☆この作品だが、黒澤作品のリメイク故に、多くの厳しい批評家の目にさらされている。
だが、私は素直に楽しめた。
昨年の黒澤リメイクの『椿三十郎』のほうが、オリジナルまんまで、けれど、クライマックスの「血しぶき」がなかったので、非常に物足りなかった。
新『隠し砦の三悪人』では、オリジナルからの大幅なアレンジが為されていて、私は、別物作品として見た。
物語上、酷評するに足る破綻もなく、楽しんで観た。
大きな「破綻」と言えるとしたら、派手なアクションシーンに隠されて、大テーマであろう「君主と民の関係」というテーマ性が薄れてしまっていることぐらいだろうか?
物語の節々で、雪姫のセリフとして、それは語られているのだが、こちらの心に深く刺さってくるとは言い難い。
樋口監督は、自分のアクション指向の、その「更に向こうの情感」を描きたそうな気持ちが、前作『日本沈没』、前々作『ローレライ』と垣間見えるのだが、それが成功しているとは言い難い。
ただ、そのテーマ性がセリフででも語られていないと、物語は劣化の一途を辿ることになるので、限りある上映時間の中で、ちゃんと登場人物に語らせていることで及第点は与えられるだろう。
◇ ◇
雪姫役の長澤まさみだが、とても良かったと思う。
この子、ちゃんとアクション映画用の声が出る女優だなあと感心した。
柴崎コウなんて、アクション物で叫ぶ声が、なんか苦しそうで、聞いているこちらも辛くなる。
ただ、序盤、戦国時代の設定だったので、いつものアイドル用のメイクではなく、私は、ずーっと長澤まさみに見えなかった。
いつもの長澤まさみとして「見よう、見よう」と思うのだが、他人にしか見えなかった。
メイクの力は大きいのだなあ、と感心した。
ただ、この映画上のメイクが悪いわけではなく、可愛いイメージの長澤まさみが、ずーっと「いい女」顔に見えて、それはそれで良かった。
◇ ◇
上記の長澤まさみと同じアイドルである松本潤が主演であるが、この松本潤も良かった。
テレビのイメージだと、ナヨッとした中性的な魅力を醸しているのだろうが、この作品では、それと全く違った印象を残してくれている。
ちょっと多すぎる無精ひげと、よたった歩き方、鼻をしゃくる仕草・・・。
おそらく、ファンには不評なんだろうな^^;
でも、良かったですよ!
◇ ◇
攻略された秋月国の姫の逃避行・・・。
それをつけ狙うのが、山名国の武士・鷹山。
この鷹山の、作り手側のイメージだが、黒い甲冑に身を包み、明らかにダースベイダーを意識していた。
それは、黒澤のオリジナルが、後年、『スターウォーズ』に影響を与えたように、更に、このリメイクが『スターウォーズ』を意識していることを意味しよう^^
◇ ◇
鷹山と競り合う、雪姫の忠実な家来である武士・六郎太を演じるのは近年大活躍し過ぎている阿部寛^^
この六郎太のチャンバラシーンは、なかなか激しかった。
私は、『王妃の紋章』で観たような「マトリックス」風の剣術シーンよりも、スピード感あるものの方が好きだ。
そこには、樋口監督のこだわる「剣の残影」や「火花」「砂ぼこり」など、アニメ的な手法が取り込まれて盛り上げてくれた。
六郎太vs鷹山は、オビワン・ケノービvsダース・モール風でもあった。
◇ ◇
三つ不満がある。
1.地中からの有害ガス(瘴気)が、敵に勝つキーポイントになるのだが、クライマックスで地下を掘る理由が、敵に囚われている状況においては圧倒的に弱いと感じた。
しかも、主人公・武蔵が腰の籠に持っている「ガス感知のカナリア」が、物語の冒頭に出てきて、旅を経ての、クライマックスになるまでずっと籠から出てこないのだ。
籠に入れっ放しなのだ。
私は、籠の中にいるカナリアが飢え死にしていないか、見ながらずっと気になってしまっていた。
途中で、1シーンでも、餌をあげる描写があったら、物語のリアリティがぐっと高まるのになあ。
2.また、馬で逃げた敵を、前の村まで、同じく馬で追いかける雪姫と六郎太のシーンがあったが、かなりの距離があるのに、武蔵が足で追いついてしまい、そこでの顛末を見聞きしてしまう。
そして、その二人よりも早く、武蔵は元の場所に戻ってしまう。
私は、このような旅の行程の距離感の無視が行われると、非常に白けてしまう時がある。
3・クライマックスの舞台となる「隠し砦」が、全く隠されていなくて、主人公達が、ずいぶんと気楽に侵入できてしまっている・・・。
◇ ◇
新八役の宮川大輔は、おそらく黒澤好みのいい演技をしていましたね^^
『ガチ☆ボーイ』と言い、今後、邦画の名バイプレイヤーになるでしょうて・・・。
PS.それから、「火祭り」シーンが、手塚治虫の描く古来のお祭りシーンを髣髴とさせて良かったです。
(2008/05/11)
だが、私は素直に楽しめた。
昨年の黒澤リメイクの『椿三十郎』のほうが、オリジナルまんまで、けれど、クライマックスの「血しぶき」がなかったので、非常に物足りなかった。
新『隠し砦の三悪人』では、オリジナルからの大幅なアレンジが為されていて、私は、別物作品として見た。
物語上、酷評するに足る破綻もなく、楽しんで観た。
大きな「破綻」と言えるとしたら、派手なアクションシーンに隠されて、大テーマであろう「君主と民の関係」というテーマ性が薄れてしまっていることぐらいだろうか?
物語の節々で、雪姫のセリフとして、それは語られているのだが、こちらの心に深く刺さってくるとは言い難い。
樋口監督は、自分のアクション指向の、その「更に向こうの情感」を描きたそうな気持ちが、前作『日本沈没』、前々作『ローレライ』と垣間見えるのだが、それが成功しているとは言い難い。
ただ、そのテーマ性がセリフででも語られていないと、物語は劣化の一途を辿ることになるので、限りある上映時間の中で、ちゃんと登場人物に語らせていることで及第点は与えられるだろう。
◇ ◇
雪姫役の長澤まさみだが、とても良かったと思う。
この子、ちゃんとアクション映画用の声が出る女優だなあと感心した。
柴崎コウなんて、アクション物で叫ぶ声が、なんか苦しそうで、聞いているこちらも辛くなる。
ただ、序盤、戦国時代の設定だったので、いつものアイドル用のメイクではなく、私は、ずーっと長澤まさみに見えなかった。
いつもの長澤まさみとして「見よう、見よう」と思うのだが、他人にしか見えなかった。
メイクの力は大きいのだなあ、と感心した。
ただ、この映画上のメイクが悪いわけではなく、可愛いイメージの長澤まさみが、ずーっと「いい女」顔に見えて、それはそれで良かった。
◇ ◇
上記の長澤まさみと同じアイドルである松本潤が主演であるが、この松本潤も良かった。
テレビのイメージだと、ナヨッとした中性的な魅力を醸しているのだろうが、この作品では、それと全く違った印象を残してくれている。
ちょっと多すぎる無精ひげと、よたった歩き方、鼻をしゃくる仕草・・・。
おそらく、ファンには不評なんだろうな^^;
でも、良かったですよ!
◇ ◇
攻略された秋月国の姫の逃避行・・・。
それをつけ狙うのが、山名国の武士・鷹山。
この鷹山の、作り手側のイメージだが、黒い甲冑に身を包み、明らかにダースベイダーを意識していた。
それは、黒澤のオリジナルが、後年、『スターウォーズ』に影響を与えたように、更に、このリメイクが『スターウォーズ』を意識していることを意味しよう^^
◇ ◇
鷹山と競り合う、雪姫の忠実な家来である武士・六郎太を演じるのは近年大活躍し過ぎている阿部寛^^
この六郎太のチャンバラシーンは、なかなか激しかった。
私は、『王妃の紋章』で観たような「マトリックス」風の剣術シーンよりも、スピード感あるものの方が好きだ。
そこには、樋口監督のこだわる「剣の残影」や「火花」「砂ぼこり」など、アニメ的な手法が取り込まれて盛り上げてくれた。
六郎太vs鷹山は、オビワン・ケノービvsダース・モール風でもあった。
◇ ◇
三つ不満がある。
1.地中からの有害ガス(瘴気)が、敵に勝つキーポイントになるのだが、クライマックスで地下を掘る理由が、敵に囚われている状況においては圧倒的に弱いと感じた。
しかも、主人公・武蔵が腰の籠に持っている「ガス感知のカナリア」が、物語の冒頭に出てきて、旅を経ての、クライマックスになるまでずっと籠から出てこないのだ。
籠に入れっ放しなのだ。
私は、籠の中にいるカナリアが飢え死にしていないか、見ながらずっと気になってしまっていた。
途中で、1シーンでも、餌をあげる描写があったら、物語のリアリティがぐっと高まるのになあ。
2.また、馬で逃げた敵を、前の村まで、同じく馬で追いかける雪姫と六郎太のシーンがあったが、かなりの距離があるのに、武蔵が足で追いついてしまい、そこでの顛末を見聞きしてしまう。
そして、その二人よりも早く、武蔵は元の場所に戻ってしまう。
私は、このような旅の行程の距離感の無視が行われると、非常に白けてしまう時がある。
3・クライマックスの舞台となる「隠し砦」が、全く隠されていなくて、主人公達が、ずいぶんと気楽に侵入できてしまっている・・・。
◇ ◇
新八役の宮川大輔は、おそらく黒澤好みのいい演技をしていましたね^^
『ガチ☆ボーイ』と言い、今後、邦画の名バイプレイヤーになるでしょうて・・・。
PS.それから、「火祭り」シーンが、手塚治虫の描く古来のお祭りシーンを髣髴とさせて良かったです。
(2008/05/11)