開港地の
暗闇の斜面の
細い坂道を行列が登っていく
先頭の羽織袴の男が薄明るい提灯を下げて
うつむいて
だらだらと行列が続き
白無垢の花嫁衣裳の花嫁が角隠し
面を伏せて
楚々と向かう開け放たれた屋敷へ
周旋屋の誂えたほの暗い座敷へ
行きは好い佳い
帰りは怖い
晴れた日に
汽船の行き交う港を見下ろして
軍船の帰港を寄港を待ちわびて
もののふの道は
死ぬことと心得て
白無垢の花嫁衣裳の花嫁が角隠し耳隠し鼻隠し
尖った口隠しひげ隠し
尻尾を隠し
美しく哀しく愛なしく
夜空も晴れ晴れしく
星々が暗く灯り
口元脇に丸めたこぶし二つ持ちあげて
こん
と泣く
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