ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

祝子ダム

2023-01-19 18:46:29 | 宮崎県
2022年11月20日 祝子ダム

祝子(ほうり)ダムは宮崎県延岡市北川町川内名の一級河川五ヶ瀬川水系祝子川にある宮崎県県土整備部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
祝子川上流域は年間降水量2500ミリの多雨地帯となっており、豪雨のたびに下流延岡市街で洪水被害が多発していました。
一方延岡は旭化成の企業城下町として発展し、増加する電力、工水需要への対処が求められていました。
そこで宮崎県は祝子川上流への多目的ダム建設を軸とした祝子川総合開発事業に着手し、1972年(昭和47年)に竣工したのが祝子ダムです。
祝子ダムは建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、祝子川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、延岡市への工業用水の供給、宮崎県企業局祝子発電所(最大出力1万6800キロワット)でのダム水路式発電を目的としています。
またダム建設により廃止された九州電力(株)祝子川発電所の機材を活用してダム湖上流に上祝子発電所(最大出力3300キロワット)が建設されました。
さらに1992年(平成4年)には下流8キロ地点に逆調整池も兼ねた浜砂ダム・発電所(最大出力2400キロワット)が竣工、2012年(平成12年)には河川維持放流を利用した祝子第二発電所(出力35キロワット)が稼働しました。
一方2005年(平成17年)台風14号による計画を超える洪水量を受け、設計洪水量を従来の毎秒686立米から880立米に引き上げるための堰堤改良工事が2017年(平成29年)に竣工、左岸ラジアルゲート1門をゲートレス化するとともクレスト自由越流頂1門が増設されました。

祝子ダムへのアプローチは延岡から県道207号岩戸延岡線経由が一般的ですが、今回は下赤ダムから下赤祝子川林道を利用して祝子ダムに至りました。
下赤ダムからは車で30分ほどの行程です。

ダム下から
放流設備としては非常用クレスト自由越流頂4門、常用コンジット高圧ラジアルゲート1門を装備。
左岸側(向かって右手)の導流壁のコンクリートが白くなっているのが増設された洪水吐です。
改良工事以前の姿はダム便覧に掲載されているのでそちらをご覧ください。


左岸の県道から
管理事務所は斜面に張り付くように建っており、宮崎県ではおなじみ民間人のご夫婦が住み込みで管理業務を受託されています。


一番手前が2017年(平成29年)に後付けされたクレストゲート。
導流壁のコンクリートの色が違うのですぐにそれとわかりますが、知り合いの土木屋さんに言わせれば堤体の目地と後付けの導流壁の目地がずれているのがよろしくないとのこと。
ダミーゲートの上にはこちらも宮崎県営ダムではおなじみ、コルゲートパイプを使ったチューブ状のシェルターが設置されています。 


前面に張り出したコンジットゲート操作室
いかにも昭和30年~40年代のダムの体。


右岸ダム下の祝子第二発電所
2012年(平成24年)に稼働した小水力発電所です。


天端は立ち入り禁止。


門扉越しに天端を撮影
右岸側が屈曲しています。


上流面
2022年(令和4年)9月の台風14号の影響で大量の流木が残っています。
また祝子ダムでは計画を超えるペースで堆砂が進み、すでに計画堆砂容量を超えており今後堆砂の排出が重要な課題になりそう。


ゲートをズームアップ
左から2門目の扶壁にはゲートの跡が残っています。
右手はコンジット予備ゲート。


こちらは取水設備
実際の取水口は土手の下の水中にあります。


ダムの上流には日本300名山大崩山の大岩壁が遠望できます。


ダムの下流にはダム建設に合わせて廃止された九州電力祝子川発電所の遺構が残ります。
廃墟マニアには有名なスポットらしい。

ダム見学の2か月前、2022年(令和4年)9月の台風14号襲来の際にはEL324メートルのサーチャージ水位を超過、異常洪水時防災操作(緊急放流)が実施されました。

(追記)
祝子ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2834 祝子ダム(1947)
宮崎県延岡市北川町川内名
五ヶ瀬川水系祝子川
FNIP
60メートル
196メートル
5774千㎥/4864千㎥
宮崎県県土整備部
1972年
◎治水協定が締結されたダム


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