舞台「PSYCHO-PASS Virtue and Vice 3」は九泉晴人の続きの物語。
単独でも十分楽しめますが、1と2に描かれていたことの意味が分かったりしてハッとさせられるところがあったりするので、
順番は逆でもいいので前2作もご覧になることをお勧めします。時系列的には2-1-3の順になります。
まあ私自身、原作アニメを見てないので、本当のところわかってなかったり、ズレてることが色々あるんだろうなと思いますが
舞台「PSYCHO-PASS Virtue and Vice」シリーズ1~3のネタバレしてますよ。
このシリーズは人工監視官育成計画の物語でもあったわけですね。
本来監視官適性の無い人間をどう適合させていくか。
3係の監視官九泉晴人、嘉納火炉、神宮寺司、海堂自我はいずれも廃棄区画出身。
2に出て来る神宮寺は明確には語られていませんが、計画の最初の被験体だったのではと思います。
そして全員潜在犯だった可能性があります。
神宮寺と嘉納は記憶をいじられてませんが、九泉と海堂は記憶を書き換えられているので、
被験体の様子を見ながら計画がそういう方向へ進んできたのがわかります。
技術の進歩もあって可能になったということかもしれません。
なんで廃棄区画なんだろう
最初は廃棄区画に住む人たち(大抵の場合潜在犯落ちしてるか色相が濁ってる)を人間と思っていない、
実験動物程度にしか見てないからではと思いましたが、
3を観て、過酷な環境の中を生き抜いてきたサバイバル・スキルに注目したのかもという気がしました。
一般人にはあまり無いような経験をしてきてるでしょうからね。
その中で頭が良くて正義感が強く、リーダーシップのある人間を被験体として選んだのかなと。
嘉納は廃棄区画出身の元執行官つまり潜在犯でしたが、劇的に犯罪係数が改善したとして突然監視官に昇進します。
後に、シビュラシステムがデータを改竄していることに気づいたのは、2で特別自治区の調査に入って神宮寺に出会い、
潜在犯をモルモット代わりに実験してデータを集めていることを知ったのが切っ掛けなんでしょう。
そこでシビュラシステムというものに対する疑念や不信感、嫌悪感が生まれたのかと。
そして次に3係の監視官になった九泉の過去、監視官就任初日に潜在犯落ちした母親を自らの手で処分したという経歴が、
実は捏造されたものである上に記憶も書き換えられていたこと。更に二人が人工監視官育成計画の被験体になっていることを知ってしまった
勿論同意など無いわけで、とんでもなく非人道的で倫理に外れた実験です。潜在犯といえども人間でしょうに
初めて1を見たあとで、嘉納は結局何をしたかったんだろう、とずっと考えていました。
行動がブレてて一貫性が無いように見えたんですよね。
同じ廃棄区画出身で兄弟のように育ち、また執行官時代の同僚でもあった大城。
彼と同僚であった時代を懐かしみ、「俺は俺でいたかっただけだ」と呟く嘉納は監視官になりたくなかったというより、
改竄されたデータによって存在している自分に、居心地の悪さを感じていた気がします。
やろうとしていることを絶対的に正しいと言い切ることができない、あやふやな自分。
誰かに止めてほしくて大城に向かって「おれを殺せるか?」「殺してくれないか」と言ったのかも。
不安と孤独、存在の不確かさから来る自信の無さと焦りをずっと抱えていたのか、
どうせ殺されるなら大城に殺してほしいという気持ちが、目線の動きや表情から窺えて、
わだっくまさん(和田琢磨)はこういう心情を滲ませるのが抜群に上手いなと思います
シビュラシステムを壊して、ただの自分に戻りたいという気持ちもあって、3係を裏切ってテロリストに協力し、
必要なら人を殺すことさえ躊躇わなかった。
それなのに「お前たちと一緒にするな!」と言い放ってテロリストを殺したのは、
自分と同じ被験体である九泉を死なせたく無かったから?なんでしょうか。
本当は九泉とともにシビュラシステムを壊せたらと思ってたんでしょうね
でも九泉は記憶を書き換えられたせいで、エリート意識が強くて執行官に対して厳しく、
元執行官である嘉納を信用してなかったのでどうしようもない
元の記憶を取り戻したら関係性が変わるという気持ちから、九泉をずっと見守っていたのかもしれない。
仲間である執行官たちを次々失い、自分の記憶が書き換えられていたことを知ったショックで、
アイデンティティを喪失した九泉。
嘉納が差し出した手を拒否して、仲間の仇を取る方を選んだのは本来の気質がそうさせたのではと3を観て思いました。
そんな九泉を悲しく思いながら、嘉納はきっと、ドミネーターで撃たなかったと今は思います