先日の朝、妻が小鳥たちのエサ台に給餌に行った時、ブッドレアの花にイチモンジチョウが吸蜜に来ているのを見つけて知らせてくれたので、急ぎカメラを持ち出し撮影した。
このところ毎日ガラスショップに出かけていることと、今年はどうも庭にくる蝶の姿を見ることが少なくて、ほとんど機会がなかったのだが、久々の庭での撮影になった。
「庭にきた蝶」としての紹介は、昨年までにやって来た22種で一旦終わりにしていたが、これを機に随時追加として紹介させていただこうと思う。先日もクジャクチョウと思しき姿を見かけたが、これはすぐに飛び去り、撮影までには至らなかった。
さて、イチモンジチョウ、一文字蝶の意で、黒地の翅に縦一文字の白帯が走ることからこの名前がある。前翅長24~36mmの中型で、翅表は黒褐色、裏面は茶褐色。北海道、本州、四国、九州と広く生息し、長野県では、標高1,700m程度以下の山地に普通にみられる種である。
以前「庭にきた蝶(4)」で紹介した、日本特産の独立種である、アサマイチモンジ(2017.2.10 公開)と酷似しているため、ちょっと見ただけでは判別できないが、写真を撮るなどして微妙な違いを確認することで同定できる。2種の相違点については、アサマイチモンジの項で紹介しているし、下でも一部触れているので、ここでは詳しいことは割愛するが、一点追加すると、複眼に毛が生えているのがイチモンジチョウで、毛の生えていないのがアサマイチモンジであるとされる(ウィキペディア)。
複眼に毛が生える点が両者の相違点と言われても、そう簡単に見るわけにもいかないのだが、今回撮影した写真を拡大すると、イチモンジチョウの目の周りには、確かに毛が見える。
イチモンジチョウの複眼周辺のアップ(2018.8.17 撮影)
イチモンジチョウの幼虫はスイカズラなどの葉を食べるが、幼虫はその葉先から中脈を残して両側を食べ、特徴のある食痕を残すという。また、幼虫は3齢に達すると葉を筒状に巻きその中で越冬する。
ところで、イチモンジチョウとアサマイチモンジの食草は共にスイカズラ科であるが、アサマイチモンジはスイカズラ、タニウツギなど(ニシキウツギを挙げている本もある)とされているのに対し、イチモンジチョウの方は、スイカズラ、キンギンボク、タニウツギ、ニシキウツギ、ヤブウツギなどとされていてより多くの種が挙げられている(「フィールドガイド日本のチョウ」誠文堂新光社発行)。
イチモンジチョウとアサマイチモンジの幼虫の食草
このことに関して、西口親雄氏の著書「森と樹と蝶と」(2001年 (株)八坂書房発行)の「スイカズラをめぐって-イチモンジチョウの遍歴-」の項に興味深い記述があるので、次に紹介させていただく。
「私には、スイカズラを憎めない理由が、ひとつある。それは、スイカズラの葉がイチモンジチョウとアサマイチモンジという、かわいい蝶の、幼虫の餌になっているからである。
この両者は、羽の図柄がよく似ている。識別点はただ一ヶ所。黒地に白斑列がたて帯状に並ぶが、前翅の上から四番目の白斑が、イチモンジチョウではごく小さくて消えかかっているが、アサマイチモンジでは、比較的大きく、はっきりしていることである。
両種とも、日本の里山のどこにでも見られる、ごくふつうの蝶であるが、そんな蝶に私が興味を引かれたのは、イチモンジチョウが日本からヨーロッパまで広く分布しているのに、アサマイチモンジは、日本にしかいない、日本特産の蝶だからである・・・。
・・・アサマイチモンジは、なぜ日本にしか生息していないのか。・・・」
著者はこの理由を、両種の食草の違いに着目して、次のように推理している。
「アサマイチモンジの先祖は、おおむかし、スイカズラ大国・中国西部を生息中心地として、日本の温帯域にまで分布を広げ、ゆうゆうと生活していた。ところが、進化したイチモンジチョウ群(ミスジ型)の出現で、ふるさとを追われ、一部は、四川省やチベットの寒冷な山岳地帯に逃げこみ、一部は、日本という、隔離列島で生き残ることができた。・・・
時代はややおくれて、今度はイチモンジチョウ(アサマイチモンジよりやや進化型)にも、似たような状況がおきる。しかし、イチモンジチョウの場合は、一部はヨーロッパへ、一部は東アジア北部と日本へ逃げて、生きのびている。アサマイチモンジより、生活力があったからだ、と思う。
日本列島へ逃げてきたイチモンジチョウは、アサマイチモンジと混生することになる。アサマイチモンジは、食餌植物をスイカズラ属に限定しているが、イチモンジチョウは、食餌植物をスイカズラ属からタニウツギ属にまで広げている。じつは、日本はタニウツギ属の天国で、各地にさまざまな種が分布している。そのおかげで、日本は、イチモンジチョウにとっては住みよい国となった。・・・」
日本での両種の生息域分布を見ておくと、イチモンジチョウは上記の通り日本のほぼ全域であるのに対し、アサマイチモンジは本州に限定されている。
では、庭にやってきたイチモンジチョウの写真を見ていただこう。
庭のブッドレアの花で吸蜜するイチモンジチョウ(2018.8.17 撮影)
庭のブッドレアの花で吸蜜するイチモンジチョウ(2018.8.17 撮影)
庭のブッドレアの花で吸蜜するイチモンジチョウ(2018.8.17 撮影)
庭のブッドレアの葉上で休息するイチモンジチョウ(2018.8.17 撮影)
庭のブッドレアの花で吸蜜するイチモンジチョウ(2018.8.17 撮影)
8庭のブッドレアの花で吸蜜するイチモンジチョウ(2018.8.17 撮影)
庭のモミノキの葉上で休息するイチモンジチョウ(2018.8.17 撮影)
庭のブッドレアの花で吸蜜するイチモンジチョウ(2018.8.17 撮影)
庭のブッドレアの花で吸蜜するイチモンジチョウ(2018.8.17 撮影)
庭のブッドレアの葉上で休息するイチモンジチョウ(2018.8.17 撮影)
庭のブッドレアの葉上で口吻を伸ばすイチモンジチョウ(2018.8.17 撮影)
庭のブッドレアの花で吸蜜するイチモンジチョウ(2018.8.17 撮影)
庭のブッドレアの葉上で休息するイチモンジチョウ(2018.8.17 撮影)
庭のブッドレアの葉上で休息するイチモンジチョウ(2018.8.17 撮影)
庭のサクラの葉上で休息するイチモンジチョウ(2018.8.17 撮影)
庭のブッドレアの花で吸蜜するイチモンジチョウ(2018.8.17 撮影)
庭のブッドレアの葉上で休息するイチモンジチョウ(2018.8.17 撮影)
庭のブッドレアの花で吸蜜するイチモンジチョウ(2018.8.17 撮影)
庭のブッドレアの花で吸蜜するイチモンジチョウ(2018.8.17 撮影)
庭の一角に、2年前に山から移植したスイカズラは活着して元気につるを伸ばしている。そのうち、庭で特徴あるイチモンジチョウの幼虫の食痕が見られるようになるかもしれないと楽しみにしている。
このところ毎日ガラスショップに出かけていることと、今年はどうも庭にくる蝶の姿を見ることが少なくて、ほとんど機会がなかったのだが、久々の庭での撮影になった。
「庭にきた蝶」としての紹介は、昨年までにやって来た22種で一旦終わりにしていたが、これを機に随時追加として紹介させていただこうと思う。先日もクジャクチョウと思しき姿を見かけたが、これはすぐに飛び去り、撮影までには至らなかった。
さて、イチモンジチョウ、一文字蝶の意で、黒地の翅に縦一文字の白帯が走ることからこの名前がある。前翅長24~36mmの中型で、翅表は黒褐色、裏面は茶褐色。北海道、本州、四国、九州と広く生息し、長野県では、標高1,700m程度以下の山地に普通にみられる種である。
以前「庭にきた蝶(4)」で紹介した、日本特産の独立種である、アサマイチモンジ(2017.2.10 公開)と酷似しているため、ちょっと見ただけでは判別できないが、写真を撮るなどして微妙な違いを確認することで同定できる。2種の相違点については、アサマイチモンジの項で紹介しているし、下でも一部触れているので、ここでは詳しいことは割愛するが、一点追加すると、複眼に毛が生えているのがイチモンジチョウで、毛の生えていないのがアサマイチモンジであるとされる(ウィキペディア)。
複眼に毛が生える点が両者の相違点と言われても、そう簡単に見るわけにもいかないのだが、今回撮影した写真を拡大すると、イチモンジチョウの目の周りには、確かに毛が見える。
イチモンジチョウの複眼周辺のアップ(2018.8.17 撮影)
イチモンジチョウの幼虫はスイカズラなどの葉を食べるが、幼虫はその葉先から中脈を残して両側を食べ、特徴のある食痕を残すという。また、幼虫は3齢に達すると葉を筒状に巻きその中で越冬する。
ところで、イチモンジチョウとアサマイチモンジの食草は共にスイカズラ科であるが、アサマイチモンジはスイカズラ、タニウツギなど(ニシキウツギを挙げている本もある)とされているのに対し、イチモンジチョウの方は、スイカズラ、キンギンボク、タニウツギ、ニシキウツギ、ヤブウツギなどとされていてより多くの種が挙げられている(「フィールドガイド日本のチョウ」誠文堂新光社発行)。
イチモンジチョウとアサマイチモンジの幼虫の食草
このことに関して、西口親雄氏の著書「森と樹と蝶と」(2001年 (株)八坂書房発行)の「スイカズラをめぐって-イチモンジチョウの遍歴-」の項に興味深い記述があるので、次に紹介させていただく。
「私には、スイカズラを憎めない理由が、ひとつある。それは、スイカズラの葉がイチモンジチョウとアサマイチモンジという、かわいい蝶の、幼虫の餌になっているからである。
この両者は、羽の図柄がよく似ている。識別点はただ一ヶ所。黒地に白斑列がたて帯状に並ぶが、前翅の上から四番目の白斑が、イチモンジチョウではごく小さくて消えかかっているが、アサマイチモンジでは、比較的大きく、はっきりしていることである。
両種とも、日本の里山のどこにでも見られる、ごくふつうの蝶であるが、そんな蝶に私が興味を引かれたのは、イチモンジチョウが日本からヨーロッパまで広く分布しているのに、アサマイチモンジは、日本にしかいない、日本特産の蝶だからである・・・。
・・・アサマイチモンジは、なぜ日本にしか生息していないのか。・・・」
著者はこの理由を、両種の食草の違いに着目して、次のように推理している。
「アサマイチモンジの先祖は、おおむかし、スイカズラ大国・中国西部を生息中心地として、日本の温帯域にまで分布を広げ、ゆうゆうと生活していた。ところが、進化したイチモンジチョウ群(ミスジ型)の出現で、ふるさとを追われ、一部は、四川省やチベットの寒冷な山岳地帯に逃げこみ、一部は、日本という、隔離列島で生き残ることができた。・・・
時代はややおくれて、今度はイチモンジチョウ(アサマイチモンジよりやや進化型)にも、似たような状況がおきる。しかし、イチモンジチョウの場合は、一部はヨーロッパへ、一部は東アジア北部と日本へ逃げて、生きのびている。アサマイチモンジより、生活力があったからだ、と思う。
日本列島へ逃げてきたイチモンジチョウは、アサマイチモンジと混生することになる。アサマイチモンジは、食餌植物をスイカズラ属に限定しているが、イチモンジチョウは、食餌植物をスイカズラ属からタニウツギ属にまで広げている。じつは、日本はタニウツギ属の天国で、各地にさまざまな種が分布している。そのおかげで、日本は、イチモンジチョウにとっては住みよい国となった。・・・」
日本での両種の生息域分布を見ておくと、イチモンジチョウは上記の通り日本のほぼ全域であるのに対し、アサマイチモンジは本州に限定されている。
では、庭にやってきたイチモンジチョウの写真を見ていただこう。
庭のブッドレアの花で吸蜜するイチモンジチョウ(2018.8.17 撮影)
庭のブッドレアの花で吸蜜するイチモンジチョウ(2018.8.17 撮影)
庭のブッドレアの花で吸蜜するイチモンジチョウ(2018.8.17 撮影)
庭のブッドレアの葉上で休息するイチモンジチョウ(2018.8.17 撮影)
庭のブッドレアの花で吸蜜するイチモンジチョウ(2018.8.17 撮影)
8庭のブッドレアの花で吸蜜するイチモンジチョウ(2018.8.17 撮影)
庭のモミノキの葉上で休息するイチモンジチョウ(2018.8.17 撮影)
庭のブッドレアの花で吸蜜するイチモンジチョウ(2018.8.17 撮影)
庭のブッドレアの花で吸蜜するイチモンジチョウ(2018.8.17 撮影)
庭のブッドレアの葉上で休息するイチモンジチョウ(2018.8.17 撮影)
庭のブッドレアの葉上で口吻を伸ばすイチモンジチョウ(2018.8.17 撮影)
庭のブッドレアの花で吸蜜するイチモンジチョウ(2018.8.17 撮影)
庭のブッドレアの葉上で休息するイチモンジチョウ(2018.8.17 撮影)
庭のブッドレアの葉上で休息するイチモンジチョウ(2018.8.17 撮影)
庭のサクラの葉上で休息するイチモンジチョウ(2018.8.17 撮影)
庭のブッドレアの花で吸蜜するイチモンジチョウ(2018.8.17 撮影)
庭のブッドレアの葉上で休息するイチモンジチョウ(2018.8.17 撮影)
庭のブッドレアの花で吸蜜するイチモンジチョウ(2018.8.17 撮影)
庭のブッドレアの花で吸蜜するイチモンジチョウ(2018.8.17 撮影)
庭の一角に、2年前に山から移植したスイカズラは活着して元気につるを伸ばしている。そのうち、庭で特徴あるイチモンジチョウの幼虫の食痕が見られるようになるかもしれないと楽しみにしている。
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