2021年11月23日 大森川ダム
大森川ダムは高知県吾川郡いの町寺川の一級河川吉野川右支流大森川にある四国電力(株)が管理する発電目的の中空重力式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電気事業再編令で誕生した四国電力は戦後の復興や高度経済成長による電力需要拡大に対処するため各所で電源開発や既設発電施設の増強を進めます。
吉野川水系では戦前より四国中央電力(のちに日本発送電)による『仁淀川分水発電事業』が進められ大橋ダム・長沢ダム・分水発電所が建設されました。
四国電力がこの分水発電事業のより効率化を進めるために1959年(昭和34年)に建設されたのが大森川ダムで、中部電力井川ダムに次ぐ我が国2例目の中空重力式ダムとなっています。
大森川ダムは当ダムを上部調整池、長沢ダムを下部調整池として大森川発電所で最大1万2200キロワットの混合揚水式発電を行いますが、混合揚水式発電を採用した背景には、豊水期に揚水し渇水期に発電放流を増やすことで河川流量の季節変動を平準化させ分水第1~第4発電所での発電を安定させるという目的があります。
大森川ダムの名前を高めるのは貴重な中空式ダムと言うだけではなく、同ダムへの厳しいアプローチにもよります。
一番安定したルートと言われる南奥川林道でさえ、約10キロの隘路とダート走行を余儀なくされます。
今回は国道194号線大森山トンネル手前からその南奥川林道を使って大森川ダムに至りました。
幸い路面状況は予想したほど劣悪ではなく、レンタカーのヴィッツでも大過なくダムに到達することができました。
林道に入り約10キロ、運転に辟易してきたころに突然目の前にダムが姿を見せます。
『かっけーー!』
ここはもう声を出さずにはいられません。
谷間の間の逆三角のダムは美しいの一言、勝手に中空の貴婦人と名付けさせていただきます。
クレストにはラジアルゲート1門、後付けの放流設備から河川維持放流が行われています。
まっすぐに降りる導流壁とジャンプ台式洪水吐がいかにも昭和30年代のダムと言った風。
正対してるので立体感はありませんが、中空ダムらしく襟がなく堤頂から始まるスロープが見て取れます。
放流設備は河川法改正により維持放流が義務付けられたことに対応した後付け。
減勢部はジャンプ台
ジャンプ台の下にはバルブがあるようですが木が邪魔で視認できません。
まずは右岸ダムサイトに上がります。
銘板は四国でよくみられる『○○堰堤』。
天端は立ち入り禁止
訪問時は工事中のためごちゃごちゃ。
貯水池はほぼ満水、中空ダムおなじみのタコ足スリットは確認できません。
対岸左岸に管理事務所があります。
ゲート上流面。
よく見るとゲート上部が凹型になっています。オーバーフローさせるタイプなんでしょう。
左岸にやってきました。
中空ダムらしく堤頂から始まるスロープ。
水利使用標識。
概要板。
左岸上流側に取水設備があるのですが工事の関係で進入できず。
(追記)
大森川ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
2311 大森川ダム(1759)
高知県吾川郡いの町寺川
吉野川水系大森川
P
HG
73.2メートル
191メートル
19120千㎥/17320千㎥
四国電力(株)
1959年
◎治水協定が締結されたダム
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