ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

広野ダム

2022-08-25 16:00:00 | 福井県
2022年7月27日 広野ダム
 
広野ダムは福井県南条郡南越前町広野の一級河川九頭竜川水系日野川上流部にある福井県土木部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
九頭竜川最大支流である日野川は流路延長71.5キロ、流域面積1275平方キロに及び古くから福井平野の貴重な水源となる一方、その治水は為政者の至上命題でもありました。
福井県土木部は1970年(昭和45年)に日野川本流への多目的ダム建設を軸とした日野川総合開発事業を採択、建設省(現国交省)の補助を受けた補助多目的ダムとして1976年(昭和51年)に広野ダムが竣工しました。
広野ダムは治水安全度1/70年確率での日野川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、鯖江市・武生市(現越前市)への工業用水の供給を目的として運用が開始されました。
1996年(平成8年)には利水放流を利用した福井県企業局広野発電所(最大出力1400キロワット、2010年に陸電力に移管)が増設されダムの目的は『FI』から『FIP』に変更されました。
しかしその後九頭竜川水系の治水安全度が1/100年確率に引き上げられたことや都市用需要増加もあり広野ダムでは容量不足が生じました。
そこで県土木部は、農水省が日野川右支流桝谷川に計画していた桝谷ダム建設事業に参加、2005年(平成17年)に同ダムが竣工しました。
広野ダムの流域面積は42.3平方キロで有効貯水容量960万立米、一方桝谷ダムの流域面積は10.2平方キロで有効貯水容量2310万立米と集水域と貯水量にギャップがあるため、桝谷ダム建設と同時に広野ダム上流に二ツ屋分水堰が建設され、日野川本流から桝谷ダムへ導水することで2ダム一体運用によるより効果的なダム運用が可能となりました。
現在は広野ダム、桝谷ダム二ツ屋分水堰ともに福井県土木部により統合管理されています。

広野ダム・桝谷ダム二ツ屋分水堰の位置関係
(日野川用水土地改良区HPより)


今庄から日野川沿いに県道231号を9キロほど南東に進むと広野ダムに到着します。
ダム下は立ち入り禁止のためダムを正面から見ることはできません。
右岸下流側にはスペースがなく超広角で何とかフレームに。


ダムサイトの竣工記念碑。


右岸のインクラインと艇庫。


ゲート越しの減勢工
日野川はダム直下で直角に曲がっています。

ダム湖名はそのまま『広野ダム湖』
総貯水容量は1130万立米で、上流約2キロに二ツ屋分水堰があります。


左岸展望台から
こちらの方がダムがよく見えます。
非常用洪水吐としてクレストラジアルゲート2門、常用洪水吐としてコンジット高圧ラジアルゲート1門
さらに小流量用放流設備としてホロージェットバルブ1条を備えています。
コンジットゲートは昭和40年代着工のダムらしく操作建屋が前面に張り出しています。


一番奥の建屋が1996年(平成8年)に増設された広野発電所
当所は福井県企業局の運営でしたがその後北陸電力に移管されました。
その手前の斜めの建屋はホロージェットバルブ。


左岸上流側の倉庫?
今は資材置き場になっているようですが、足元には4本のレール
かつてはガントリーが設置されていたのかも?


上流面
コンジット予備ゲートが見えます。
対岸の四角い建物は管理事務所。


高い位置から
天端は市道で一般車両の通行ができます。
この道は小説や映画の題材となった夜叉ヶ池へのアプローチとなります。


上流から
ここから見るとダムの構造がわかりやすい。


(追記)
広野ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

0945 広野ダム(1864)
福井県南条郡南越前町広野
九頭竜川水系日野川
FNIP
63メートル
162メートル
11300千㎥/9600千㎥
福井県土木部
1976年
◎治水協定が締結されたダム


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