波というほどの動きもない穏やかな水面に、赤やオレンジや少しばかりの青の光が映っている。
リアス式海岸の奥深い湾入の奥の奥、うらぶれた旧市街に囲まれた内湾の、湾口の島へ向かう航路の船着場に、トレンチコートの襟を立てた一人の男がたたずむ。
「エディ、あなたは、いつもそうね…やさしいけど、冷たい。わたしの気持ちなんてわかろうともしない。」
港にほど近い、ショット・バーのカウンターに先ほどまで並んで腰掛けて、ウイスキーの薄い水割りのグラスに手をかけたエリカの言葉を反芻していた。
コートのポケットから吸殻入れを取り出すと、煙草の火をもみ消し、男は、波止場に背を向けて人通りのない街に消えて行く。
注1)船着き場は、当時、もちろん震災前、エースポートと呼ばれた。
注2)このショット・バーは、南町マンボ通りにあったダンヒルだったかもしれない。
注2)このショット・バーは、南町マンボ通りにあったダンヒルだったかもしれない。
ハードボイルドだぜ👍
エディは波止場のバーの片隅で泣いてるぜ!👌