ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

月の光が

2009-08-08 00:09:04 | 寓話集まで

月の光が
あまねく照らす
夜の闇の街を
山を海を

月の光が
あまねく照らす
月の光の届かない
夜の闇の陰のほかは

闇の下の
うごめくモノ
不分明なモノ
生温かい親密なモノ

月の光が
あまねく照らす
安アパートの二階のベランダの男の
横顔を

月の光が
あまねく照らす
男の肉体の裏の暗い闇の
ほかは

男は火を点して
赤い火を点して
かすかな熱を喫って
かすかな光を射して

暗闇にかすかな光を点して

瞬く間に
月の光が
微小なほの明るい同胞を
見逃がさず

咳き込む
笑う
咳き込む
笑う

月が笑う

安アパートの二階のベランダの
男の横顔の
かすかな笑いを
月が
笑う

かすかな涙を
月が
笑う

苦い
笑いを

ほの温かく
親密な暗い何モノか
底の抜けたガラスの容れモノの
溶けた輪郭の透明な
暗く透明な
漆黒の光の
ほの明るい暗闇の
冷たい熱の
不分明な境界の
懐かしく冷たい
懐かしく生温かい

際限の無いディスタンス!
月よりも遠い!

かすかにかすかな光のみが到達しうる
遥かな距離

月の光の
その先…


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