ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

品木ダム

2016-10-12 06:54:00 | 群馬県
2015年10月10日 品木ダム
2016年10月09日 
 
品木ダムは群馬県吾妻郡中之条町入山の利根川水系湯川にある多目的重力式コンクリートダムです。
湯川は利根川水系吾妻川支流白砂川の三次支流で、支流の大沢川・矢沢川ともども火山成分の影響で強酸性の水質となっており、湯川が流入する吾妻川では酸性水の影響で灌漑用水としての利用が困難となるほか発電事業にも支障をきたしてきました。
群馬県は1957年(昭和32年)より吾妻川水系の酸性水を中和するための『吾妻川総合開発事業』に着手し、1965年(昭和40年)に草津温泉直下の湯川に草津中和工場を、湯川と大沢川・谷沢川の合流地点に品木ダムを建設しました。
草津中和工場で酸性水に大量の石灰を混入して中和し、品木ダムのダム湖である『上州湯の湖』で炭酸カルシウムにより中和化を促進するとともに石灰成分の撹拌・沈殿を行い上澄み水を下流に流すというシステムとなっています。
運用開始後、この事業は建設省に移管されさらに支流の大沢川および谷沢川の中和を行うための香草中和工場が完成し、湯川水系の酸性水中和事業は一段落を迎えることになります。
このように品木ダムは他に例を見ない『酸性水の水質改善』(ダムの目的としては不特定利水)を目的とするほか、上州湯の湖の上澄み水の放流を利用して群馬県企業局湯川発電所で最大8200キロワットのダム水路式発電を行っています。
なお品木ダムは国交省直轄管理ながら、建設省の補助を受けた群馬県の事業で建設されたため補助多目的ダムと言う括りになります。
 
草津温泉から国道292号線を東進し、諏訪の原で『品木ダム』の標識に従って分岐を左手に取れば品木ダムに到着します。
右岸から
ゲート操作室や円筒形の階段などおよそダムらしくない斬新なデザインとなっています。
 
中和事業の説明板。
 
右岸管理事務所と湯川発電所の取水口。(2016年10月9日)
 
ゲートはローラーゲートが2門。
右側のゲートにはフラッシュボードがついています。(2016年10月9日)
 
左側のゲート
導流面中央にコンジットが見えます。(2016年10月9日)
 
天端は車道になっており、草津温泉から花敷温泉への近道になっているせいかそこそこ交通量があります。
(2016年10月9日)
 
堤体下流面。(2016年10月9日)
 
ダム湖(上州湯の湖)
中和された石灰成分の影響で美しいエメラルドグリーンの湖面となっています。(2016年10月9日)
 
ダム湖最奥の山は草津白根山です。
石灰成分の沈殿により堆砂が進むため定期的に浚渫が行われています。
 
左岸上流側から。(2016年10月9日)
 
世界最初の河川中和事業を担う品木ダムです。
水質改善により吾妻川は『死の川』から自然豊かな川に変貌し、利水や洪水調節を目的とする八ツ場ダムの建設も可能になりました。
またここでの成果は秋田県玉川でも生かされています。
 
追記
品木ダムには洪水調節容量の設定がありませんが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに16万6000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
0610 品木ダム(0009)
群馬県吾妻郡中之条町入山
利根川水系湯川
NP
43.5メートル
106メートル
1668㎥/1273㎥
国交省関東地方整備局
1965年
◎治水協定が締結されたダム


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