【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

ういんたースポーツ

2014-01-28 07:03:54 | Weblog

 冬季五輪の種目は、スキー・スケート・橇(ボブスレーやリュージュ)・カーリング・バイアスロン……もうちょっとバリエーションが欲しいな、と私には思えます。たとえば「トナカイ橇の競走」「犬橇の競走」なんてのはどうでしょう。動物虐待?  だったら「人が引く橇の競走」。動物だったら“虐待"でも「人」だったらOKでしょ?

【ただいま読書中】『命がけで南極に住んでみた』ゲイブリエル・ウォーカー 著、 仙名紀 訳、 柏書房、2013年、2500円(税別)

 1959年に南極条約が結ばれました(日本はその12箇国の一国です)。現在49箇国が調印し、軍事・商業利用の禁止、野生動物の保護を守りながら科学研究を行っています。研究は「極地」だけではなくて「地球の過去」や「宇宙」にまで及びます。
 最初に登場するのは「南極のダイバー」です。マクマード基地(スコットが最初に建てた小屋(現在も保存されています)のそば)の近くの氷(厚さ3~5m)を割ってマイナス2度の海水に飛び込みます。そこは、まるで異星の動物のような変わった生物がたくさん生息している“異世界"です。
 アザラシやペンギンという“ポピュラーな"野生動物も登場します。トウゾクカモメとかシロフルマカモメも、それと、それらの研究者も。
 著者の興味は「南極に住む人々」に向きます。職種に関係なく、冒険を愛しロマンチストで、お金は権力ではなくて自由の象徴として捉える傾向がある人々です。女性もいます。マクマード基地には1000人くらい滞在していますが、民間の女性は28人。著者も女性です。そういえば『復活の日』(小松左京)でも南極基地には数人の女性隊員がいましたっけ。
 南極には「火星」があります。ドライ・ヴァレーという、世界で最も寒く最もドライで最も岩だらけの場所です。あまりに極端な地形のため、初期の火星研究に役立つのではないか、と言われているそうです。
 さらに「宇宙のかけら」も南極にはあります。隕石です。この30年で5万個の隕石が南極で見つかりました(この数は、南極以外の地球全体で2世紀かけて見つけた隕石の数を上回ります)。氷の上だと目立つことや、奥に潜り込んでも氷の流れで表の特定の地点に集められやすいことが、南極での隕石探しに有利に働いています。ただしその捜索活動は大変です。ボランティアの隕石探しプロジェクトがあるのですが、6週間氷原のテントで自炊しながら、天気が許す日は毎日受け持ちの区域を目を皿にして雪上バイクを駆る生活です。しかも発見した隕石は「自分のもの」にはできません。それでもこのボランティアは人気があるそうです。なお、1969年に南極で最初に隕石を発見したのは日本で、以後1トン半の隕石を収集しているそうです。しかもその中には、月や火星からのものが含まれているのですが、南極の隕石がほとんど小惑星帯からのものであることを考えると、日本の“国際貢献"は大したものです。
 南極点にはアメリカの基地がありますが、著者は独特の表現をします。各国が南極の領有権をかつて主張していた(そしてまだそれを撤回していない)のですが、その「領土」の境界線がすべて収束する特異点(南極点)にアメリカが基地の分室を置き「他人のパイすべてに非公式ながら地政学上の指を突っ込んでいる」と。
 「地球の過去」は南極の地下にあります。3000mの深さから掘り出される氷床コアは80万年前のものです。なおその「過去」は「未来」についても語ってくれます。たとえばこれからの地球温暖化の傾向について。
 本書のキーワードの一つは「極端」です。あまりに極端な環境のため、人はその影響を受けずにはいられません。長期滞在をすると、性格・行動・ライフスタイルなどが深刻な影響を受けるのです。
 そういえば、映画「南極料理人」でもけっこう奇矯な行動をする人々が登場しましたが、それは「南極のせい」だったのかもしれません。まあ、それを抜きにしても楽しいコメディ映画でしたが。
 そうそう、本書のあちこちには「シャクルトン」が散りばめられています。著者にとってシャクルトンは個人的な「ヒーロー」なのかもしれません。もちろん私にとっても彼は「ヒーロー」なので、異議はありませんが。