貫井徳郎の『灰色の虹』を読んだ。700頁超の長篇ミステリー。
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冤罪で有罪判決を受け服役した男。その男を恫喝して嘘の自白を引き出した刑事、その男の主張を信じず起訴した検事、満足できる弁護ができず冤罪を生み出した弁護士、被告の主張を認めず実刑判決を下した裁判官。次々と殺害されていく事件関係者たち。冤罪で服役した男の復讐劇、しかしそこには意外な展開が・・・。
それぞれ自分の考えが正義だと考える刑事、検事、裁判官が生み出す冤罪を問題提起する作品。彼らが正義だと信じることはいいのだが、彼らは自分が間違ってるかもしれないと考えないことによって冤罪を作り出していく。そして冤罪によって人生を壊されてしまった人間の苦悩を描く。ミステリーとしてのインパクトは強くないが、読み応えたっぷりで長篇にもかかわらず一気に読了。読んでおいて損のない作品だ。わたしは一番罪深いのは目撃者(証人)じゃないかと思うのだが・・・。