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「昭和の消えた仕事図鑑」 宮沢優著 原書房 2016年発行
カストリ雑誌業
---戦後まもなくの昭和21年から25年ごろにかけて出版されたエログロな内容の大衆娯楽雑誌を出版する業者。
紙不足の時代に、屑紙を再生した紙で作られた---
カストリ雑誌が誕生したのは、敗戦後間もなくであった。
それまでの表現の自由から一気に解放され、性、犯罪、怪奇、推理などを描いた出版物が堰を切ったように刊行された。
それを牽引したのが、粗悪な紙で作られたカストリ雑誌であった。
戦後、GHQによって用紙統制されていたが、カストリ雑誌は統制の対象外であった仙花紙で作られた。
主に性風俗を扱ったものが多く、「風俗研究」「りべらる」「アベック」「好色草紙」「怪奇実話」「オール夜話」「犯罪実話」などの雑誌があった。
雑誌「猟奇」の2号は6万部も売れたが、わいせつ物頒布罪の疑いで摘発された。
結局「猟奇」は5号で廃刊。
他のカストリ雑誌も本文中に性風俗の挿絵や口絵があり、21年から百数十種類の雑誌が刊行されたがすぐに消えた。
時流に敏感な学生の中には雑誌を創刊する者もおり、東京大学の学生だった室伏哲郎らは「ナンバーワン」を刊行している。
正当な雑誌を扱う出版社は「内神田」、カストリ雑誌を出す出版社は「外神田」と呼ばれ区別された。
表現の自由を謳い、一時的な人気を博したものの、興味本位な内容に走り、明確な方向性を持たなかったため、結局、カストリ雑誌は昭和25年ごろにはほとんど姿を消した。
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