徒然地獄編集日記OVER DRIVE

起こることはすべて起こる。/ただし、かならずしも発生順に起こるとは限らない。(ダグラス・アダムス『ほとんど無害』)

自己表現/第13節 磐田戦

2011-05-29 13:19:21 | SHIMIZU S-Pulse/清水エスパルス11~14


ゴトビ「全体的にホントに素晴らしい雰囲気の中での静岡ダービーだったと思います。ファンの我々に対する愛、そして彼らが持ち込んでくれたエネルギーというものをホントにありがたいと思います。チームのことを誇りに思います。(中略)我々はしっかりと試合ごとに成長して来ていることを、そして毎回成長して、良くなって来ていると思います。将来的に太陽が我々に照ってくれれば良いなと思います」(Sの極み 5月28日付)

昨日はアウスタで静岡ダービー
ドローで終わってしまったとはいえ、神戸戦で5失点を喰らってしまったホームゲームで、好調のジュビロをシュート2本(CKは0!)に抑え、内容についても序盤こそミスの多い展開だったが、前半の半ばからはほぼゲームを支配したことはもっと評価されていい。柳下体制によって完成しつつあるジュビロに対して、発足から4ヶ月のゴトビエスパルスは同等かそれ以上に戦えた。チームとしての未成熟を補うように伸二、タカ、大悟という成熟したプレーヤーが若いチームを落ち着かせ、元紀、トシはチームを活性化させる。もちろんチームでは中堅であり、中心である岩下はチャレンジングなフィードを前線に送り続けた。結果こそ出てはいないがチームは今、実にバランスの取れた状態にある。

それにしてもジュビロはファウルスローが多かった。まるでスタジアムの雰囲気に気圧されているような印象さえ受けた。
今回のダービーがピッチ外のことばかりが語られているように、一枚の横断幕がきっかけにキックオフ前からスタジアムは異常にテンションがあがっていた。直前の入梅の影響もあり観客はわずか1万2000人ではあったが、ピッチに向けられた緊張状態は数字以上。キックオフ後、数十分の清水ゴール裏のテンションは異常だった。

ゲーム終了後、ゴール裏のコールに応えて、ゴトビはプレーヤーを呼び戻して改めて挨拶をした。今回の<事件>は実に残念で不幸な出来事ではあったけれども、清水サイドに立って見れば、ゴトビと若いチームへの信頼を再確認することになったと思う。まさに目頭が熱くなるほどの胸熱。こうして御託のような<スポーツマンシップ>を越えて、静岡ダービーの人間臭い記憶と歴史が積み上げられていくのである。

<事件>についても言及しておく。ゲームの内容よりもこちらの方が感想が長いのはちと問題あるが。



誹謗中傷…水を差された「静岡ダービー」(サンスポ 5月28日付

吉野博行社長(磐田)「先程、竹内さん(清水社長)から話しがあったように意図もなく非常に大変なことをやってしまったと、かなり反省はしてましたけども、色んなカタチで、「意図はない」んですけどもホントにご迷惑をお掛けしたと、クラブからもお詫び申し上げたいという風に思っております。先程の関連の中では2度とこういうことが起こらないように色んなチェック体制も、もう1回更に強化しなければならないですし、どこまで我々が全てのああいう看板から幕から全てを事前にチェックするというカタチになるわけでという風に思います」(Sの極み 5月28日付)

政治的というには稚拙な表現ではあったが、「意図もなく」というのがよくわからない。
意図はあっただろう。誹謗中傷する意図が。
クラブのトップはそれを言葉通りに受け止めて「少年2人だけの行動」として収めようとしているニュアンスも感じられなくもない。それは一体本当なのか。イラン生まれのアメリカ人監督に対してイランの核兵器疑惑を持ち出して中傷する高校生、である。それはいかにも2ちゃんねる的ではあったが。

それにしてはゴール裏に掲げられた横断幕の大きさは尋常ではなかった。
個人のゲーフラサイズではない。コアサポが掲げた「清水だけには負けられない」云々の横断幕とほぼ同じ大きさで(しかもそれ以上に目立った)、コアサポ、周囲の人間が「知らなかった」では済ませられないほどの大きさである。これを少年ふたりだけの責任にしてしまうのはあまりにも無責任過ぎると言えないか。また、それほどの大きさなのだから、まずは掲げられたときに真っ先にジュビロ関係者が制止、横断幕を下ろさせることはできなかったのか。そうすれば清水サポーターのジュビロエリアへの乱入などという事態は防げた可能性はある。
ちなみにビデオでも確認したがあの程度の揉み合いが「乱闘」だの「暴動」だのと表現されるのは間違っている。あれはあくまでも多めに見積もっても乱入程度のことで<抗議>の範疇と言える。確かに警備エリアを突破してジュビロエリアに入り込んでしまったのは警備上の問題として指摘されても仕方がないが、つまり、あれも<デモ>である。抗議なのだからそれ自体に批判など必要ない。オレだって<デモ>はやる。

それよりも懸念されるのはゴール裏での自己表現の規制である。
今回も騒動の尻馬に乗ってTwitterでも清水ゴール裏が掲げる「磐田の首ひとつ」云々のフラッグについて言及する輩も予想通りいた訳だが、それはあくまでも自己表現の方法の違いでしかないのであって、今回の問題に絡めて公(ネット)の批判の俎上に上げるのは間違っている。コールが嫌なら歌わなければいいし、フラッグ、ゲーフラが嫌ならばまず当事者と直接会話するべきなのだ。そんな最低限のコミュニケーションも取らずにいきなり管理者の規制を求めるというのは、まさに311前から日本に蔓延っていたあまりにもディフェンシブな保守的思考と言わざるを得ない。
ゴール裏(スタンド)というのは、「自分の愛するクラブを応援する」という一点だけで繋がっているバラバラの個人の「社会」でしかない。確かにそんな「社会」ではフロントとズブズブのサポ団体だっているだろうが、まず守られなければならないのは個人個人の自己表現である。今回のジュビロの中傷横断幕が批判されるのは当然だが、経緯と状況はもっと分析されるべきだし、それによって議論が始まるならば歓迎だが、無条件にゴール裏の規制が強まるのはお門違いと言っておきたい(まあゲーフラにまでは及ばないとは思うけれども)。

このトラブルのせいでキックオフ直前に完全に勢いを削がれてしまったジュビロのゴール裏はちと気の毒だったかな。
相手への煽り合いはサポーターの習性とはいえ(それ自体を批判する必要はない)、相手への誹謗中傷以前に味方の足を引っ張っちゃ駄目だよ。イランの核疑惑を知っている程度の知性はあるんだから、もっと「勉強」しようぜ、少年。

竹内康人社長(清水)「いや、私自身、今はね、やっぱりジュビロさんとのダービーマッチは、このスタジアムでということでやってますので、ここでやれるようにしっかり見直して、是非やっぱりこのスタジアムで開催したいという風に思っています」(Sの極み 5月28日付)

これは正解。竹内さんはわかってる。
できれば警備上の問題、動員の問題を越えて、再び浦和戦もアウスタで開催して欲しいところではあるんだが。

あ、あと清水サポの乱入に批判の矛先を変えようとしているジュビロサポのブログ(魚拓)は論外です。

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