■アサヒ芸能6月9日号 5月31日発売 猛毒PCBが津波で流出していた! 『体内に入ると内蔵、皮膚が破壊される』
福島第一原発の放射性物質の流出事故に隠れ、ほとんど報じられていない事故がある。有害化学物質「PCB(ポリ塩化ビフェニル)」の流出だ。かつて「カネミ油症事件」を引き起こしたこの猛毒物質は、いったいどんな状況になっているのか。
放射性物質による環境汚染もさることながら、その報道の裏で、世界が注視する危険な流出事故が起きてしまった。
「津波の被害が著しい福島・宮城・岩手の沿岸部で管理していた、有害物質のPCBを含む変圧器や蓄電器、蛍光灯安定器などが、津波で流されたのです。今後の汚染が心配されます」
そう語るのは、愛媛大学・沿岸環境科学研究センターの田辺信介教授だ。
PCBといえば、想起されるのは、68年に社会問題になった「カネミ油症事件」。医学博士の中原英臣氏が話す。
「かつては日常生活の中にあった危険物質です。体内に取り込まれると、皮膚、内分泌系、呼吸器系臓器、生殖器など、さまざまな部分に障害を来すとされています。ひと頃は、ビルや工場の変圧器の絶縁油をはじめ、工業機器に幅広く使われていました。ところが『カネミ油症事件』をきっかけに、水銀と同じように『毒性』と『蓄積性』があることが判明した。この事件で、食用油の精製段階で混入したPCBを摂取した人々は嘔吐、まぶたや関節の腫れ、手足のしびれ、めまい、皮膚や爪の黒色化、皮膚の広範な範囲に出る発疹、脱毛、各種のガンが発症して社会問題になりました。最近では耳にしなかったので、再びこのような形で世に出たことに驚きました。
確かにPCBは、長らく隔離されてきた。72年に製造が中止。73年、これを機に化学物質審査規制法が制定され、74年には毒性が高い第一種特定化学物質に指定された。
「電力会社や事業者によって長年保管されてきました。しかし、01年にPCBに関する特別措置法が整備され、処理施設が作られて、16年までに順次無害化が進められてきました。ところが、そのやさきに大津波によって流されてしまった」(前出・田辺教授)
環境省の廃棄物・リサイクル対策部の担当者が話す。
「基本的に、PCBを保管する事業者は、保管状況を地元の自治体に届ける義務があり、各自治体は状況を把握しています。しかし、津波の被害が甚大な個所も多く、今、正確に状況を確認しようとしている最中です。口から摂取したり、長時間触れたりしなければ、すぐに人体に影響が出ることはないとは思いますが、有害物質ですので、環境への影響も考え、自治体と連絡を密に取り合い、早急な対応に努めております」
そこで、各自治体に問い合わせた。福島県の産業廃棄物課の担当者は話す。
「現時点でPCBを含むコンデンサが5台不明になっています。ただし、原発事故による立ち入り禁止区域においては、行方不明者の発見が優先事項でしたので、手付かずの状態です」
宮城県環境生活部廃棄物対策課の担当者は、
「今回の震災の影響で、工場が全壊してしまっていたり、工場の方どなたとも連絡が取れないところもあります。その中で、ガレキの中から徐々に発見されていますが、5月10日現在で、コンデンサが31台、トランスが22台、蛍光灯安定器が228台、PCBを含んだ油を入れたドラム缶7本の紛失が確認されています。飲んだりしなければ健康被害は出ませんが、発見した場合はガレキとは別の場所に保管してもらい、順次対応しております」
岩手県の産業廃棄物課に至っては、5回ほど問い合わせたが、受話器からは「担当者はいないと言ってくれ」と聞こえるのみで、回答は得られなかった。
前出の田辺教授はこう警鐘を鳴らす。
「直接口から摂取したカネミ油症のような影響はありえないと思いますが、PCBが海に流出すると生態系を広く汚染し、生物に蓄積されます。イルカやクジラなど海の高等動物における生物濃縮係数は100万倍から1000万倍と言われ、放射性物質のセシウム137よりも3~4桁大きいことが知られています。少量なら問題はありませんが、大量のPCBが流出した場合、汚染された魚介類を人間が食べ、結果、人体汚染が拡大する可能性がある。健康面からも、風評被害を生まないためにも行政の真摯な情報公開、情報発信が不可欠だと考えます」
PCBの早期処理もまた、復興における重要な要素だ。
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