2019年10月22日 雨竜第一ダム(元)
雨竜第一ダム(元)は北海道雨竜郡幌加内町朱鞠内の石狩川水系雨竜川源流部にある北海道電力の発電用重力式コンクリートダムです。
明治末期に苫小牧に進出し千歳川で自社工場向け電源開発を進めていた王子製紙は、本業の製紙業とともに発電事業への展開を目論み水量豊富で急流河川である雨竜川上流域に着目します。
1928年(昭和3年)に子会社『雨竜電力(株)』を設立、1939年(昭和14年)より本格的なダム建設工事が着手されました。
ところが1942年(昭和17年)の電力統制令により雨竜電力は日本発送電により接収され解散、事業は日本発送電が引き継ぎ翌1943年(昭和18年)に鞍部ダムである雨竜土堰堤、同時に建設が進められていた雨竜第二ダムとともに雨竜第一ダムが竣工しました。
ダム完成により出現した朱鞠内湖は湛水面積2373ヘクタールと人造湖としては国内最大、総貯水容量も2億4465万3000立米と日本第12位の規模を誇る日本屈指のダム湖となっています。
朱鞠内湖で取水された水は延長6.7キロの導水路で雨竜発電所に送られ最大出力5万1000キロワットのダム水路式発電を行ったのち、流域変更して天塩川に放流されます。
日本最大級の人造湖を支えるダムとして、また戦前の貴重な土木技術を評価して日本100ダム及びCランクの近代土木遺産に選定されています。
雨竜ダム及び雨竜発電所は戦後の電力分割民営化により北海道電力が事業を引き継ぎ現在に至っており、2013年(平成25年)には河川維持放流を利用して最大1120キロワットの発電を行う朱鞠内発電所が新設されました。
一方2018年(平成30年)には国交省により新たに雨竜川ダム再生事業が採択され、下流域の洪水被害軽減目的のため既存の発電用ダムである雨竜第一、第二ダムの再開発が決まりました。
具体的には第一ダムでは利水容量のうち予備放流容量を洪水調節容量に振り替えることで新たに1870万立米、第二ダムでは同じく予備放流容量からの振り替えと堤体の2.4メートル嵩上により630万立米、計2500万立米の洪水調節容量が確保され、治水機能が付加される予定です。
雨竜第一ダムのダム湖である朱鞠内湖は北海道を代表する観光地となっており、道路案内等も整備され迷うことはありません。
日本のダム100にも選定され日本最大の朱鞠内湖を支えるダムですが、ダムの敷地へは立ち入りできず道路から遠望するのみ。
クレストにはローラーゲート4門、日本最大のダム湖を支えるには意外に小さなダムと言うのが偽らざる印象。
雨竜土堰堤を含めても貯水効率は794%と際立つ効率の良さ。
ダム右岸上流部が朱鞠内湖展望公園となっており上流面を見ることができます。
ゲートをズームアップ。
天端は立ち禁ですが高台から俯瞰できます。
ダム湖畔の雨竜ダム案内板。
ずいぶん昔のもので1995年(平成7年)に廃止された深名線がまだ書きこまれています。
もしかしたら昭和のものかも?
展望公園に建つ慰霊碑。
氷点下40度を切る極寒の地での過酷な労働により多数の労働者が犠牲となりました。
朱鞠内湖
湛水面積日本最大の人造湖で北海道を代表する観光スポットになっています。
朱鞠内湖は鞍部ダムとして雨竜土堰堤がダム便覧に掲載されていますが、それ以外に雨竜第一ダム左岸にもう一基副堤があります。
こちらは堤高が15メートルに届かずダムの要件は満たしていませんが、どうやらコンクリートフェイシングフィルのようです。
副堤下流面。
日本を代表するダムの一つですが、残念ながらダム敷地は立ち入り禁止のため見学スポットは限られています。秋の訪問だったので樹間から下流面を見ることができましたが、盛夏なら難しかったかもしれません。
民間企業所有の発電用ダムですのでぜいたくは言えませんが、せめてもう少し下流側からの展望ポイントを整備していただけたらと思うところです。
(追記)
雨竜第一ダム(元)は洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
0040 雨竜第一ダム(元) (1551)
北海道雨竜郡幌加内町朱鞠内
石狩川水系雨竜川
P
G
45.5メートル
216メートル
244653千㎥/172119千㎥
北海道電力(株)
1943年
◎治水協定が締結されたダム
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3700 雨竜第一ダム(再)
北海道雨竜郡幌加内町朱鞠内
石狩川水系雨竜川
FP
G
45.5メートル
216メートル
244653千㎥/172100千㎥
国土交通省北海道開発局建設部
2033年 竣工予定
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