副題は、オープンダイアローグ、未来語りのダイアローグ、そして民主主義。 高木俊介氏は精神科医で、日本におけるオープンダイアローグの紹介者であるが、長くACTと呼ばれる地域の精神科医療の活動に取り組まれ、実績を残している方である。 この書物は、オープンダイアローグ、未来語りのダイアローグについてのものであるが、はじめに、ACTという活動について、少々長くなるが氏の記述によって紹介しておきたい。オー . . . 本文を読む
矢原隆行氏は、1968年生まれ、九州大学から大学院博士課程で、社会学を学んだらしい。現在は、熊本大学のHPによると、同大学院人文社会科学研究部の教授で、専攻は臨床社会学ということである。【臨床の知とリフレクティング】 臨床社会学とは何かについて、詳しいことは置くとして、中村雄二郎の臨床の知、河合隼雄の臨床心理学、鷲田清一の臨床哲学と、私が慣れ親しむ知の系譜に連なるものであることに間違いはないだろ . . . 本文を読む
精神科医森川すいめい氏の著作は、『感じるオープンダイアローグ』(講談社現代新書、2021)についで2冊目である。 序章「オープンダイアローグはこうして生まれた」の冒頭は、こう始まる。【当事者の困難の発見】「現代の精神医療の現場は、「症状を分析し、診断名を確定し、治療や支援方針を決める」というスタイルが中心になっています。生活を支えるための公的な資源の多くも、診断名に基づいて設計されています。 し . . . 本文を読む
冒頭は、精神科医・齋藤環氏と臨床心理士・東畑開人氏の対談「セルフケア時代の精神医療と臨床心理」。というか、それを読みたくて、久しぶりに『現代思想』を買った。前回は、2014年5月号、特集は「精神医療のリアル」。そうか、そこで、斉藤環氏の紹介するオープンダイアローグ(以下、OD)に出会ったのだった。もはや7年前のことだ。 今回の対談で、私が最も重要と思うのは、おふたりの下記の発言である。斉藤氏が、 . . . 本文を読む
発行元の遠見書房は、HPを見ると、「心と社会の学術書・専門図書を中心に…2008年末に創立した出版社」であり、「臨床心理学や精神医学、福祉学を中心とした、実践家に役立つ本と、その周縁にある「人間って何だろう?」という問いを命題に孕んでいる学際領域の本と、この二つのスペクトラムのなかで、しっかりとした本づくりを目指しています」とある。その志の方向と高さは、私としても注目していくべき出 . . . 本文を読む
森川すいめい氏は、1973年生まれの精神科医。鍼灸師でもあるという。 ブック・カバーの裏に小さな顔写真がある。めがねをかけた細面の優男で、一般的な医師のイメージとはかけ離れているかもしれない。どこか弱さと優しさを感じさせる。威圧感がない。文章を読んでも、何だろう、権力的な感じがない。この威圧感のなさは、精神科の医師として、実は、他の誰もが求めることのできない優位点であるかもしれない。 経歴を読ん . . . 本文を読む
斉藤環氏は、「はじめに」にこう書く。「本書は、オープンダイアローグをテーマとした、世界でも初めての「まんが解説書」です。 おそらく、いま出版されているいかなる文献よりも、わかりやすくコンパクトに、オープンダイアローグの説明がなされていると思います。…最初に気軽に手に取ってもらえる本を目指しました。」(3ページ) 私の場合は、オープンダイアローグに関しては、雑誌を含めればもう十冊以上 . . . 本文を読む
今号の特集は、「SNSの人、教えてください」ということだが、それはさて置き、齋藤環氏の連載「ゼロから始めるオープンダイアローグ」第2回目「「無意識」の協働作業」と、さきごろ読んだ昨年11月号の特集で取り上げられた琵琶湖病院でのオープンダイアローグの実践のレポート「突撃取材!!」を読みたくて購入したところである。 斎藤氏の連載は、オープンダイアローグとはどういうものなのか、氏が依拠してきたラカン派 . . . 本文を読む
齋藤環氏は、精神科医、オープンダイアローグの日本における紹介者で、このブログでは、このところ立て続けに登場している。 與那覇潤氏は、歴史学者、私として読むべき著者のひとり、と思っているが、実際に読んだのは、同じく歴史学者の東島誠氏との対談『日本の起源』(太田出版)のみであった。2013年に読んで、ブログに掲載している。 與那覇氏は。「まえがき」にこう書く。「ぼくと齋藤環さんとが、この本で提案した . . . 本文を読む
特集名を省略なしで言えば「琵琶湖病院で始まっているオープンダイアローグを取り入れた日常診療」、昨年の11月号、バックナンバーである。 琵琶湖病院の院長補佐で精神科医の村上純一氏を中心とした取り組みの紹介である。 まずは、第1節、村上氏による「琵琶湖病院がオープンダイアローグに開かれるまで」の報告。「かつて私は、精神医療には「強制的な処遇」「隔離」「長期入院」が不可欠だと認識していました。当事者の . . . 本文を読む
齋藤環氏のオープンダイアローグについての読書会の報告の3回目、最終回が、『精神看護』9月号に掲載されている。取り上げた書物は、齋藤氏監訳、ヤーコ・セイックラとトム・アーンキル著『開かれた対話と未来』(医学書院)である。(前2回の報告についても、すでにここで紹介している。) それとは別に、今号の特集は、「思春期のゲーム依存、ネット依存」であり、他の連載も含め、興味深い記事満載である。そのいちいちも . . . 本文を読む
精神科看護分野の専門誌『精神看護』7月号は、齋藤環氏のオープンダイアローグについての読書会の報告第2回が掲載されている。取り上げた書物は、齋藤氏監訳、ヤーコ・セイックラとトム・アーンキル著『開かれた対話と未来』(医学書院)である。(第1回の掲載された5月号についても、このブログで紹介している。) それとは別に、今号の特集は「新型コロナでどうなりましたか?」であり、時宜を得た大切なテーマである。 . . . 本文を読む
精神科看護分野の専門誌『精神看護』、5月号の特集は、「教えて先輩! 看護って何? 現場のどうしよう、困ったを解消する看護理論【退院に至る道】編」ということで、これはこれで大変興味深い内容であったし、他の連載等も読みごたえあるものであったが、今回、購入したのは、斎藤環氏によるオープンダイアローグについての読書会が紹介されているからである。取り上げているのは、ヤーコ・セイックラとトム・アーンキルによ . . . 本文を読む
副題は「自助グループ・当事者研究・オープンダイアローグ」。 野口氏は、1955年生まれ、東京学芸大学教授。専門は臨床社会学、医療社会学とのこと。ナラティブ・アプローチについて、研究を進められてきたようだ。 ナラティブ・アプローチは、社会構成主義に基づくらしい。社会構成主義とは、では、どういうものか、ということになるが、ウィトゲンシュタイン、カント、デカルト、と哲学史をさかのぼって、こういうものだ . . . 本文を読む
この本は、タイトルにオープンダイアローグという言葉を含んでいるが、オープンダイアローグという画期的な方法の紹介を主眼に置いた書物ではない、ように思える。精神医療における方法であるが、もっとひろく福祉、教育の分野で大きなパラダイム転換をもたらすきっかけともなりうる対話を中核に据えた方法の、シンプルな紹介のための本ではないように見える。 端的に「オープンダイアローグ」を学びたいという読者には、すでに . . . 本文を読む