「尹大統領は『憲法裁は弾劾を認容できないだろう』とあらかじめ計算していた」という主張も、ペ・スンヒ弁護士をはじめとする複数の極右ユーチューブチャンネルで拡散している。

2025-01-03 09:51:10 | 韓国を知ろう
 

「IUはスパイ」…韓国の極右ユーチューバーら、

フェイクニュース・陰謀論さらに拡散

登録:2024-12-27 11:05 修正:2025-01-02 07:14
 
尹大統領就任式の出席者ら「報いの攻勢」 
「従北主体思想派が南泰嶺デモを主導」
 
 
今月21日、「大韓民国立て直し運動本部」がソウル光化門付近の東和免税店前で開いた「大統領弾劾反対・自由民主主義守護光化門国民革命集会」の参加者たちがプラカードと太極旗を振っている/聯合ニュース

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が「不正選挙論」など極右の陰謀論に傾倒し非常戒厳にまで至ったという分析が出ているなか、極右ユーチューバーたちは「12・3内乱事態」後、より一層勢いが増している。「従北(北朝鮮に追従する)主体思想派が南泰嶺(ナムテリョン)デモを主導した」というフェイクニュースをはじめ、「尹大統領の戒厳は避けられない選択」というような内乱同調も堂々と発信している。尹大統領の就任式に招請されるなど親密な関係を続けてきた極右ユーチューバーたちが「報いの攻勢」に乗り出しているかたちだ。

 尹大統領夫妻は2022年5月10日に国会で開かれた大統領就任式に、少なくとも32人の極右指向のユーチューバーおよび関係者を招待した。登録者数の多さの順でみると、ペ・スンヒ(「ペ・スンヒ弁護士」)、コ・ソングク(「コ・ソングクTV」)、イ・ボンギュ(「イ・ボンギュTV」)、キム・セウィ(「カロセロ(縦横)研究所」)、パク・ワンソク(「義具現パク・ワンソク」)、イ・チュングン(「イ・チュングンTV」)、カン・シノプ(「カン・シノプTV」)、カン・ヨンソク(「インサイット」)、ファン・ギョング(「時事倉庫」および「時事ファイター」)などだ。

 多くは「今年4月の総選挙の結果は捏造されていた」という内容を骨子とする不正選挙疑惑を拡大・再生産してきたが、国会で尹錫悦大統領の弾劾訴追案を可決した後には「弾劾賛成派=従北勢力」という主張を繰り返している。専門家らは、尹大統領が極右ユーチューバーの不正選挙疑惑を信頼した末に戒厳という極端な選択にまで進んだと分析しているが、極右ユーチューバーによる陰謀論生産は続いているということだ。

 
 
元MBC記者のキム・セウィ氏が運営するユーチューブチャンネル「カロセロ(縦横)研究所」に、尹錫悦大統領退陣を求める集会の参加者は中国政治勢力にそそのかされたものと主張する内容の動画が上がっている=ユーチューブ画面のキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 登録者数113万人の「コ・ソングクTV」は23日、「南泰嶺でのトラクターデモには、埃一つついていない、農機具として一度も使われていないトラクターが出動した」とし、「民主労総や共に民主党など従北極左派勢力が違法デモをそそのかした」と主張。農業者らのトラクター上京デモに市民が加勢した集会を、従北勢力の仕業だと決めつけた。大統領夫人キム・ゴンヒ女史のファンクラブ「ゴンヒサラン」の会長を務めたカン・シノプ弁護士も、登録者数36万人のユーチューブチャンネルのライブで「純粋な農業者ではなく農業者を偽装した輩がここ(南泰嶺)に進入して集会を主導した」とし、「(デモ参加者たちが)パトカーを燃やし、警察にけがを負わせた」という虚偽事実を広めたりもした。

 尹大統領の弾劾を要求する「ペンライト集会」の参加者に向けた根拠のない誹謗中傷も度を越している。20日、元文化放送(MBC)記者のキム・セウィ氏は「カロセロ研究所」チャンネルで「弾劾集会への中国介入説」を唱えた。ペンライトを持って汝矣島(ヨイド)の弾劾集会に参加したある中国人女性が「尹錫悦のために(アイドルの)コンサートが中止になった。尹錫悦を殺したい」と語るブイログの映像がその根拠だった。この他、汝矣島集会の現場付近の飲食店などで集会参加者が無料で飲食できるよう「前払い」を提供したという理由で、歌手のIUなどをスパイと決めつけるユーチューバーも多くいる。

 
 
キム・ゴンヒ女史のファンクラブ「ゴンヒサラン」の会長を務めたカン・シノプ氏のユーチューブチャンネル「カン・シノプTV」に上げられた、尹錫悦大統領の「不正選挙」主張を擁護する内容の動画=ユーチューブ画面のキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 「不正選挙論」も続いている。大統領選挙当時、「尹大統領は’寝ながらも私のチャンネルを見ている」と誇示していたイ・ボンギュ氏は18日、登録者数93万人の「イ・ボンギュTV」で流した「これでも不正選挙ではないと言い張るのか」というタイトルの動画で「これまで数十、数百の映像を通じて(不正選挙関連の)ファクトを流したにもかかわらず、マスコミは注目しなかった。尹大統領がなぜ(不正選挙があったという事実を)分かってくれないのかと残念に思っていたが、実は大統領はこの報告を受けてすでに知っていた」とし「最高裁が度々(不正選挙関連の訴訟を)棄却するから、やむを得ず戒厳をした」と主張した。イ氏は「結局、勝負は不正選挙との戦いからだ」とも強調した。登録者数46万人の「正義具現パク・ワンソク」チャンネルなどにも類似した内容の動画が多数上がっている。

 「尹大統領は『憲法裁は弾劾を認容できないだろう』とあらかじめ計算していた」という主張も、ペ・スンヒ弁護士をはじめとする複数の極右ユーチューブチャンネルで拡散している。ペ弁護士は24日、135万人が登録しているチャンネルのライブで「尹大統領が職務停止状態を中断してほしいという仮処分を申し立てれば憲法裁の弾劾審判を止めることができる」と主張した。訴訟を遅らせる戦略という次元で尹大統領が仮処分を申し立てることはできるが、これまで憲法裁が弾劾審判で仮処分を受け入れた事例はない。

チョン・インソン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
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