前回 → 長い間疑問だった事
亡くなるという現場で働くのは、悲しくないか、辛くないか。
この世を離れる時に、傍にいて欲しいと思うのだろうか、誰かいた方が良いのだろうか・・。
そう訊くわたしに、以前終末医療に関わっていた看護婦さんは真剣に答えてくれました。
死は誰でも怖いのだと思う。 だから、自分は傍にいてあげたい。
傍にいるよ、見守っているよ、と伝えるために傍にいたい。
相手がどう思っているかは分からない、だから、完全に自分のエゴだ、でも、
それでも、エゴで良いから自分は傍にいたいと思う。
そう語ってくれる言葉を聞いて、初めて 得心がいったというか、あぁそうか、と思う事ができました。
たぶん、私は死が怖くて、違う次元になるという事が悲しすぎて、考える事すら出来なかったんだと思う。呼吸が止まるその瞬間に立ち会う事が、とても怖かったんだと思います。 そばにいて亡くなるのを待つ、という事がどうしても出来なかった。
その看護婦さんとは、そのあとも何度も話す機会があって、私が彼女について感じたのは、
この世を去る、という事をとても神聖な事と感じていて、そういう場所で、自分の出来る事を出来る限りしたい、そう思っていらっしゃるようでした。
そうして私は、このたび、伯父の臨終に駆けつける事が出来たのでした。
以前だったら、亡くなるのを待つ、という形が怖くて、病院には行かなかったと思う。
でも行ってみて思ったのは、来て良かった、という事でした。
霊体があるかどうかは知らないけれど、 魂が不自由な体を離れてふわっと上に浮いたときに、病室に人が集まっている様子を伯父さんが楽しそうに見ている気がしたのです。 体を離れた途端に、皆に話しかけている様な気がしたのです。
あぁ来て良かった、と素直に思えたのでした。
私にとって、大きな出来ごとで、大きなきっかけでした。何がという事もないのですが、大きなきっかけだった、そう思うのです。