スタンフォード大学カブリ素粒子宇宙論研究所のノロベルト・ウェルナー研究員、JAXAインターナショナルトップヤングフェローのオーロラ・シミオネスク研究員らからなる研究グループは、高い感度と分光性能を誇るX線天文衛星「すざく」を用いて、ペルセウス座銀河団の広い範囲にわたって鉄の割合を調べ、そのばらつきが小さいことを発見した。
実際、得られたデータは、そのようなばらつきが全くないと考えて説明でき、銀河の分布と相関していない。1000万光年にも及ぶ広い範囲について鉄の割合がほぼ一様であることから、鉄のほとんどは、銀河団が形成された時代よりも前に、宇宙に大きく広がりよく混ざっていたと考えられる。
銀河団の誕生は、宇宙誕生から約40億年後(いまから約100億年前)だと考えられているので、いまから100億年以上前に、鉄などの重元素が星々から大量にまき散らされ、宇宙中に拡散した時代があったこと、現在の宇宙に広がるほとんどの重元素はその時代にまき散らされたものであることが分かった。
数多の星が生まれ、巨大ブラックホールが急成長したこの時代、星々から生み出された重元素は、銀河からの強い風に乗って宇宙中に拡散していた。
「すざく」衛星は、2005年に日本が打ち上げたX線天文衛星で、その開発にはNASAも協力した。暗い放射を検出する感度にすぐれ、現在、世界中に開かれた国際X線天文台として運用されている。同成果もその公募観測の中から生まれた。「すざく」は、現在も精力的に宇宙観測を続けている。