ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

セバ谷ダム

2016-06-06 10:20:00 | 長野県
2016年6月4日 セバ谷ダム
 
セバ谷ダムは長野県松本市安曇の信濃川水系犀川右支流セバ川にある東京電力リニューアブルパワー(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
水量豊富で急流河川である梓川上流部では戦前から複数の事業者によって電源開発が進められてきましたが、セバ谷ダムもそんな発電施設の一つで1928年(昭和3年)に湯川発電所の調整池として京浜電力によって建設されました。
日本発送電による接収ののち、1951年(昭和26年)の電気事業再編政令により東京電力が事業継承しました。
湯川や梓川で取水された水がいったん当ダムに貯留されたのち湯川発電所に送られ最大1万7400キロワットの水路式発電を行っています。
セバ谷ダムは犀川水系で最初に建設されたハイダムであり、且つ最上流部にあるハイダムとなっています。
 
ダムへは車道は通じておらず、最寄りの県道から標高差200メートルの徒歩となります。
 
奈川渡ダムから国道158号線を上高地方面に向かい、沢渡~白骨温泉へ向かう県道300号に入ります。
ダムへの巡視路入口付近の落石の心配のない路肩に車を止めます。
 
橋を渡って巡視路に入ります。
 
エゾハルゼミの大合唱の中、照葉樹林を登ってゆきます。
 
巡視路入口から登ること約30分、杉の植林になってくると瀬音が聞こえてきます。
 
ようやく目指すセバ谷ダムに到着です。
手前は余水路、奥に曲線状の堤体が見えます。
 
余水路を見ながらダム湖の上流側を歩いてみます。
 
アーチに見えますが型式は重力式コンクリート。
曲線重力式という珍しいダムです。
 
ダム湖上流から
 
いったん引き返し堤体を見学します。
これは余水吐。
コンクリートが新しく改修の跡が見られます。
 
天端を進みます。
ゆるやかな曲線を描いていますが型式はAやGAではなくGです。
 
ダム湖のインレットです。
左は梓川上流及び白骨温泉から来る導水路、右はセバ川本流です。
白骨温泉からの水のせいか多少硫黄臭が漂います。
 
堤体直下。
もともとセバ谷にある滝をせき止めて作ったダムのようです。
 
 
排砂ゲートと書かれています。
ゲートを開けても落ちるのは先ほどの谷底です。
 
左岸から
 
左岸に取水口がありここから湯川発電所へと水が送られます。
 
巡視路はよく整備され標高差200メートル強の山道も登山をしていれば全く問題のない行程です。
とはいえ、建機や重機がない時代、人力だけで1年強の工期で1000メートルを超える山中にこのようなダムを作り上げた成果には頭が下がるばかりです。
 
聞こえるのは水の瀬音とエゾハルゼミの大合唱ばかり。
いつの間にか蝉の声に慣れ瀬音だけが響きます。
芭蕉の句を借りれば『閑さやダムにしみ入る蝉の声』
立ち去りがたい気持ちは山々でしたが、先の予定もあるので後ろ髪をひかれる思いで山を下りました。
 
追記
セバ谷ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに洪水調節容量が確保されることになりました。
 
0982 セバ谷ダム(0433)
長野県松本市安曇
信濃川水系セバ川
22.7メートル
42.4メートル
58千㎥/52千㎥
東京電力リニューアブルパワー(株)
1928年
◎治水協定が締結されたダム


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