蜜柑のつぶやき ~演出家の独り言~

NPO法人劇空間夢幻工房の演出家/青木由里の日々の呟き。脚本執筆・役者・ワークショップ講師も兼業する舞台人日記♪

劇空間夢幻工房 創立25周年記念公演「ISHIN version.2024」

NPO法人劇空間夢幻工房 創立25周年記念公演
タイトル 『ISHIN ~狼たちは最果てに~ version.2024』
脚本・演出 青木由里
出演 青木賢治/栗生みな/村松沙理亜/清水まなぶ/井田亜彩実/導星ゆな 他

日時 2022年9月8日(日)11:00~/15:30~
会場 飯山市文化交流館 なちゅら 大ホール
チケット予約フォーム:https://www.quartet-online.net/ticket/ishin2024

皆さまへ感謝を込めて晴れやかに開催‼
どうぞお楽しみに‼

ミヒャイル・エンデ連読

2012年04月22日 01時29分09秒 | 日記
今、オープンエアの作品創作にかかっている。

当初は、2004年に上演した「DREAM」を掘り下げ
再演という形で改訂していこうと思っていたが
昨年発生した東北大震災、そして今の日本の状況と
これからの未来を考えつつ歴史を遡り始めたら
日本の縄文時代→古代メソポタミア文明に行きつき
「ギルガメッシュ叙事詩」に興味を持った。
早速、本を手に入れ読破。

神と人間と動物が共存している世界。
人間の本質をつく言葉がちりばめられ
情景描写も単純であるがゆえの
美しさとストレートさがあり、心が揺さぶられる。

私が調査をし始めたきっかけは
作品における「見えないモノ」の存在定義を
明確にしたいと思ったから。

で、泉鏡花の「天守物語」を読み返して
妖怪と人間の関係を探り始めた。

妖怪に関しては、色々調べては見たけれど
結局のところ「人間が怖れから生みだしたもの」
という見解が多かった。

だとすれば、作品上、必要だと思う観点から
妖怪を想像して生み出してみるのも面白いかも…
と思うようになった。
ここで、妖怪についての研究は一度停止。

もう一度、日本から世界に視野を広げ
自然界や人間についての洞察が深い作家さんをあたり始めた。

そこで浮き上がって来たのが
ミヒャエル・エンデ氏だった。

エンデ氏について、過去2回調べたことがあった。

最初は、短大講師をしていたとき。
「モモ」の舞台化をしてみたいと思ったのがきっかけ。

次は、「はてしない物語」を舞台の下敷きにしたいと思ったとき。
これにより出現した作品が「0zero]

上記の下調べで、エンデ氏の経歴や
他の作品情報も調べたはずなんだけど
始めに小説の舞台化ありきだったからなのか
エンデ氏の作品創作に対する思いや考え方の
掘り下げが甘かったようで
今回は、新たな発見が色々あった。

読んだ本は6冊。

「だれでもない庭」「ゴッゴローリ伝説」「サーカス物語」
「ハーメルンの死の舞踏」「エンデのメモ箱」「遺産相続ゲーム」

エンデ氏は10歳の頃、第二次世界大戦が勃発し
学童疎開先で知り合った友人の影響を受け、詩作開始。
終戦間近に届いた召集令状を受け取るが逃亡し、終戦を迎える。

戦後、18歳で演劇に傾倒し始め、演劇学校に入学。
俳優を目指しながら、戯曲の執筆を始めた。

つまりエンデ氏も、演劇に興味を抱いていたのでした!

残念ながら戯曲に関しては
初演作品が酷評だったこともあり
戯曲ではなく小説を書くようになったが
それでも演劇という表現に関して
ずっと興味を抱いていたようです。

上記の本の中にも戯曲が3冊。
どれも面白くて、一気に読んでしまった。

どの作品にも、異界のモノが登場する非現実的世界観。
その中に「生」と「死」、そして人間の欲望や感情が
明確に立ち上ってきて、よりリアルに感じられる。

演劇におけるリアルって何だろう…

彼は言う

 ・難破を経験して初めて、芸術に道が通じる
 (難破とは、生死をかけた戦いに敗れたと思えるような体験)

 ・自分の仕事の背景に死がなければ、背景が全くないということ
  明るく軽やかなことも、死を背景にして始めて価値がある

と。

何を価値とするかは、人によって違うが
私は、上記の言葉に共感。

「死」があるからこそ、「生」の喜びを実感できる。
それは「生」に執着するということではなく
「ありのまま」の自分を感じ、受け入れ、愛すること―

今少し、エンデ氏の作品を掘り下げたいと思っている。