ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

佇む

2009-08-03 23:02:40 | 寓話集まで
ショッピング・ビルの外縁の木製ベンチに腰掛けて一服
広場の向かいのビルのイルミネーションを眺め
佇む

仕事帰りの
夕暮れの
独りの
ターミナル

夕映え
たそかれ
(かはたれ)
(朝焼け)

行き止まりの終点の
昏い空
昏く紅い空
五階建ての揺れる揺れない横長のターミナルビル
ターミナルは地下に
電車は
地上の高架橋からまっすぐ地下に潜り込み
吐き出す
通勤客すべてを
吐き出す
送り出す
湧き上がる
噴き出す
スーツ姿の女を
男を
カジュアルなスタイルの女を
男を
長い髪の若い女を
ニットキャップの若い女を
短い女を
スラリとした女を
濡ラリ
クラリ
ピンと立つ女を
噴き出す
ような
心地よいような
もどかしいような
待て
と制止されるような
乱れた乱視の視線を交わすような
スラリとした女を
噴き出す
電車はまっすぐ地下に潜り込み
吐き出す
噴き出す
湧き上がる
濡ラリ
クラリ

美しい副都心の夕映え
昏く紅い空
ビルの外縁に横並びの木製ベンチのひとつに腰掛け
何もせず
心地よく
想起し
ただ一服し
眠らず
寝ず
何もせず
女を抱くこともせず
飽かず眺め
想起し
立つこともなく
ただ座り
何も言わず
声を懸けることもなく
想わず
想い起こし
狂わず
狂おしく
飲まず
食わず



最新の画像もっと見る

コメントを投稿