『甘噛み^^ 天才バカ板!』 byミッドナイト・蘭

ジュリアナから墓場まで・・・。森羅万象を語るブログです。
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[ドイツ映画『4分間のピアニスト』を観に行った^^]

2007-11-10 21:36:48 | 物語の感想
▼下のエントリーで予告していた通り、朝一で観て来ました。

   [明日は、ドイツ映画『4分間のピアニスト』を観に行く^^] 2007/11/09 19:42

いやぁ、面白かった^^

私は、どうも、ピアノの澄んだ音が響く映画が好きである。

『ベティ・ブルー』も、それが心にいつまでも残っている名作である。

そのサウンドトラック(ガブリエル・ヤーレ)は、私のフェイバリットの一つである。

数年前に、前エントリーで書いた『ネバー・エンディング・ストーリー』の主題歌が、坂本龍一の娘のピアノの調べでヒットした時も、「うはっ! ピアノっていいな」と思ったものだ。

音大出の姉が、子供の頃より、ずっと家でピアノを弾いていたので、落ち着くのだろうか・・・。

ニュージーランドに一年いた時も、とあるマクドナルドが、ピアノの有線放送をいつも流していたので、そこをよく利用していた・・・。

▼物語は、かつての恋人との思い出を心に秘めて、女子刑務所のピアノ教師を細々と勤める女教師クリューガーが、天才的なピアノの才能を持つ少女と出会うことから始まる。

少女は、刑務所の問題児で、すぐにキレて暴力を振るう。

じゃじゃ馬のようなジェニーを、当初、厳格なクリューガーは「処置なし」と判断し、レッスン室から去る。

しかし、立ち去るクリューガーの後ろに、ジェニーの弾く激しいサウンドが響く。

ハッとするクリューガー・・・。

刑務官への暴力で拘束されたジェニーの傍らに、クリューガーが座る。

これまで、音楽のみに身を捧げ、清貧な生活を続けていたクリューガー・・・。

その表情は、いつも、毅然としている・・・。

だが、ジェニーとの関わり合いの中で、その表情は、喜怒哀楽に解きほぐれていく。
この時は、困っていた。

「あなたには・・・、どうも・・・、傑出した才能があるみたいだわ・・・」

▼かくして、クリューガーとジェニーの師弟関係が始まる。

そもそも、ジェニーには才能があり、かつて、その養父によって英才教育を施されていた。

その養父に逆らったジェニーは、性的虐待を受けた。

そして、生活は荒み、ある男に騙され、殺人者の汚名を着せられた。

体には、その男の子供を宿していたが、堕胎させられた。

ジェニーの精神状態は、長期間に渡って、ズタボロであった・・・。

クリューガーの行なうことは、その精神状態を美しき音楽のみに向けさせることであった。

▼大きなコンテストを目標に、二人はレッスンを進める。

幾つもの人間関係の軋轢があった。

そこで、何度も、ジェニーは癇癪を起こし、師弟関係を振り出しに戻す。

しかし、クリューガーは、瞳を閉じて、眉間にややしわを寄せて、耐える。

その様が、美しく、そして、とても辛いのだ・・・。

ジェニーは、やることなすこと、その外見も野生児そのものだが、瞳だけはギラギラと輝いている。

▼ボロボロの女が、その才能にのみ輝きを見せる。

私は、フランス映画『二キータ』を思い出した。

また、フランスとドイツでは、その情緒に正反対のものを感じていたのだが、この映画を見て、かなり似ているものだと思った。

ここは、ヨーロッパ映画と括るべきなのかな。

▼クリューガーの、戦時中に死別した恋人とは、女性であった。

生真面目な若きクリューガーは、その金髪の恋人と恋におちた。

野原で、いつまでも身を寄せ合い、見つめあった・・・。

だが、恋人は、共産党員であった。

ナチスの秘密警察に、それを知られ、処刑される。

クリューガーは、恋人の秘密を知らなかったので、秘密警察に「知らない」と答えるのだが、それさえも恋人への裏切りだった・・・。

その後、クリューガーは、結婚することもなく、ただ、音楽のみに身を捧げた。

しかし、ジェニーの奏でる音楽は、時に、クリューガーの心に、恋人との語らいの時を思い起こさせるのだった。

▼クリューガーは、かつて、フルトヴェングラーに師事していたと物語の中で語られる。

フルトヴェングラーは、戦時中、ドイツにいて、必死に、音楽的な活動を通し、ナチスに戦いを挑んでいた指揮者である。

ここがカラヤンじゃないトコが、物語のミソでもある。

▼・・・そして、コンテストの決勝戦・・・。

ここで、ジェニーは想像を絶するピアノ演奏を見せる。

私は、ここのシークエンスの読み解きが、いまだに出来ないでいる。

ここで、ジェニーは、クリューガーが、ずっと言いつづけ躾けた正統派を逸脱し、民俗音楽とも、パンクロックとも言える演奏を見せる。

そして、ここから、クリューガーとジェニーの間には、一切の会話がなく物語が終わる。

私は、どう解釈をすればいいのか分からない・・・。

ジェニーは、ジェニー自身の音楽を貫き通し、クリューガーの教えを超越し、自分の才能の力でもってしてクリューガーを説き伏せた。

クリューガーは、ジェニーに、かつての恋人との「均整の取れた美しい音楽」とは異なる、「荒々しくも美しい音楽」を見て、その目指すものに圧倒された。

・・・そう解釈すればいいのだろうか?

    素晴らしい恋の物語であった。

    愛とは、お互いの感情を、極限までぶつけあうものなのである。

                             (2007/11/10)