書名:はやぶさ―不死身の探査機と宇宙研の物語―
著者:吉田武
発行所:幻冬舎
目次:プロローグ・挑戦
第1部大地の詩
第1章逆転の糸川英夫
第2章遺産から財産へ
第3章栄光、落胆、そして試練
第2部天空の詩
第4章虹の彼方へ、星の世界へ
第5章「はやぶさ」への道
第6章旅のはじまり
第7章遂に来た、イトカワ!
第3部人間の詩
第8章旅路の果てに
エピローグ・復活
宇宙探査機「はやぶさ」ほど日本人全体に科学や宇宙への関心を高めてくれたプロジェクトはないであろう。小惑星「イトカワ」に降り立ち、その土を地球に持ち帰るという夢のようなテーマに果敢に立ち向かい、それを成し遂げたことは、賞賛に値することは勿論ではあるが、それ以上にこれからの日本人の生き方の先導役となるような人生訓的で哲学的な問題も提起したプロジェクトではなかったと思えてくる。
吉田武著「はやぶさ―不死身の探査機と宇宙研の物語―」(幻冬舎新書)は、そんな大プロジェクトを日本のロケットの父と呼ばれる糸川英夫の挑戦から説き起こし、実に緻密にプロジェクトの全貌を解明してくれる。
単なる物語に終わるのではなく、可能な限り技術的にも正確な資料を添えて解説してあるところが圧巻だ。この本は、まだ「はやぶさ」が地球に帰還しないうちに書き上げられたが、地球帰還の模様も補足されており、完結した内容となっている。
宇宙とロケットに関しての素人でも読め、しかも同時に、将来宇宙とロケットの専門家を目指す人にとっても参考になるという、2つの側面を同時に満足させることに成功した貴重な記録といえる。(勝 未来)