用水補給は一度も実施されていないというのが現状です。
農業事情の変化とは言え、これほど立派な水源が十分に活用できないのはなんだかもったいない気がします。

ダムは関係者以外立ち入り禁止となっていますが、今回は事前に土地改良区の許可を頂きました。
その際、ダム建設の経緯や運用、日高町の農業事情についても詳しくご教授いただきました。
日高門別土地改良区には厚く御礼申し上げます。

門別ダムは門別本町から日高門別川沿いに道道351号を北東に約15キロの位置にあります。
ダムへの入口にはゲートが設けられ、『関係者以外立ち入り禁止』と表記されています。今回は立ち入り許可を得ています。

 
100メートルほど進むと右手に堤体が見えてきます。
堤高20.8メートル、堤頂長234メートル、犬走を挟んで3段の堤体。
ここ数年は補給がないとのことですが、定期的に草が刈られているようできれいな堤体です。
手前(右岸)に洪水吐斜水路があります。

 
余水吐斜水路に沿ってダム下に下ります
写真は減勢工で北海道の溜池ではよく見られるコンクリートの梁が渡されています。
この先を進むと底樋管まで行けそうでしたが、土地改良区の方にダム下はクマが出るので注意と諭されていたのでこれ以上進むのは自重。
天端に戻ります。


天端は草付き。
ちょっとわかりづらいですが、対岸に斜樋があります。

 
右岸の洪水吐斜水路
この先で流下し3枚目写真へと続きます。

 
横越流式洪水吐。
奥のトタン小屋は資材置き場。

 
洪水吐越しの上流面。


洪水吐のそばの水神
裏にダム建設の簡単な経緯が刻されています。

草が生えていますが上流面はコンクリートで護岸。
堤頂部のコンクリートは土留めのようです。


総貯水容量25万6000立米。
湖畔の紅葉が見ごろを迎えています。


天端から見た洪水吐。


左岸の斜樋
シャフトが10本並びます。

左岸から
奥の盛り上がった部分が洪水吐斜水路。


渇水に悩まされてきた農家の期待を背負って建設された門別ダムですが、農業事情の変化から灌漑需要が低減、なかなか出番がありません。
これに臍を噛んで悔しがっているのはダム自身かもしれません。 

0085 門別ダム(庫富ダム)(2015)
北海道日高郡日高町庫富
日高門別川水系ダム沢川
20.8メートル
234メートル
256千㎥/234千㎥
日高門別土地改良区
1971年