【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

借金(素朴な疑問)/『行列・ベクトル』

2009-04-07 19:47:28 | Weblog
 金が足りないから借金をする……これはわかります。で、借りたら次は返却ですが、「金が足りない」からどうやって返すのでしょう。

【ただいま読書中】
図解雑学 行列・ベクトル』佐藤 敏明 著、 ナツメ社、2003年

 私は高校までに、ベクトルは習いましたが行列は習わず、大学に入ったら教養の数学が行列で「高校で習ったもの」として授業が行われたため、エライ目に遭いました。どうやって試験に通ったのか、自分でも謎です(けっこう落第→追試がある厳しい試験でした)。

 本書ではまず「数とはなにか(自然数~複素数)」「計算の法則(結合法則、交換法則、分配法則)」が説明されます。ふむふむ、ここまでは問題なくついていけるぞ。さて、行列の登場。行列の足し算には結合法則と交換法則が成立する。つぎはかけ算。行列を実数倍するのは単純ですが、行列×行列で話が複雑になります。えっと、結合法則(足し算やかけ算では、式のどこから計算を始めても結果は同じ)は成り立ちます。しかし交換法則(足し算やかけ算では式の中で数字を入れ替えても結果は同じ)は……
 行列の足し算は「買い物リスト」のアナロジーで理解可能です。複数の人が同じ品目を複数回買い物をした、と考えればいいのですから。しかし行列のかけ算は、一体何のためにするのかがこの本では理解できません。丁寧に解説がしてありますから、かけ算の手順は覚えられます。しかしそれは「算数」であって「数学」ではありません。計算手順は取得できても概念の取得ができませんから。もちろん、線形代数を知っている人にはそのことは説明不要でしょう。しかし、入門書を読む人は「素人」です。その人にいかに「行列の面白さ」を伝えるか、にはもう一工夫が必要と感じます。

 ベクトルはさすがに基本は知っているからすらすら読めます。ただ「ベクトルのかけ算」で足が止まります。実際には「かけ算もどき」なのですが、ベクトルを「1×2行列」と「2×1行列」としてかけると「ベクトル」ではなくて「数」が得られます。で、平面ベクトルの内積にはなんとかついて行けましたが、空間ベクトルの外積になるとここでもまた行列が顔を出すので心のどこかが拒絶反応を示してくれます。ただ「内積は仕事、外積はモーメントの概念から導入された」と言われると、なんとなくわかったような気にはなれます。

 連立方程式を解くために必要なのは「行列式」で、世界で最初にそれを記述したのは関孝和(1683年)と言われるとちょっと嬉しくなります。「行列」は19世紀ですから、行列式の方が170年ほど早く登場、と言われるとちょっと首をひねってしまいますが。そして線形写像の登場。わはは、と笑いながら私はページをめくります。最後に標準偏差とか主成分分析とか多変量解析とか(名前だけ)知っているものが登場してまたほっと一息。放送大学あたりに入ったらこのへんを基礎からきっちり学べるかしら?