2015年11月22日 牧尾ダム(再)
2016年 7月 3日
2024年 5月25日
牧尾ダムは長野県木曽郡木曽町三岳の木曽川水系王滝川にある水資源機構が管理する多目的ロックフィルダムです。
水利に乏しい愛知県の尾張丘陵や知多半島では常習的な渇水に悩まされ安定した水源確保が長年の悲願となっていました。さらに中京工業地帯の発展に伴う都市用水の需要増加を受け、1955年(昭和30年)に愛知用水公団が設立され1957年(昭和32年)より愛知用水事業が着手されます。
そして愛知用水の水源として1961年(昭和36年)に竣工したのが牧尾ダムで、ダムから放流された水は岐阜県の関西電力兼山ダム湖畔で取水されたのち幹線水路112キロ、支線水路1000キロ超の愛知用水によって受益地各所に給水されます。
愛知用水公団は1968年(昭和43年)に水資源開発公団(現水資源機構)に改組され利根川や淀川水系など全国主要河川の総合開発事業に携わる一方、愛知用水の完成は中京地区が三大工業地帯へと発展する礎となりました。
牧尾ダムは水資源機構法による多目的ダムで、愛知用水を通じた中京地区への灌漑・上水道・工業用水の供給のほか、当ダムを上部池、木曽ダムを下部池とした関西電力三尾発電所(最大出力3万7000キロワット)での混合揚水式発電を目的としています。
その後の高度成長等による水需要増大を受け、新たな愛知用水水源として1990年(平成2年)に阿木川ダムが、1996年(平成8年)には味噌川ダムが完成、3ダム合わせて1億6700万立米の有効貯水容量を確保しています。
一方、1984年(昭和59年)の長野県西部地震による土砂流入など計画を上回るペースでの堆砂進行が看過できない状況となり、堆砂除去とダム湖掘削による貯水容量確保を目的とした『牧尾ダム再開発事業』が着手され2006年(平成18年)に竣工しました。
これによりダム便覧での表記は『牧尾ダム(再)』となっています。
愛知用水概要図(出典 水資源機構愛知用水総合管理所HP)
牧尾ダム(再)には2015年(平成27年)11月、2016年(平成28年)7月、2024年(令和6年)5月の3度にわたり訪問しました。
掲載写真にはそれぞれ撮影日時を記載してあります。
木曽町三岳から王滝川沿いの県道256号を西進、六段橋から牧尾ダム(再)と正対できます。
地山を挟んで右岸(向かって左手)のロックフィル堤体と左岸(向かって右手)の洪水吐が離れているのが特徴。
ロックフィル堤体には九十九折れの管理道路が設けられています。
(2024年5月25日)
ダムの目的に洪水調節がないため、洪水吐はクレストラジアルゲート4門のみ。
ゲート右手はダム管理所。
(2024年5月25日)
雪対策として、ピアは被覆。
ここだけ切り取ると重力式コンクリートダムのよう。
(2016年7月3日)
ダムの右岸下流側に穴が二つあります。
ともに施工時の仮排水路を転用したもので、向かって左は非常用放流設備、右手は搬入トンネル。
(2016年7月3日)
県道を進み左岸ダムサイトへ。
こちらは管理所。
(2024年5月25日)
水利使用標識
愛知用水の水源として灌漑、上水、工水を供給。
特に灌漑用水については受益農地は1万5000ヘクタールに及びます。
(2024年5月25日)
左岸ダムサイトは園地になっており慰霊碑や各種記念碑、モニュメントなどが並びます。こちらは1961年(昭和36年)の竣工記念碑。
(2024年5月25日)
こちらは2006年(平成18年)の牧尾ダム再開発事業竣工記念碑。
石碑には『牧尾ダム堆砂対策完成記念』と記されています。
(2024年5月25日)
ダムの見学に戻ります。
ダム構内は車両進入禁止で徒歩での見学となります。
こちらは洪水吐、金属製のグレーチングは予備ゲート嵌め込み口。
(2016年7月3日)
雪対策としてゲート巻き上げ機は被覆されています。
(2024年5月25日)
ロックフィル堤体と洪水吐を隔てている地山のトンネル。
扁額には中山トンネル。
(2024年5月25日)
トンネルの中には巡視艇が格納。
(2024年5月25日)
御岳湖と命名されたダム湖は総貯水容量7500万立米。
(2024年5月25日)
下流面には九十九折れの管理道路が続きます。(立入り禁止)
またリップラップが細かい階段状になっているのが特徴的。
ほぼ同時期に建設された岩手県の岩洞ダムもリップラップが階段状ですが、あちらは犬走を挟んだ3段の階段なのに対しこちらは細かい階段状。
(2024年5月25日)
右岸の県道わきにある入口。
扁額には『非常用ゲート』。
牧尾ダムでは三尾発電所を通じて利水放流が行われますが、改修や万一の故障等の場合は非常用ゲートから地下の水圧鉄管経由で上から4枚目の非常用放流設備による放流を行います。
(2024年5月25日)
非常用ローラーゲートと水圧鉄管のプTレート
ともに今はなき田原製作所製。
(2024年5月25日)
ロックフィル堤体上流面
写真左手の山向こうが洪水吐となります。
(2024年5月25日)
関西電力三尾発電所の取水工
当ダムを上部池、関西電力木曽ダムを下部池とし最大出力3万7000キロワットの混合揚水式発電を行います。
牧尾ダム(再)には発電容量はなく、愛知用水向け利水放流に準じた利水従属発電となります。
(2024年5月25日)
三尾発電所の水利使用標識。
(2024年5月25日)
最後に上流から洪水吐ゲートを遠望。
(2016年7月3日)
(追記)
牧尾ダム(再)は洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに洪水調節容量が確保されることになりました。
1013 牧尾ダム(元)
木曽川水系王滝川
AWIP
R
105メートル
264メートル
75000千㎥/68000千㎥
水資源機構
1961年
--------------------
3321 牧尾ダム(再)(0063)
長野県木曽郡木曽町三岳
木曽川水系王滝川
AWIP
R
105メートル
264メートル
75000千㎥/68000千㎥
水資源機構
2006年再開発竣工
◎治水協定が締結されたダム
そんな中での美しいダム湖の画像
マッチさんが紹介してくれるダム湖は
青くてさらに蒼くて
本当に涼やかできれいです。
実際に訪れたのは5月下旬なので、初夏の装いですね。
温暖化のご時世なので気温はそこそこ高かったのですが、標高が高い分ダムを抜ける風がさわやかでした。
木々の緑と青い空のコントラストも美しく絶好のダム日和を満喫できました。