ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

奈川渡ダム

2016-06-06 10:10:00 | 長野県
2016年6月4日 奈川渡ダム
 
奈川度ダムは左岸が長野県松本市安曇、右岸が同市奈川の信濃川水系梓川にある東京電力リニューアブルパワー(株)が管理する発電目的のアーチ式コンクリートダムです。
北アルプスを水源とし水量豊富で急流が続く梓川上流部では戦前から梓川電力や京浜電力による電源開発が進められてきました。
戦後梓川の発電事業を継承した東京電力は、高度成長による電力需要増大に対処するために1961年(昭和36年)より梓川に3基のアーチダムと2基の混合揚水式発電所の建設事業に着手、それぞれ1969年(昭和44年)に竣工し最大86万8000キロワットの発電施設が誕生しました。
このうち最上流部に建設されたのが奈川度ダムで当ダムを上部池、水殿ダムを下部池とした安曇発電所で最大62万3000キロワットの混合揚水式発電を行っています。
またこの電源開発事業に合わせて梓川下流域では農水省による国営中信平土地改良事業が着手され、灌漑施設や耕地整理などが行われました。これらの灌漑用水は既得取水権であり東京電力の各ダムに貯水容量の設定はありませんが、ダムの建設と発電所の稼働により梓川の水位が安定したメリットを大いに享受しています。
梓川のように同一河川に3連のアーチダムが連続するのはわが国には他に例がありません。
さらに奈川度ダムの堤高155メートルは完成当時はアーチダムとしては黒部ダムに次ぐ日本第2位、現在でも第3位の高さを誇り日本ダム協会により『日本100ダム』に選ばれています。
 
国道158号線を西進、水殿ダムを抜けると上高地方面に進むと右手に奈川渡ダムが姿を見せます。
 
トンネル内で県道26号を分けると国道は奈川渡ダムの右岸に飛び出します。
24ミリの広角ではこれが限界です。
 
堤体直下に安曇発電所の建屋が見えます。
扇形の建屋はダム式発電の1・2号建屋です。
 
右岸お山にへばりついているのがダム水路式発電及び混合揚水発電を行う3~6号建屋です。
発電所上部の岩盤補強や山留めの造作がすごい。
 
左岸バス停奥には発電所の改修等で利用されるガントリークレーンが鎮座。
 
左岸から
 
改めて右岸側の岩盤補強や山留めを見てみます。
宇宙戦艦ヤマトに出てくる宇宙要塞のようです。
 
天端は国道158号線が通っており、ハイシーズンにはダムの天端で渋滞も起きます。
左手は閉館中のTEOCO館。
右岸湖岸に3~6号機の取水口があります。
 
ダム直下に発電所があるためダムは非越流式
左岸に洪水吐がありトンネル式導水路で放流されます。
 
右岸に戻りプラント跡の展望台から俯瞰してみます。
堤体中央部に1~2号機の取水口があります。
 
展望台側にもガントリークレーンが置かれています。
こちらは3~6号機の取水ゲート交換用。
 
追記
奈川度ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに洪水調節容量が確保されることになりました。
 
1018 奈川渡ダム(0432)
左岸 長野県松本市安曇
右岸     同市奈川
信濃川水系梓川
155メートル
355.5メートル
123000千㎥/94000千㎥
東京電力リニューアブルパワー(株)
1969年
◎治水協定が締結されたダム


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