小島教育研究所

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「もうお金がない」「死ねば楽に…」コロナ禍で迫る路上生活の危機 人として最低限の生活とは

2020-12-19 | 武漢発パンデミックからの脱却
※AERA 2020年12月14日号より

 新型コロナの影響による失業から経済的に困窮し、家賃の支払いに苦しむ人たちがいる。住居喪失の危機は命の危機でもある。「住居喪失」を特集したAERA 2020年12月14日号から。

*  *  *

 賃貸住宅で家賃を払えないということは、路上に放り出されるリスクに直結する。

「このままだと家賃も払えなくなります」

 11月下旬、東京都豊島区のハローワーク池袋でパソコンの求人検索画面に向かっていた男性(36)は、言葉少なに語った。

 男性はフリーランスでイベント関係の仕事をしていたが、コロナによってイベントは軒並み中止になった。月30万円近くあった収入は4月以降、ほぼゼロになった。フリーランスなので失業給付ももらえない。

 そこへ重くのしかかるのが家賃だ。都内の一人暮らしの部屋の家賃は月9万円。持続化給付金の100万円をもらい、しばらくはしのいだがそれも底をついた。8月には家賃が払えなくなった人を支援する国の公的制度「住居確保給付金」を得たが、それも10月に切れた。

■死ねば楽になるかも

 これまでハローワークに行くことは躊躇していたが、先が見えなくなり、この日初めて訪れたという。男性は言う。

「とにかく何でもいいから安定した仕事に就きたい。家を失うのが一番怖いです」

 住居確保給付金とは、2015年4月に施行された「生活困窮者自立支援法」に基づく制度で、支給額は市区町村ごとに異なる。東京23区の場合、1人世帯で毎月5万3700円、2人世帯で6万4千円を上限に給付が受けられる。厚生労働省によると4~10月の利用者は全国で計10万件を超え、リーマン・ショック後の2010年度1年間(3万7151件)の約3倍にもなった。

 だが、支給期間は原則3カ月、最長で9カ月。この間に仕事に就くなどして生活を立て直してもらう狙いだが、現実は厳しい。

 神奈川県に住む女性(33)も苦しい胸中を語る。

「もうお金が、ありません」

 契約社員として働いていたが、コロナ禍前の昨年、契約は更新されず打ち切られた。居酒屋などでアルバイトしていたが、5月、コロナ禍の影響でそこも解雇され無職になった。次のアルバイト先を探したが見つからず、無収入の状態が続いた。

 家賃は月8万円。一緒に暮らすパートナーと折半だが、パートナーもフリーランスで収入は不安定なため、支払いは苦しい。

 女性は母親(60代)から毎月仕送りをもらい、何とか家賃を払ってきた。しかし、母親も4月にコロナによる会社の経営悪化で解雇になり、仕送りを続けられる状態ではなくなった。夏には住居確保給付金も受けたが、3カ月で切れた。貯蓄はなく、月末にはクレジットカードの請求もあった。

 死ねば楽になるかも──。

 そう思い、部屋で首を吊ったり剃刀で手首を切ったりしたが、死ねなかった。11月にアルバイトが見つかり何とか持ち直したが、不安は尽きない。

「このままだと金融ローンで借りるしかありません」(女性)

 生活困窮者を支援するNPO法人「ほっとプラス」(さいたま市)の相談員、高野昭博さん(65)は、窮状をこう話す。

「今は、多くの方が路上生活の一歩手前で何とか踏ん張っている状態です」

 コロナ禍で相談は例年の3倍近く増えた。非正規で働く20代、30代の若者が多く、「まさかここまで深刻になるとは思わなかった」と口を揃えるという。

 家を失うとはどういうことか。

 最近までホームレスをしていたという男性(35)が取材に応じてくれた。コロナ禍で職を失い、3カ月近く路上生活をした。

「やるせなく、悲しかったです」

 そう当時の心境を振り返った。

■最低限の生活がしたい

 都内に本社がある観光業界で契約社員として働いていたが、経営が悪化し、4月に契約が更新されず職を失った。会社の寮に住んでいたが、直前に転勤の辞令を受けて寮を出て、さいたま市内のビジネスホテルで暮らしていたので、仕事と同時に住まいも失った。家族とは絶縁状態で、10年以上連絡を取っていない。頼る人もおらず、わずかな貯金と日雇いで稼いだお金でネットカフェなどに寝泊まりしていたが、7月にその貯金が底をつき、ホームレスになった。市内の公園や廃墟になったビルの階段で一日一日を過ごした。食事は1日1食、知り合ったホームレスがくれるコンビニの賞味期限切れの弁当などでしのいだ。風呂は、公園の水道でタオルを濡らして体をふいた。

 寒くなってくるにつれ、命の危険を感じるようになった。10月下旬、先の「ほっとプラス」につながり、同法人が運営する宿泊施設に入ることができた。先日、生活保護の受給が決まり、近くアパートに移り住むことができるという。男性は言った。

「家があって、食べるものがあって、風呂にも入れて、人として最低限の生活をすることが、今の望みです」

 先の高野さんは言う。

「住居は生活の基盤です。それを失うということは、生活自体が成り立たなくなるということ。民間の力には限界があります。国は、住居確保給付金の延長とともに、住居をなくした時の住居の確保はもちろん、生活保護に至らなくてもその手前でアパートに入るためのお金を提供する支援が必要です」

 住まいを失うことは、命の危機に直結する。コロナ禍は、非正規雇用や若者、病を持つ人など、社会的弱者をシビアに襲う。支援や政策、社会全体での助け合い、あらゆる手段を駆使しなければ、住居喪失の危機は避けられない。対策は待ったなしだ。(編集部・野村昌二)

考えさせられる内容に、言葉が出ない。
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