2022年7月29日 祐延ダム
祐延(すけのべ)ダムは富山県富山市有峰の常願寺川水系小口川にある北陸電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
北アルプスを水源とし水量豊富な急流河川が多い富山県では明治末期よりで活発な電源開発が進めれ、これを受けて沿岸部には電力需要が旺盛な化学や金属精錬産業が集積しました。
昭和初期において5大電力の一つである日本電力とともに富山県の発電事業をリードした日本海電気(株)は1920年代後半より常願寺川左支流小口川での大規模電源開発に着手し、1929年(昭和4年)の小口川第二発電所に続き、1931年(昭和6年)に小口川源流部の標高約1400メートル地点に建設したのが祐延ダムです。
ここで取水された水は約2.7キロの導水路でダムと同時に建設された小口川第三発電所に送られ、最大1万400キロワットのダム水路発電が開始されました。
同発電所の有効落差621.2メートルは国内一般水力発電所最大です。
さらに1936年(昭和11年)には発電所に揚水ポンプが増設され、国内2例目の揚水発電(混合揚水発電)が開始されました。(揚水発電は1978年(昭和53年)に廃止)
祐延ダムをはじめ日本海電気の発電施設は配電統制令により日本発送電に接収されたのち、1951年’(昭和26年)の電気事業再編成により北陸電力(株)が事業継承し現在に至っています。
庄川や黒部川の発電施設が関西電力によって継承される中、旧日本海電気の発電施設の多くは北陸電力が継承し、日本海電気が北陸電力の前身と言われる所以となっています。
有峰林道水須ゲートから同林道小口川線を約16キロ進むと右手に祐延ダムが見えてきます。
堤高45.5メートル、堤頂長125.5メートル
完成から約90年経過した堤体は、豪雪地帯ということもあり遠目にも痛みが目立ちます。
放流ゲートは4門
ぱっと見自由越流式のようですが、実は越流部の奥にスライドゲートが隠れています。
ダム下の穴から河川維持放流が行われています。
ダムサイトから
見るからに痛々しい堤体
しかし老兵死なずの意気が伝わります。
放流口をズームアップ
ゲートを見たいのですが見えません。
ダムサイトの説明版。
天端は立ち禁。
対岸に取水設備と管理事務所があります。
またダムの上下流には巡視用の山道が続きます。
取水設備をズームアップ
もともと小口川第三発電所は融雪期や多雨期に運休してダムに貯留し、渇水期に運転するという形態ですが、訪問時は少雨の影響か?水位が取水ゲート最下部よりもはるか下まで低下していました。
上流面。
(追記)
祐延ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
0819 祐延ダム(1874)
富山県富山市有峰
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