【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

ロボット

2019-11-27 07:27:34 | Weblog

 私は「ロボット」と言われたら「人型(二足歩行)」と言いたくなるのですが、もうすぐ実用的になりそうな「自動運転自動車」は人型ではありませんが立派な「ロボット」と言って良いのではないです? つまりもうすぐ私たちは「目に見えるロボットと共存する社会」に生きることになるのです。

【ただいま読書中】『銀河帝国は必要か? ──ロボットと人類の未来』稲葉振一郎 著、 筑摩書房(ちくまプリマー新書)、2019年、860円(税別)

 人工知能・ロボットの開発に関して「応用倫理学」の必要性が強く言われているそうです。著者は「人工知能・ロボット」の歴史を概観するときに、「SF」が役に立つ、とちょっとびっくりの主張をします。SF好きの私には嬉しい主張ですが、さてさて、どんな展開になるのでしょう。
 ロボットに関して、フィクションと実際の開発の歴史は、微妙な関係を常に保っています。たとえば日本人のロボット開発者には二足歩行ロボットに対する強いこだわりがありますが、それは「鉄腕アトム」「鉄人28号」「マジンガーZ」「機動戦士ガンダム」といった「人間型ロボットに関するファンタジーの系譜」を日本人が共有しているからでしょう。
 これからの未来でロボットや無人機械がどんな局面で一番活躍を期待されるか、と言えば、宇宙探査です。推論を重ねてこの結論が出たことに、著者もちょっと驚いています。
 ロボットSFの大御所はアイザック・アシモフです。「陽電子ロボット」とか「ロボット工学三原則」とか、今から見たら「ちょっと古い」と感じられますが、彼が語ろうとした「人間のためにロボットが存在するとして、『ため』とはどのようなものか」「そもそも『人間』とは何か」といった、機械倫理学的なテーマは、実は現代社会でもまだきちんと検討されていないものでした。
 20世紀のSFでは「人類は今の人類のままで宇宙に進出し、そこでエイリアンに出会う」というのが基本発想でした。しかし現在の私たちは「宇宙に出たら人類は変容するだろう(あるいは、変容しなければ宇宙には住めないだろう)」「宇宙に出てもエイリアンには会えないだろう」と思っています(SFもそのように変化してきています)。エイリアンについては確言はできませんが、変容については、たとえば「日本人がアメリカに移民したら日系アメリカ人になるように地球人が宇宙に移住したら地球系宇宙人になるだろう」なんて推定はたぶん外れないはず。
 本書の著者の本で『宇宙倫理学』を以前読んだことがありますが、あちらでは本書ほどにはSFは多く取り上げられてはいませんでした。むしろ「現実」としての宇宙開発を地上からどのように考えるか、が著者のスタンスだったように記憶しています。しかし本書では「SFの歴史」をひとつの“補助線"として、人類の未来を倫理学的に俯瞰しようとしています。いやあ、なかなかスリリングな手つきです。
 ただ本書は、結局「アシモフ賛歌」のための本、とも言えそうです。たしかにアシモフの作品は魅力的でしたもの。