【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

誤解の十二支

2016-03-18 06:53:48 | Weblog

 十二支は本来「陰陽で自然界の季節の移ろいを表現したもの」でした。ところが秦の時代頃から「十二支とは動物のことである」という誤解が始まり、その誤解が漢の時代に定着します。もう2000年以上その「誤解」が通用しているのですから、私も抵抗せずに「十二支は動物のこと」と言わなければならないのかもしれません。なんだか抵抗を感じるんですけどね。

【ただいま読書中】『十二支になった動物たちの考古学』設楽博己 著、 新泉社、2015年、2300円(税別)

 まずはネズミ。コロンブス以前にヴァイキングが“新大陸”に到達していたことは確かなようですが、グリーンランドのヴァイキングの遺跡からはヨーロッパのネズミの骨が見つかるのに、カナダの遺跡からはヨーロッパのネズミの骨は出ません。つまり、ネズミが定着することができないくらいヴァイキングの新大陸での生活は短かった、と推定できるのだそうです。東南アジアからメラネシア・ポリネシアにかけてのナンヨウネズミのDNA分析からは、人類がどのようにこれらの島に広がっていったかも追えます。ネズミは船に潜んで渡海したはずですから。さらに島によってはネズミが貴重なタンパク源だったことも窺えます。
 ウシは日本でも、食用でもあり役牛でもありました。牛車は平安貴族専用ではなくて、奈良時代以前から用いられていました。また、奈良時代の墨の分析で、その膠にウシのコラーゲンが使われていたこともわかりました。
 殷や周の青銅器にはトラの文様があります。ウサギでまず登場するのは、徳川将軍家の正月の吸い物が兎の肉だったことや、明治天皇が肉食を公表したときにもそのリストの中に兎が入っていた事実。龍は、6500年前の中国西水坡遺跡から出土した貝殻で描かれた「龍の絵」が登場します。写真を見るとたしかに龍にしか見えません。新石器時代にすでに龍がいたんですね。日本の龍は、弥生後期の青銅鏡の模様です。ただしこれは中国からの輸入品。
 遺跡からの出土品を、十二支で再編集して並べた、という面白い本です。自分の十二支が本書でどんな扱いになっているか、そこだけ読んでも楽しいかもしれません。