宇宙飛行士に選ばれる最大のポイントは『どんな(ありえないほど酷い)事態に直面してもパニックを起こさず冷静に判断して行動できる』という資質を持っているかという点にある、と聞いたことがあります。その点で本書の主人公マーク・ワトニーはピカイチです。何といっても火星にひとり取り残され、空気も水も限られた量しかない状況での生き残りを図らなければならなくなってしまうのですから・・・。
もう気がついた方も多いと思いますが、映画化された『オデッセイ』の原作本にあたります。現在では『オデッセイ』に改題され上下2巻本になって売られていますが、私は原題『火星の人"The Martian"』の方が好きです。
映画化される前、すでに年間ベストSFにも選ばれちょっと話題でした。
何せ読んだ人が全員『絶対オモシロイから読んでみてよ!』とヒトに勧めまくるという数少ない本でしたから。
かくいう私も友人に『読め!』と勧め続け、入院のお見舞にも持って行った程なんです。
あらすじは(もうご存知でしょうが)裏表紙カバーの文言から・・・。
友人火星探査が開始されて3度目のミッションは、猛烈な砂嵐によりわずか6日目にして中止を余儀なくされた。だが、不運はそれだけで終わらない。火星を離脱する寸前、折れたアンテナがクルーのマーク・ワトニーを直撃、彼は砂嵐のなかへと姿を消した。ところが---。奇跡的にマークは生きていた!?不毛の赤い惑星に一人残された彼は、限られた物資、自らの知識を駆使して生きのびていく。宇宙開発新時代の傑作ハードSF。
出だしはちょっと面喰います(ワトニーの日誌の体裁を取っているため)が、読み進めていくうちにドンドンはまっていきます。
で、原作のワトニーってちょっとカルいんです。映画ではムキムキのマット・ディモンが憂鬱なゴリラみたいな演技をしていましたが、原作のワトニーは(若い頃の)ジム・キャリーがやったら似合うんじゃないかと思うようなカルい才人に描かれています。
解決不能に思われるミッションを意表を突くアイデアで解決していく様子は読んでいて『その手があったか!!!』と驚きの連続です。
ひとり火星にとり残されたワトニーは、最悪の事態を想定して4年後に次の探査船が来るまで生き延びる方法を模索します。それがジャガイモの栽培でした。映画では芽が出る瞬間の感動をメインに描かれましたが、本当に面白い裏の周到な計算は描かれませんでした。
ぼくは毎日1500キロカロリーとらなくてはいけない。手始めに確保できるのは400日分。となると、1425日程度生きているためには、その全期間を通じて、毎日どれくらいのカロリーをつくりださなくてはならないでしょうか?
計算する手間をはぶいてさしあげよう。答えは約1100。ぼくはアレス4(次回の火星探査船)がくるまでのあいだ、生き残りをかけて農作業に精を出し、毎日1100キロカロリーつくりださなくてはならないのだ。実際にはもう少し多めになる。もうソル25(火星に残されて25日め)なのに、まだなにも植えていないのだから。
62平方メートルの農地で一日につくりだせるのは約288キロカロリー。したがって、生きのびるためには現行計画の4倍近い量が必要ということになる。
こんな感じで、次々と解決すべき問題が発生し、ワトニーがそれぞれの問題に『あっ』というような解決方法を思いつき、実行していく、まさにSFでいう『センス・オヴ・ワンダー』の連続なのです。着陸船の燃料から水を造ったり、暖房のために(かなり危険な)放射性同位体熱電気転換機を地中から掘りだしたり、過去に火星に到着した探査機を使って地球との交信を試みたり、決してあきらめない(どんな絶望的な状況でも最善の判断をしようと努力する)ワトニーの判断力と行動力は素晴らしいものがあります。そして必ずユーモアを忘れない・・・。
このブログを読んでくださっている皆さんも、それぞれ困難な状況に直面することがあると思います。
そんな時、この本はきっと役立ちます。心の支えになります。ぜひ読んでください!!!オススメです。
関連するかも→『月面で遭難したとき、どうするか?』
追記 映画で最後にワトニーが使った手段(通称『アイアンマン』)は原作では却下されています。
ワトニー「なにか尖ったものを見つけて、EVAスーツのグローヴに穴をあけるんです。そうすれば逃げて行く空気をスラスターにして、そっちへ飛んでいけます。スラストの源はぼくの腕のところですから、方向は簡単に変えられます」
マルティネス「そういうくそアイディア、どこから思いつくんだよ、まったく」
いや、まったく。どこから思いつくんだよ。
もう気がついた方も多いと思いますが、映画化された『オデッセイ』の原作本にあたります。現在では『オデッセイ』に改題され上下2巻本になって売られていますが、私は原題『火星の人"The Martian"』の方が好きです。
映画化される前、すでに年間ベストSFにも選ばれちょっと話題でした。
何せ読んだ人が全員『絶対オモシロイから読んでみてよ!』とヒトに勧めまくるという数少ない本でしたから。
かくいう私も友人に『読め!』と勧め続け、入院のお見舞にも持って行った程なんです。
あらすじは(もうご存知でしょうが)裏表紙カバーの文言から・・・。
友人火星探査が開始されて3度目のミッションは、猛烈な砂嵐によりわずか6日目にして中止を余儀なくされた。だが、不運はそれだけで終わらない。火星を離脱する寸前、折れたアンテナがクルーのマーク・ワトニーを直撃、彼は砂嵐のなかへと姿を消した。ところが---。奇跡的にマークは生きていた!?不毛の赤い惑星に一人残された彼は、限られた物資、自らの知識を駆使して生きのびていく。宇宙開発新時代の傑作ハードSF。
出だしはちょっと面喰います(ワトニーの日誌の体裁を取っているため)が、読み進めていくうちにドンドンはまっていきます。
で、原作のワトニーってちょっとカルいんです。映画ではムキムキのマット・ディモンが憂鬱なゴリラみたいな演技をしていましたが、原作のワトニーは(若い頃の)ジム・キャリーがやったら似合うんじゃないかと思うようなカルい才人に描かれています。
解決不能に思われるミッションを意表を突くアイデアで解決していく様子は読んでいて『その手があったか!!!』と驚きの連続です。
ひとり火星にとり残されたワトニーは、最悪の事態を想定して4年後に次の探査船が来るまで生き延びる方法を模索します。それがジャガイモの栽培でした。映画では芽が出る瞬間の感動をメインに描かれましたが、本当に面白い裏の周到な計算は描かれませんでした。
ぼくは毎日1500キロカロリーとらなくてはいけない。手始めに確保できるのは400日分。となると、1425日程度生きているためには、その全期間を通じて、毎日どれくらいのカロリーをつくりださなくてはならないでしょうか?
計算する手間をはぶいてさしあげよう。答えは約1100。ぼくはアレス4(次回の火星探査船)がくるまでのあいだ、生き残りをかけて農作業に精を出し、毎日1100キロカロリーつくりださなくてはならないのだ。実際にはもう少し多めになる。もうソル25(火星に残されて25日め)なのに、まだなにも植えていないのだから。
62平方メートルの農地で一日につくりだせるのは約288キロカロリー。したがって、生きのびるためには現行計画の4倍近い量が必要ということになる。
こんな感じで、次々と解決すべき問題が発生し、ワトニーがそれぞれの問題に『あっ』というような解決方法を思いつき、実行していく、まさにSFでいう『センス・オヴ・ワンダー』の連続なのです。着陸船の燃料から水を造ったり、暖房のために(かなり危険な)放射性同位体熱電気転換機を地中から掘りだしたり、過去に火星に到着した探査機を使って地球との交信を試みたり、決してあきらめない(どんな絶望的な状況でも最善の判断をしようと努力する)ワトニーの判断力と行動力は素晴らしいものがあります。そして必ずユーモアを忘れない・・・。
このブログを読んでくださっている皆さんも、それぞれ困難な状況に直面することがあると思います。
そんな時、この本はきっと役立ちます。心の支えになります。ぜひ読んでください!!!オススメです。
関連するかも→『月面で遭難したとき、どうするか?』
追記 映画で最後にワトニーが使った手段(通称『アイアンマン』)は原作では却下されています。
ワトニー「なにか尖ったものを見つけて、EVAスーツのグローヴに穴をあけるんです。そうすれば逃げて行く空気をスラスターにして、そっちへ飛んでいけます。スラストの源はぼくの腕のところですから、方向は簡単に変えられます」
マルティネス「そういうくそアイディア、どこから思いつくんだよ、まったく」
いや、まったく。どこから思いつくんだよ。