新しく買った本
①『かぞえてみよう』 安野光雅 講談社 1975
絵で語られるユニークな数の絵本です。最初のページは広い雪原に一本の川が流れているだけの何もない風景です。絵の枠外の右中央に「0」という字が大きく描かれています。
ページをめくるごとに、家や木や草花、動物や鳥、子どもや大人、乗り物などが一つずつ増えていきます。右端の「0」も「1」、「2」と続き、左端のサイコロにも一個ずつ色のついたサイコロが増えていきます。時計の針もしっかり1時間ずつ時を刻んでいきます。何もかもがその数にぴったりの数で描かれ、画面は豊かに物語を紡いでいきます。1月から12月までの季節の移ろいが描かれていることにも気づきます。
一切文字がないのに、絵が語る情報の多さに感動できる、すてきな数の絵本です。
②『ジョナスのかさ』 ジョシュ・クルート文 アイリーン・ライアン・イーウェン絵
千葉茂樹訳 光村教育図書 2020.11
イギリスは雨の多い国です。ロンドンの人々と傘の興味深い物語です。
ジョナス・ハンウェイが生きていた1750年頃、ロンドンでは紳士が傘を持ち歩いたり、雨の日に傘をさしたりすることは考えられないことでした。ジョナスは雨に悩まされ、雨の降らない国を探しに、とうとう旅に出るのですが、ペルシャで人々が傘をさしているのを見て、傘さえあでばロンドンでも生きていけると思います。帰国後、即、実行に移しますが、なかなか理解してもらえません。雨の日に人々が傘を手にするようになるまで、なんと30年もかかります。
最後に載っているジョナスの生き方や傘の歴史についての解説も、興味深いです。
スリランカのシ ビルさんの絵本『かさどろぼう』を、ちょっと思い出します。傘を知らない村で傘屋さんを開いたキリ・ママおじさんの話です。
③『ヴォドニークの水の館』 チェコのむかしばなし まきあつこ/降矢なな BL出版2021.4
ヴォドニークは人間を水の中に引きずり込んだり、おぼれさせたりする水の魔物です。恐ろしいヴォドニークと闘った勇敢な娘の物語。 娘は貧しさから川に身を投げようとして、ヴォドニークにつかまってしまい、水の館で働くことになります。大広間にある壺の中を見てはいけないと言われますが、掃除をしているとき、ある壺のふたが動き、前に川でおぼれて亡くなった弟の声が聞こえます。壺にはヴォドニークが川でおぼれさせた人たちの魂が閉じ込められていたのです。娘は何とかしてここから逃げ出そうと考え、その時には閉じ込められた魂も自由にしてあげようと思います。
絵はスロヴァキア在住の降矢ななさんです。娘の強い決意が込められた表情がとてもすてきです。
④『かえるのごほうび』 木島始 作 梶山敏夫 レイアウト 福音館書店 2021.3
800年から900年くらい前に作られた絵巻「鳥獣戯画」の絵本化です。1967年1月号の「こどものとも」で出たもので、今年、大判で出版になりました。
ウサギやカエル、サルなど、登場する動物たちが伸びやかで動きのある線で描かれ、躍動感のある絵です。詞書がありませんので、どんな物語が語られているかは本当のところ分からないのですが、木島始さんが、54年前に「今の子どもたちにも楽しんでもらえるように一枚一枚めくってみてゆく物語の組み立てを考えて」作った絵本です。愉快な物語になっていますのでどうぞ楽しんでください。
絵の中にある「高山寺」の印はこの絵巻を所蔵している京都のお寺の名前です。
⑤『さくらの谷』 富安陽子/松成真理子 偕成社 2020.2
3月のまだ風の冷たい日、山道を歩いていた主人公が満開の桜に埋め尽くされた谷で出会った不思議な物語です。
歌が聞こえてきます。近づいていくとそれは人ではなく、お花見をしている鬼たちです。お花見の宴にまぜてもらったり、かくれんぼをしたりするのですが、鬼になった主人公が10数えて目をあけると、鬼たちの姿はどこにもなく、木々の間に見え隠れするのは、もうこの世にはいないはずの祖母や両親の懐かしい顔のようです。主人公の顔には笑顔が浮かびます。さくらの谷は、死者と出会える不思議な場所だったのです。
大切な人を失った人に、やさしく寄り添ってくれる物語です。
①『かぞえてみよう』 安野光雅 講談社 1975
絵で語られるユニークな数の絵本です。最初のページは広い雪原に一本の川が流れているだけの何もない風景です。絵の枠外の右中央に「0」という字が大きく描かれています。
ページをめくるごとに、家や木や草花、動物や鳥、子どもや大人、乗り物などが一つずつ増えていきます。右端の「0」も「1」、「2」と続き、左端のサイコロにも一個ずつ色のついたサイコロが増えていきます。時計の針もしっかり1時間ずつ時を刻んでいきます。何もかもがその数にぴったりの数で描かれ、画面は豊かに物語を紡いでいきます。1月から12月までの季節の移ろいが描かれていることにも気づきます。
一切文字がないのに、絵が語る情報の多さに感動できる、すてきな数の絵本です。
②『ジョナスのかさ』 ジョシュ・クルート文 アイリーン・ライアン・イーウェン絵
千葉茂樹訳 光村教育図書 2020.11
イギリスは雨の多い国です。ロンドンの人々と傘の興味深い物語です。
ジョナス・ハンウェイが生きていた1750年頃、ロンドンでは紳士が傘を持ち歩いたり、雨の日に傘をさしたりすることは考えられないことでした。ジョナスは雨に悩まされ、雨の降らない国を探しに、とうとう旅に出るのですが、ペルシャで人々が傘をさしているのを見て、傘さえあでばロンドンでも生きていけると思います。帰国後、即、実行に移しますが、なかなか理解してもらえません。雨の日に人々が傘を手にするようになるまで、なんと30年もかかります。
最後に載っているジョナスの生き方や傘の歴史についての解説も、興味深いです。
スリランカのシ ビルさんの絵本『かさどろぼう』を、ちょっと思い出します。傘を知らない村で傘屋さんを開いたキリ・ママおじさんの話です。
③『ヴォドニークの水の館』 チェコのむかしばなし まきあつこ/降矢なな BL出版2021.4
ヴォドニークは人間を水の中に引きずり込んだり、おぼれさせたりする水の魔物です。恐ろしいヴォドニークと闘った勇敢な娘の物語。 娘は貧しさから川に身を投げようとして、ヴォドニークにつかまってしまい、水の館で働くことになります。大広間にある壺の中を見てはいけないと言われますが、掃除をしているとき、ある壺のふたが動き、前に川でおぼれて亡くなった弟の声が聞こえます。壺にはヴォドニークが川でおぼれさせた人たちの魂が閉じ込められていたのです。娘は何とかしてここから逃げ出そうと考え、その時には閉じ込められた魂も自由にしてあげようと思います。
絵はスロヴァキア在住の降矢ななさんです。娘の強い決意が込められた表情がとてもすてきです。
④『かえるのごほうび』 木島始 作 梶山敏夫 レイアウト 福音館書店 2021.3
800年から900年くらい前に作られた絵巻「鳥獣戯画」の絵本化です。1967年1月号の「こどものとも」で出たもので、今年、大判で出版になりました。
ウサギやカエル、サルなど、登場する動物たちが伸びやかで動きのある線で描かれ、躍動感のある絵です。詞書がありませんので、どんな物語が語られているかは本当のところ分からないのですが、木島始さんが、54年前に「今の子どもたちにも楽しんでもらえるように一枚一枚めくってみてゆく物語の組み立てを考えて」作った絵本です。愉快な物語になっていますのでどうぞ楽しんでください。
絵の中にある「高山寺」の印はこの絵巻を所蔵している京都のお寺の名前です。
⑤『さくらの谷』 富安陽子/松成真理子 偕成社 2020.2
3月のまだ風の冷たい日、山道を歩いていた主人公が満開の桜に埋め尽くされた谷で出会った不思議な物語です。
歌が聞こえてきます。近づいていくとそれは人ではなく、お花見をしている鬼たちです。お花見の宴にまぜてもらったり、かくれんぼをしたりするのですが、鬼になった主人公が10数えて目をあけると、鬼たちの姿はどこにもなく、木々の間に見え隠れするのは、もうこの世にはいないはずの祖母や両親の懐かしい顔のようです。主人公の顔には笑顔が浮かびます。さくらの谷は、死者と出会える不思議な場所だったのです。
大切な人を失った人に、やさしく寄り添ってくれる物語です。