【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

イギリスの児童文学作家/『グリフィンの年(上)』

2009-04-04 17:08:02 | Weblog
 以前も書きましたが、私の人生の大きな部分はイギリスの児童文学作家によって作られています。(現在も作られ続けています)
 ほんわかしていてでも深読みしたら人生哲学も見えるのがA・A・ミルン(くまのプーさん)、歴史の中でのダイナミックな人生ドラマならローズマリ・サトクリフ、田舎の子供のことならフィリパ・ピアス(トムは真夜中の庭で)、ヒュー・ロフティング(ドリトル先生)はアメリカ人だったっけ?(作品のメイン舞台はイギリスですが)、忘れちゃいけないP・L・トラヴァース(メアリー・ポピンズ)、戦時下の少年の物語ならロバート・ウェストール、とても壮大なファンタジーならR・R・トールキン……今ざっと思い出しただけでももう片手では足りません。そして最近知ったDWJ。
 こんなに素晴らしい作家が輩出するとは、これはもうイギリスの「伝統」なんでしょうね。この伝統が長く続くことを祈ります。うらやましく思いながら。

【ただいま読書中】
グリフィンの年(上)』ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 著、 浅羽莢子 訳、 東京創元社、2007年、1700円(税別)

 『ダークホルムの闇の君』の後日譚です。“あれ”から8年、魔術師のダークは相変わらず忙しく飛び回っていますが、今回の主人公はダークの娘(体重半トン、金色のグリフィンの)エルダ。魔法大学にエルダが入学し、そこで級友(ほとんどは人類)と友情を結び勉学に励む……をを、魔法学園ドラマです。ただし同じグループになったのは一風変わった新入生たちばかりです。大体は親(またはそれに相当する存在)の反対を押し切ってきた者で、中には命を狙われている者もいます。大学の授業は厳しいものですが、チェズニー氏による40年間の“空白”のせいで、授業では魔法の本質が見失われています。
 さらに大学は赤字に悩んでいて有力者の父兄に寄付を募ろうとするのですが……これがまた騒動の原因となります。
 大学の主任魔術師コーコランは月に憑かれていました。文字通りlunaticなくらい。学生への授業なんか露骨に手抜きで、大学の予算と自分の空いた時間は宇宙服と月着陸船作りにせっせと注ぎ込んでいます。担当されるはずのエルダたち6人は、自分たちで勉学を始めます。そこに暗殺者組合の刺客の手が。命を狙われる級友を守ろうとエルダたちはせっせと努力をします。もちろんそれはとんでもない(魔法の)大騒ぎを引き起こします。さらには海賊のご一行さまが結界で守られているはずの大学を襲い鼠となって退散します。しかしそれは、次の騒動のための伏線でしかありません。エルダの級友クラウディアは帽子かけと霊的に結合させられ、おかげで帽子かけはストーカーのようにクラウディアのあとをごとごとと追いかけます。

 ここまででもはらはらどきどき大笑いのDWJの世界なのですが、こんなもので終わるわけがありません。怒濤の勢いで下巻に続く。