小島教育研究所

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1991年第2回日本数学コンクール 問題と講評より 御挨拶

2009-07-17 | 日本数学コンクール
1991年 名古屋大学理学部数学科四方教授による挨拶文です。


御挨拶


「よくやってくれましたね。有難う。」これがいまの正直な感想です。
実は、コンクールのすぐ後で方々の大学で大学院の入試が行われたのですが、「コンクールの問題の方が難しかったようだね」という評を何人からか聞きました。こんな凄い問題に、クーラーも効いていない教室で、あの暑い一日を取り組んでくださった方々のファイトに本当に感謝しています。幸いにも賞を差し上げられた方々はまだいいのですが、そうでなかった方々にはチョッピリ申し訳ないと思っています。
 でも賞だけがすべてであるはずはありません。多少キザッぽくて、そして、昨年も同じことを申し上げた記憶があって、ここで書くのはイヤなのですが、一番大切なことは、こうした答えもないような問題に対して全力を投じて頑張って頂いたという事実そのものなのです。そして、6時間の苦闘の後で、ヤッタゾという気持ちとか、何かサッパリとしたようなものが心に残った残ったとすれば、ケチクサイ賞とかなにかではなく、それこそが私どもが差し上げられる最高の贈物だという気がしてならないのです。
 これから大人になると分かることなのですが、学問の世界はおろか、人生なんて答えのない問題のかたまりなのです。それも超難問ばかりです。私自身エラそうなことを言えるがらではありませんが、きっと、一番大切なことは、それをうまく解決してモウけることではなくて、全力をつくして頑張るということなのです。
 とすれば、あの日、あの難問に最後まで取り組んでくれた方々、そして、なにかヤッタゾという気持ちをもって帰ってくれた方々には、目には見えないでしょうが、学問の世界へのパスポートを、私どもの最高の贈物を、受け取って頂いたように思うのです。どうか、せっかく手い入れたこのパスポートを失くさないでください。モウかるかどうかは保証しませんが、21世紀は諸君のこのファイトの上にこそ築かれて行くと信じているのですから。
 最後になりますが、この事業を蔭から支えてくださっている皆様に心からお礼申し上げます。また厳しい財政事情は次の方々からのご支援、ご協賛によって辛うじて切り抜けることができました。特にお礼申しあげます。

   「数学と数学教育を考える会」を代表して  四方 義啓

        -ご支援を頂いた方々ー

 名古屋大学創立50周年記念財団      松下電器名古屋研究所
 テレビ愛知               三菱電機株式会社
 中日新聞本社              日立製作所
 名古屋ライオンズクラブ         富士通中央研究所
                     オリピンピア

本年20周年を迎える「日本数学コンクール」の第2回問題と講評より再録しました。

四方教授の思いは、今に続いています。

 当時の生徒諸君がその後どの様な人生を送られたのか、気になる所でした。幸い、第18回日本数学コンクール開催日当日、第2回の大賞受賞者のお一人であるS氏(当時東海高校2年生)が奥様とともに来名され、久々にコンクール会場を見学されました。

当日、その後の人生について、話された一部をご紹介致します。

「現役で東大理Ⅰに合格、数学科に進み確率論をK教授に学びました。卒業後は外資系金融企業に就職し、その企業からアメリカ合衆国のコロンビア大学大学院に派遣留学させていただきました
日頃は確率微分方程式を駆使して、金融商品を開発しています。
 今日こうして久しぶりに、数コンに参加してみまして、ここが自分のホームポジションなのだと、実感を新たにしました。後輩の皆さんにも数学の楽しさを満喫していただけたらと思います。私自身、数コンを通して、他校生と知り合いになることができ、その後の人生で大切な交友関係が築けたことも、お伝えしたいですね。」

貴方も、是非、日本数学コンクールに参加、挑戦しませんか。

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