第二次世界大戦を描写した小説や映画では必ず悪役扱いされるドイツ軍。
しかし、その中にあって唯一、味方からはもちろん、敵からも称賛された人物がいます。
彼の名はエルウィン・ロンメル。
※P.カレル『砂漠のキツネ』(フジ出版社 / 昭和46年4月15日5版発行)
これは彼と彼の率いるドイツ・アフリカ軍団の活躍を記録した本です。
【北アフリカ全図】
1.ロンメル登場~バトルアクス作戦(英)まで
1941年2月12日、北アフリカに降り立ったロンメル、彼に与えられた使命は『総崩れになったイタリア軍の補強をする』ことだった(イタリア軍を支えるコルセットの役割を果たすのだ、と命令されていた)。
※イタリア軍の軽戦車『カーロ・アルマート L6/40』
※イタリア軍の中戦車『カーロ・アルマート M13/40』
ヒトラーに率いられたドイツ軍総司令部は、来るべき対ソ戦の準備に掛かり切りで、北アフリカには関心がなかった。北アフリカは、せいぜいヨーロッパ防御のための橋頭保ぐらいにしか考えていなかったのだ。
着任したロンメルは英軍の補給線が伸び切り弱体化しているのを見て取るとすぐさま攻勢に出る。これ、実は立派な命令違反だった。ヒトラーはドイツ軍に攻撃を禁じており、英軍情報部もそれを知っていたため、まさかドイツ軍が攻勢に転じるとは思ってもいなかったのだ。しかし英軍が日に日に戦力を増強している現実を見て取ったロンメルは『勝機は今しかない』と決断を下す。
※ドイツ北アフリカ軍団の主力①Sd.Kfz.141『三号戦車』
※ドイツ北アフリカ軍団の主力②Pz.Kpfw.IV『四号戦車』・・・『あんこうチーム』でお馴染み。
英軍は『砂漠に慣れていないドイツ軍は海岸線に沿って舗装道路を進んでくるに違いない』と予想して防備を固めるが、ロンメルの作戦は英軍の予想を遥かに超えていた。部隊を3つに分けると、砂漠を突っ切って英軍要塞トブルクに向かったのだった。
通常は部隊を分けることはタブーである。ウォー・シュミレーション・ゲームをやったことのある人ならスグ分かることですが、戦闘で勝つ秘訣は『局所的に数で敵に勝る状況を作り出す』ことなのだから(赤穂浪士や新選組は三人一組で行動し、敵1人に対し常に3人で掛かるようにした。これなら絶対勝てる!)。
ロンメルは砂漠では従来の地上戦の概念が通用しないことをよく知っていた。戦車師団は砂漠という海を進む船団のように運用された。ただしガソリンを燃料とする戦車の燃費の悪さは予想外だったようで、砂漠の中での燃料切れという事態には、トラック部隊の荷を下ろしてガソリンをピストン輸送するという荒ワザで切り抜けることもあったと書かれている。
メキリの燃料基地を手に入れトブルクを目指すが、トブルクの守りが固いのを見て取ると、これを置いたまま進軍、怒涛の勢いにたちまち英軍は侵攻前の状態まで押し戻されてしまった。このとき、ロンメルの頭の中には壮大な計画があったのだが、敵も味方も誰一人としてそれを理解してはいなかった。彼の構想とは『交通の要衝であるスエズ運河を押さえてシリアに侵攻、油田と製油所を確保してドイツ軍の一大補給基地とする』なのだった。
ソルーム攻略戦において英軍は態勢を立て直し(バトルアクス作戦)激烈な戦闘となるが、ロンメルは208基地を迂回して英軍の後ろに廻り込みこれを包囲、ドイツ軍が勝利を収める。
ドイツ軍はハルファヤ峠を手に入れ、ここに対戦車砲を据えて陣地とした。ハルファヤ峠に据えられたのは名高い88ミリ高射砲である。
※ドイツ軍のFLAK36/37『88ミリ高射砲』
これをドイツ軍は対戦車砲として活用した。88ミリ砲が撃ち出す徹甲弾に耐えられる戦車はなく、英軍はハルファヤ峠を『ヘルファイア(地獄の劫火)峠』と呼んで恐れることになる。
(つづく)
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ロンメルはちょび髭七三分け野郎に愛されながらも、
最期濡れ衣で、毒であぽーんですよね。
私は彼がこちらで戦ってくれて良かった、
ユダヤ人虐殺に直接手を下さなかった、
また、捕虜を丁寧に取り扱うことなどから紳士だと思っています…。
それにしても歩兵から戦車への素早い切り替えっぷりとか、
イタリア軍のグダグダっぷりとか笑えます。
(管理人様はフィギュア好きだとは思っていたが・・・嗚呼。戦士の目を塗るのが一番難しいのよね、これ。ええ、ついていかないわ、もちろん。)
遊んでいないで、続きはよ。
『薄い装甲を補うために戦車に砂袋を載せて、ますます機動力を失ってしまう』とか・・・。
『イタリア軍は勇敢だったけれど、装備も体質もあまりに旧式だった』というのが本当のところです。