もしも泉の女神様が「お前が落としたのは、この『金でできた鶏』か、それとも『金の卵を産む雌鶏』か、ただしこの雌鶏は老齢だが」と言ってくれたら、どう返事をするべきでしょうか。
【ただいま読書中】『青い薬』フレデリック・ペータース 作、原正人 訳、 青土社、2013年、2400円(税別)
若いときから知っていた女性、知らないうちに結婚して子供を産み、そして離婚したカティ。彼女は(息子も)HIV陽性でした。そしてフレデリックはカティと恋に落ちます。二人がうまくいくことは最初からわかっていました。ただ、どううまくいくのかはフレデリックにはわかりません。
カティとの関係、チビ(カティの息子)との関係、自分の両親との関係、そして、二人のHIV。チビの未来、カティの未来。
そして“それ"は自分の未来にもなってしまいます。セックスの最中にコンドームが裂けてしまったのです。医者は親切に、そして詳細に二人に説明をしてから言います。「ようこそ、エイズの世界へ」。この医者が、いらつくこともあるし余計なことを言うこともあるが、二人にとって実に有能な“パートナー"となります。
そうそう、白いサイやマンモスも重要な“登場人物(?)"です。
一日一日を“驚きながら"過ごしていた著者は、自分の生活を本にします。それが本書です。欧米の漫画は、日本のに慣れた身にはちょっと取っつきにくいものですが、ゆったりと、そして行ったり来たりして読むと、はじめは「個人の未来」「二人の関係の未来」だったものがいつのまにか「家族の未来」に変容(成長?)していったことがわかります。もしかして、多くの人が作者と同じように自分の(そして自分の周りの人の)未来を考えることができたら、人類の未来はもう少し明るいものになるのかもしれません。