2024年1月26日 鋸山ダム・元名ダム見学
2024年(令和6年)の本格的なダム活は南房総からスタートすることにしました。
ダム便覧には千葉県のダムとして50基が掲載されていますが、そのうち到達困難な第2袋倉ダムを除く49基は訪問済みです。
しかしその多くはダム巡りを始めて初期のころの訪問で、知識不足もあり見落とし箇所が多々ありました。
そんな中、千葉県では県内水道事業の統合が計画されており、南房総地区でもいすみ市・御宿町・大多喜町・勝浦市の2市2町の水道事業が2025年(令和7年)4月の統合をめどに調整中との記事を目にしました。
他方鋸南町・館山市・南房総市・鴨川市の安房地区でも水道事業統合が検討されており、1月は安房地区、2月は夷隅地区の上水ダムを中心にダムを回ることにしました。
まず最初に訪れたのが鋸南町です。
町はでは鋸山ダムと元名ダムの2基の上水用水源を所有していますが、どちらも関係者以外立入り禁止となっており、見学に際しては事前に「ダム敷地の一時使用届出書」を提出する必要があります。
今回は書類提出後、見学の許可を頂き建設水道課職員様案内での見学が叶いました。
まずは天端から見学開始
天端への入り口にはフェンスが設置されています。
職員さんに鍵を開けていただきます。
ダムへ続く通路
副ダム?止水工?諸説ありましたが職員さん曰く『通路』。
この写真のみ2016年1月12日撮影のものです。
通路を進むと再びフェンスがあります。
フェンスには水利使用標識。
堤体の手前(右岸側)には高さ10メートルほどの地山があります。
地山頂上の竣工記念碑
昭和卅七年九月と記されています。
卅という字は今はほとんど使いません。
記念碑から堤体を見下ろします。
昭和30年代の上水ダムらしく、ゲート部分が一段高くなり取水設備は半円形。
取水設備は4段の選択取水式で、それぞれの取水口の開閉用ハンドルが並びます。
洪水吐ゲート
扶壁に溝がありますが、完成当初はスライドゲートを装備していたそうです。
その後撤去され今は自由越流頂になっています。
天端からダム下を見下ろします。
ダム直下は鋸南町建設水道課の資材置き場で、中央の白い線の下に浄水場への導水管が埋設されています。
この写真ではほとんどわかりませんが、写真左上部分に微かに東京湾が見えます。
洪水吐導流部
昭和30年代だと、この緩やかな導流壁の建設にはさぞかし手がかかったのでは?
総貯水容量14万7000立米の貯水池。
少雨のため貯水率は40%台まで低下。
取水塔の円形バルコニーを見下ろすと
右手4つは上記のように取水口開閉用ハンドル
左手二つは水量調節用のハンドルですが、いまは開放したままほとんど操作しないそうです。
洪水吐上にもハンドルが並びます。
かつて装備していたスライドゲート開放用のハンドルですが、今はゲートが撤去されたためこのハンドルも用無し。
洪水吐導流部と減勢工。
放流量は多くなく小さな減勢工
奥に副ダムが見えます。
洪水吐中央上流側のバルコニーがあります。
このハンドルは土砂吐ゲート開閉用ですが、ハンドルが撤去されゲートは閉めたまま。
これで天端の見学は終了
ダム下へと向かいます。
普段は閉まっているダム下資材置き場も開放されています。
資材置き場にマイカーで進入
交換予定の水管や古い巡視艇が並びます
白い砂利の下に浄水場への導水管が埋設されています。
白い砂利上に置かれたコーン
横に青い栓が見えます。
実はこれ河川維持放流用のバルブ。
ダムとほぼ正対
洪水吐は当初ゲートを備えていましたが今は自由越流。
導流部下部には土砂吐ゲート
手前の細いパイプは上記コーンから分水された河川維持放流用
訪問時は貯水率が低下したため維持放流は中断。
堤体直下まで接近、ダムにタッチできます。
手前の白い部分は染み出した石灰成分。
これにて鋸山ダムの見学は終了
元名ダムへと移動します。
こちらも立入禁止で職員さんにチェーンを開けていただきます。
天端の手前にもチェーン。
天端からは東京湾越しに伊豆半島まで遠望できます。
天端中央の竣工記念碑。
御影石に昭和55年3月と記されています。
総貯水容量7万7000立米の小さな貯水池。
少雨のため貯水率は40%台。
正面には斜樋。
斜樋をズームアップ。
天端を右岸から撮影
逆光でゴーストが入りました。
右岸の円形越流式洪水吐。
水位が下がっているので貯水池に入って撮影。
越流した水は隧道経由で斜水路へ
ちょうど木の枝が被さった奥に隧道があります。
ロックフィルなので当然上流面もロック材で護岸。
低水位ならではの眺め。
いったん天端に戻りダム下へと向かいます。
堤高28.2メートルをダム下から見上げると
千葉県唯一のロックフィルダムですが、リップラップには灌木が茂とてもロックフィルには見えません。
木が根を張ることでダムの構造に影響はないんでしょうか?
右岸の洪水吐斜水路
洪水吐を越流した水は上記隧道を経由してここを流下します。
洪水吐減勢工脇に放流口があります。
この河川には維持放流義務はなく水位低下用放流口となります。
この鉄板の下に放流口への分水バルブがあります。
でもさび付いた鉄板を見ればわかるように最近はこの放流口は使ってないそうです。
最後に左岸上流湖岸にある取水設備へと向かいます。
取水設備は斜樋で右手がゲート開閉用のハンドル。
基本的に取水量は一定でこのハンドルを回すことはほとんどないとのこと。
左手は水位計。
糸が伸びているのが水位計。
取水設備から洪水吐を遠望
かなり水位が低いのが分かります。
最後に二つのダムから水を送る鋸南町浄水場の写真で今回の見学は終了。
鋸南町水道事業のうち、この二つのダムの占める割合は70%弱
残りは南房総広域水道企業団からの受水になります。
現在南房総地域として夷隅地区及び安房地区それぞれで水道事業の統合がすすめられており、鋸南町・三芳水道企業団・南房総市・鴨川市の水道事業統合がそう遠くない時期に実現する見込みです。
最後にご多忙の中、2つのダムを丁寧に案内していただいた鋸南町建設水道課には厚く御礼申し上げます。