ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

本庄ダム

2017-04-13 17:01:14 | 広島県
2017年4月8日 本庄ダム
 
本庄ダムは広島県呉市の二河川にある呉市上下水道局が管理する上水道用水及び工業用水供給を目的とする曲線重力式コンクリートダムです。
1917年(大正6年)に帝国海軍呉鎮守府の軍用水道『呉鎮守府水道』の水源として建設され、完成当時は東洋一の規模といわれました。
完成直後より軍用水道のほか余水を平原上水場を経由して呉市上水道に分与しており、戦後は国から呉市に移管され現在に至っています。
1999年(平成11年)に『本庄水源地堰堤水道施設』として稼働中のダムとしては初めて重要文化財に指定されたほか、堰堤と取水塔はAランク、その他関連施設はBランクの近代土木遺産に指定されています。
また堰堤および貯水池は『二河水源地』として近代水道百選に、ダム湖の『本庄貯水池』はダム湖百選に選ばれています。
 
本庄ダム及び貯水池一帯は浄水場水源ということで普段は立ち入りが制限されていますが、毎年桜の開花に合わせて2週間程度一般公開されています。今回はたまたま公開時期に岡山県のダム巡りを計画していたことから急きょ本庄ダムの見学を予定に組み入れました。
本庄貯水池は県道31号沿いに位置し、車で走るとすぐに確認できますが、見学者用の駐車場の入口がわかりづらく何度も往復を余儀なくされました。
 
堤体直下の駐車場を下りてまず向かったのが右岸のカスケード
堰堤右岸側に本庄ダム建設により付け替えられた二河川が流れており、貯水池上流の溢流堤からの水を併せてカスケードの落差工を流下します。
実はこのカスケード河床も石張になっており、二河川落差工としてBランクの近代土木遺産に選定されています。
 
 
丸井戸
二河川から直接取水された水の沈砂施設です。
 
ダムを正面から
右手は第一量水井 取水された水を浄水場に送水する施設です。
 
クレストが前面にせり出しているので堤体はローマ字の『R』を描いたような形状です。
堤体は花崗岩が切り石積みされ、等間隔の控壁がダムを柔和な表情にしています。
 
取水口からの樋門。
 
堤体中央に取水設備があります。
 
縦にはR字を描きつつ、緩やかに曲線を描きます。
 
天端を見れば曲線を描いていることがよくわかります。
 
親柱とアーチを描く高欄の意匠。
 
上流面
水に隠れていますが上流面にも控壁があるようです。
 
今年は桜の開花が遅れたため花はまだ五分咲き
土曜日にもかかわらず堤体の見学者は数えるほど・・・。
 
重要文化財の碑。
 
ダム湖百選の石碑。
 
今まで石積みの堰堤はいくつかみてきましたが重厚感を保ちつつも非常に柔和なイメージを持つ稀有な堰堤です。
R字の断面や緩やかな曲線、控壁、そして本体に洪水吐がないことも他の石積堰堤とは違う印象を持つ大きな要素なのかもしれません。
せっかく訪問したにもかかわらず、今回右岸上流側に洪水吐である溢流堤を見ないまま立ち去ってしまいました。
再訪する機会があるならば次回は一日かけて本庄ダムを堪能したいところです。
広島県呉市押込町
二河川水系二河川
WI
25.4メートル
97メートル
呉市上下水道局
1917年
◎治水協定が締結されたダム


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