ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

北川ダム

2023-01-18 17:22:55 | 大分県
2022年11月20日 北川ダム

北川ダムは大分県佐伯市宇目南田原の一級河川五ヶ瀬川水系北川にある大分県土木建築部が管理する多目的アーチ式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電気事業再編令により日本発送電は解体され九州では新たに九州電力(株)が誕生します。
同社は戦後の電力不足を補うために積極的な電源開発を進めますが、同社だけでは開発の手が足りず各県で公営発電による電源開発が併せて進められました。
大分県では1952年(昭和27年)に県電気局(現企業局)が設立され、高度経済成長に加え1959年(昭和34年)の大分臨海工業地帯造成事業着手による電力需要急増に対処するため積極的な電源開発を進めました。
北川は上流部が大分県、中下流部が宮崎県を流下する一級河川ですが電気局はここで発電用水利権を獲得し、土木建築部による北川総合開発事業に参加し1962年(昭和37年)に竣工したのが北川ダムです。
北川ダムは建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、北川の洪水調節のほか県企業局北川発電所、下赤発電所、桑原発電所計最大2万9600キロワットの発電を目的としています。
注目すべきは北川ダムは大分県事業で建設されますが、洪水調節についてはその受益者は宮崎県となる点です。
建設当時、このダムの主目的はあくまでも発電にありその水利権を大分が獲得するバーターとして宮崎県が治水受益者となるダムを大分県の手で建設したのではないか?と推察するところです。

北川ダムは国道326号線沿いにありますが、日中の職員駐在時以外はダムへのゲートが閉められるので注意が必要です。
従来下流側からの展望ポイントはありませんでしたが、2022年(令和4年)春に、下流の山が伐採され高所からダムを俯瞰できるようになりました。
総貯水容量4100万立米は大分県所管ダムでは最大で、貯水池の北川ダム湖はダム湖百選に選ばれています。


放流設備はクレストラジアルゲート5門のほか写真では見えませんが低水放流設備があります。
発電目的の水利権が最大25立米/秒あり、約4キロ下流の北川発電所までの流量の大半は発電用導水路経由となります。


管理道路を進むとまず上流面が見えてきます。
訪問時は満水。


諸元及び施工者のプレート
施工の梅林建設は大分拠点の中堅ゼネコンですが、アーチダムの施工者としてはちょっと意外な感じ。


スペースがないので超広角じゃないと収まりません。
巻き上げ機は高欄下に収められ天端はすっきり、朱系のキャットウォークが鮮やか。


右岸の斜樋
多目的ダムに斜樋は珍しいのですが、河川維持放流義務化に合わせて刷新されたようです。
手前はカバーの付いた巡視艇の格納用浮き桟橋。


減勢工にはエンドシルと言ってよいのか?
細いコンクリートの壁。
右手は低水放流設備。


低水放流設備をズームアップ
結構放流されています。


ラジアルゲート。


左岸の発電用取水口
最大毎秒25立米を取水します。


左岸から
こちらから見るとドーム型アーチだとよくわかります。
対岸には改修中の管理事務所があります。


天端は1.5車線幅ほど
奥の橋は国道326号梅の里大橋。


ダム湖に架かる国道326号『唄げんか大橋』
建設省直轄事業としては初の斜張橋で、橋の向こう側には『道の駅宇目』があり休日にはかなりの集客力があります。


(追記)
北川ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2757 北川ダム(1945)
大分県佐伯市宇目南田原
五ヶ瀬川水系北川
FP
82メートル
188.3メートル
41000千㎥/34700千㎥
大分県土木建築部
1962年
◎治水協定が締結されたダム


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