ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

小田ダム

2024-09-25 20:00:00 | 宮城県
2016年4月 2日 小田ダム
2024年7月28日
 
小田(こだ)ダムは宮城県栗原市一迫川台の北上川水系迫川右支流長崎川にある宮城県土木部が管理する多目的ロックフィルダムです。
栗駒山に源を発し栗原市、登米市を流下して旧北上川に合流する迫(はさま)川流域は伊達藩時代に新田開発された広大な穀倉地帯が広がり『金成耕土』と呼ばれています。
しかしもともとは河川が交錯する湿地帯だったこともあり洪水被害が多発、一方で1万ヘクタールを超える耕地面積に対して迫川の水量は絶対的に乏しく用水不足が常習化していました。
1957年(昭和32年)に迫川に花山ダム、1962(昭和37年)に三迫川に栗駒ダムが完成したことで治水能力は大きく向上しますが、用水不足はいまだ解決せず安定した水源確保やかんがい排水設備の整備は流域農家の悲願となっていました。
こうした状況を受け農林水産省は荒砥沢ダム及び小田ダム建設を軸とした国営かんがい排水事業迫川上流地区を採択、これに宮城県土木部が事業参加し迫川総合開発事業として治水機能を持った多目的ダム建設が進められることになりました。
そして1998年(平成10年)の荒砥沢ダムに次いで2005年(平成17年)に竣工したのが小田ダムで、両ダムともに補助多目的ダムになりますが施工は農林水産省によります。
小田ダムは長崎川の洪水調節(7月1日~9月30日の洪水期間中は最大毎秒360立米の洪水カット )迫川上流土地改良区4349ヘクタールへのかんがい用水の供給を目的とし、完成後は宮城県土木部が管理を受託しています。
小田ダム竣工と同年の2005年に国営事業全体も完了し金成耕土における用水不足はほぼ解消しました。

迫川上流地区概要図


小田ダムには2016年(平成28年)4月、2024年(令和6年)7月と2度訪問しており、掲載写真にはそれぞれ撮影日時を記載しています。
まずはダム下から
堤体は堤高43.5メートルに対し堤頂長は520メートルに及ぶ横長堤体。
ダム下は芝生の広場になっており、中央のくぼみはダム建設以前の長崎川の流路のあったところです。
ダムサイトの案内図には『ダム下流広場』と記され、当初は公園として開放する意図があったと思われますが、現在は立入り禁止。
(2016年4月2日)

 
洪水吐は高さはないものの減勢工が非常に長くなっており、シルの下流には洗堀防止のブロック工が並びます。
(2016年4月2日)

 
再訪時に同じアングルで
洪水期に加え前日まで雨により洪水吐から放流されていました。
(2024年7月28日)

 
ズームアップ
高さはないものの斜水路では転波列が見られます。
(2024年7月28日)

 
こちらは減勢工の下流側
このまま長崎川として流下します。
(2024年7月28日)

 
ダム左岸下流側の放流ゲート
再訪時はかんがい期のため放流量が増えています。
(2024年7月28日)

 
左岸高台にはパークゴルフ場が整備され、その一角が展望台になっています。
堤頂長520メートルの長いロックフィル堤体が一望できます。
(2024年7月28日)

 
左岸の係留設備
インクラインではなく浮桟橋です。 
(2024年7月28日)

 
右岸の洪水吐
同じ事業で建設された荒砥沢ダムと同じく、洪水吐は横越流式洪水吐とローラーゲート併設。
ローラーゲートは洪水期(7月1日~9月30日)は洪水調節容量を確保するために全開、非洪水期は全閉となります。
(2024年7月28日)

 
右岸から見た洪水吐ゲート
こちらは非洪水期のため2門のローラーゲートは閉じられたまま。
このゲートの下流側に横越流式洪水吐がありますが、ここからは目にすることができません。
(2016年4月2日)

 
左岸ダムサイトに移動
小田ダムの管理建屋はすべてエンジの早稲田カラーで統一
残念ながら天端やダム構内はすべて立入り禁止。
(2024年7月28日)

竣工記念碑。
(2024年7月28日)

 
右岸ダムサイトはかなり広くなっており、仮に開放したらローリング族が喜びそう。
(2024年7月28日)

 
上流から見た取水塔
かんがい用のため表層取水を行います。
(2024年7月28日)

 
ダム湖は総貯水容量972万立米。
(2024年7月28日)

 
ダムの下流約1キロにある川台頭首工、こちらも建屋はエンジ。
ダムから放流された水をここで取水し、いったん迫川に導水したのち4349ヘクタールの農地にかんがい用水を供給します。
(2016年4月2日)

 
(追記)
小田ダムでは台風等の襲来に備え事前放流を行うための治水協定が締結されました。
 
0310 小田ダム(0283)
宮城県栗原市一迫川台
北上川水系長崎川
FA
43.5メートル
520メートル
9720千㎥/9010千㎥
宮城県土木部
2005年
◎治水協定が締結されたダム