雲場池の散歩をしていて感じるのは、意外に昆虫の姿が少ないことである。チョウも少なく、数年前に偶然通りすがりに、ミヤマカラスアゲハを見ていたし、雲場池は奥の方では鳩山家の別荘地に接していて、故・鳩山邦夫さんの著書を読んでいると、別荘の庭で多くのチョウを目撃したり採集したりする話が含まれているので、散歩中に出会えるのではと期待していたのであるが。
ここ1年半ほどの早朝の散歩を通じて見かけたのは、僅かにスジグロシロチョウ、イチモンジチョウ、コミスジ、セセリチョウの仲間程度であった。
雲場池の入り口に設置されている案内板にある生態系には、当然かもしれないが、幼虫が水生であるトンボは紹介されているものの、チョウのことは書かれていない。
雲場池入り口に設置されている案内板(2018.6.9 撮影)
案内板の右下部に記されている雲場池の生態系を示す写真(2018.6.9 撮影)
6月になると、この案内板に示されているとおり、トンボの姿を多く見かけるようになった。ほとんどは池の上を飛び回っているので、それとわかるものの、詳しく姿を確認することができず、種名を同定するまでにはいかなかった。
しかし、しばらくして、遊歩道脇のフェンスや下草に止まっているところを見るようになり、ようやく写真撮影も可能になった。
私自身はトンボの種類についてはほとんど知識がなく、現場では確認できず、撮影後の写真をネット情報と比較しなければならなかった。図鑑なども、チョウのものは持っていても、トンボに関するものは何もないのである。
まずは写真から先に見ていただくと、次のようである。シオカラトンボによく似たトンボの雌雄と、これとは異なる黄色と黒の縞文様の種がいた。
雲場池で見たトンボ 1/13(2021.5.30 撮影)
雲場池で見たトンボ 2/13(2021.6.21 撮影)
雲場池で見たトンボ 3/13(2021.6.21 撮影)
雲場池で見たトンボ 4/13(2021.5.28 撮影)
雲場池で見たトンボ 5/13(2021.5.30 撮影)
雲場池で見たトンボ 6/13(2021.6.10 撮影)
雲場池で見たトンボ 7/13(2021.6.10 撮影)
雲場池で見たトンボ 8/13(2021.6.21 撮影)
雲場池で見たトンボ 9/13(2021.6.10 撮影)
雲場池で見たトンボ 10/13(2021.6.10 撮影)
雲場池で見たトンボ 11/13(2021.6.10 撮影)
雲場池で見たトンボ 12/13(2021.6.21 撮影)
雲場池で見たトンボ 13/13(2021.6.21 撮影)
さて、これらのトンボの種の同定である。先ずシオカラトンボではないかと思っていたトンボは、近縁のシオヤトンボということが判った。尾の先が黒くないことと、羽の付け根部が褐色になっている点でシオカラトンボとは異なっている。
残る名前のわからないトンボについてのヒントは、前掲した雲場池の案内板右下にある写真にあった。この写真は数年前に撮影してあったもので、カイツブリを紹介(2021年6月18日 公開)する時にも用いたことがある。その案内板で確認すると、雲場池の生態系として紹介されているトンボの写真の下には「モイワサナ」という聞きなれない名前が見られる。これを参考に調べたところ、どうもこれは「モイワサナエ(トンボ)」のことだと判ってきた。
先日、改めて現地でこの案内板を確認したが、生態系の部分の表記は今も数年前のものと変わっていない。この点については差し出がましいようであるが、軽井沢町の担当課に連絡しておいたので、いずれ修正していただけるものと思う。
案内板の右下部に記されている雲場池の生態系を示す写真(2021.7.5 撮影)
さて、この案内板の写真だけでは詳しく紋様などを確認することができないので、ネット情報で調べていくと、モイワサナエと酷似した種にはほかに「クロサナエ」と「ダビドサナエ」という種がいて、その違いは胸部分の黄色と黒の紋の現れ方にあって、種の識別に使えることもわかった。
撮影した手元の写真を確認した結果、雲場池で撮影した黄色と黒の紋のあるトンボは、モイワサナエとダビドサナエの2種が混じっていることが確認できた。
先ず、案内板にあったモイワサナエ。胸側の2本の黒条のうち前方のものが胸側上縁に達せず,途中で切れている。このことが識別の決め手になるとされるので、次の写真のトンボはモイワサナエと判定した。
ちなみに、この和名の中の「モイワ」というのは、北海道の藻岩山からとったもので、最初にこの藻岩山周辺で発見されたからであるという。
モイワサナエ(2021.6.10 撮影)
次に、胸側の2本の黒条が完全に上縁に達するのは、ダビドサナエとクロサナエでえあり、このうち、頭部後方に黄色い小斑点の現れるものがダビドサナエで、クロサナエにはこの小斑点がないとされている。
こうしたことから今回撮影した次の写真のトンボは、ダビドサナエであると判定した。この種は春にあらわれるサナエトンボの中では、比較的普通に見られるとされていて、和名にある「ダビド」はフランス人の生物学者の名前に由来するものである。
ダビドサナエ(2021.6.10 撮影)
それにしても、これまでチョウにばかり関心が向いていて、トンボのことはほとんど何も知らなかったことを少し反省している。子供のころ住んでいた大阪にも、アカトンボやシオカラトンボは普通にみられたし、少し珍しかったがギンヤンマもいた。また、山地に出かけるとオニヤンマ、ハグロトンボ、チョウトンボなどもいたのだが、それ以外となるとまるで分らない。
調べてみると、日本には約200種のトンボが生息しているという。せめて、軽井沢で出会える種については、見れば判るくらいになっておきたいものと思うようになった。
雲場池でシオヤトンボを最初に撮影した同じ日、自宅庭でもそれまで見たことがないトンボがいることに気が付き、撮影してあった。これは、後日雲場池で撮影することになるダビドサナエであったが、初めはこれをムカシトンボだと誤判定していた。
自宅庭で見たダビドサナエ (2021.5.28 撮影)
軽井沢のトンボについて知るために、手元にある「軽井沢のホントの自然」(石塚 徹著、2012年 ほおずき書籍発行)を見ると、アキアカネ、ハラビロトンボ、ミヤマアカネ、マイコアカネ、オオルリボシヤンマ、オニヤンマ、ダビドサナエ、クロイトトンボ、ハグロトンボ、アオハダトンボ、ミヤマカワトンボ、モートンイトトンボが紹介されている。このうち、絶滅の恐れのある種として、アオハダトンボ、ミヤマカワトンボ、モートンイトトンボの名前が挙げられている。
いずれ出会うかもしれないこうした種についても、見ればわかるようになっておきたいものと思っている。
(2021.8.7 追記)
雲場池の案内板が次のように「モイワサナエ」と修正されていることに今朝気がついた。軽井沢町の担当課・関係者にはお礼申し上げます。
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