人工衛星システムの製造・開発・運用を担うアストロスケールは、今年2月に開始した商業デブリ(宇宙ゴミ)除去実証衛星「ADRAS-J」のミッションにおいて、観測対象のデブリに接近する過程で撮影したデブリの画像を公開した。
デブリへ接近し近距離で撮影した画像を公開するのは世界初。
運用を終了した衛星等のデブリは、外形や寸法などの情報が限られるほか、位置データの提供や姿勢制御などの協力が得られず、接近・捕獲等を行うための技術的な観点から非協力物体とも呼ばれる。
デブリについて、その劣化状況や回転レートなど、軌道上での状態を把握しつつ、安全・確実にRPO(ランデブ・近傍運用)を実施することは、デブリ除去を含む軌道上サービスを提供するために不可欠な技術。
ADRAS-Jは、実際のデブリへの安全な接近を行い、近距離でデブリの状況を調査する世界初の試み。
具体的には、大型デブリ(日本のロケット上段:全長約11m、直径約4m、重量約3トン)への接近・近傍運用を実証し、長期間軌道上に存在するデブリの運動や損傷・劣化状況の撮像を行う。
2月22日より開始した接近の運用では、軌道投入時にはデブリと異なる軌道にあった衛星を、 GPSと地上からの観測値という絶対的な情報を用いて(絶対航法)デブリと同じ軌道へと遷移kmにまで接近させた。
4月9日には、ADRAS-J搭載のVisCam(可視光カメラ)にてデブリを捕捉したことで、衛星搭載センサを駆使してデブリの方角情報を用いる相対航法(AON)を開始。
方角情報も用いながら相対軌道を制御して距離を詰め、デブリの後方数kmの距離において衛星搭載のIRCam(赤外カメラ)にてデブリを捕捉した。
そして4月16日、IRCamによって取得するデブリの形や姿勢などの情報を用いる相対航法(MMN)を開始し、4月17日にデブリの後方数百mの距離にまで接近に成功した。